13 悪夢な記憶⑥
「兄ちゃん、怖いよ。もう痛いのも嫌だ……怖いッ!怖いよ」
「……大丈夫。俺がいるから」
俺たちは"そういう下品な種族"だからという理由で、男女関係なく安い金で買われ続けて、遊ばれてはまた牢に戻されて見世物になっていた。
そんなある日。
「すみません。この2人を引き取らせてくださらない?」
誰かが俺らを引き取ってくれた。
それは身篭ることの出来ない夫婦で、国内で有名な旅館を経営しているらしい。
引き取った理由は俺らが容姿端麗で"安かった"からそうだ。
後に躾で縛って旅館の跡継ぎとさせるには丁度良かったんだろう。
◆◇
「これはヒナドの記憶?」
2人の記憶らしきものに触れてしまったヒマリは、気まずいなかそっとヒナドへ聞いた。
「どちらかと言うと、兄貴の記憶だな……最悪な思い出だよ」
頭の中にホシドの記憶が流れてきたと思えば、再び先ほどの子供部屋のような場所にヒマリとヒナドは戻されている。
「ホシドは?」
ヒマリは大好きなハイドであるホシドとヒナドに、このような凄惨な過去があると思わず、先ほどの空間では黙って息を呑み彼らの記憶を見つめていた。
それから彼の様子が心配になったのでホシドを探したが、倒れていた場所に姿は無かった。
「なぁ、ヒマリ。あの扉には入ってみるか?たぶんさっきのようにハズレだと思うけど」
傷心しきる様子のヒナドが指さしたその先には、"始まった夏の花畑と終わらない放課後に置き忘れた記憶"と長く言葉が書かれた白い扉が存在している。
またしても意味は不明。
「正解の扉が分からないから、入ってみるよ」
「……分かった」
「私が開くからヒナドは後ろにいて」
「ははっ。頼もしいな」
先ほどの記憶に自身を蝕まれたヒナドは、弱々しくなってしまっていた。
「まかせな!」
ヒナドへ笑顔を見せてから、ヒマリは扉を開くと視界には見知らぬ花畑が飛び込んでくる。
(覚えのない場所だけど……この花の香りは……)
向日葵とチューベローズの咲く花畑であり、温かな風に乗り上品に香ってくる匂いには心当たりがあった。
(ラカージュへ来たときにも感じたけど、これは小さい頃にホシドに遊んでもらった時に感じた……)
あれこれ思い出そうと考えてるうちに、目の前には先ほどと同じく立体的映像のように、桃色の髪をした少女と美しいブロンド色の髪をした少年が現れた。
そして空間にはヒマリらしき心の声が響き始める。
◆◇
お母さんが最近仕事から帰ってきては「疲れた」「イライラする」と毎回言っている。
その声を毎日聞くものだから、お母さんに話し掛けるタイミングとか様子を伺わないと、更に怒りそうな気がしてそれが嫌だった。
気がついた時に家にはお父さんがいなくて、お母さんが1人で夜遅くまで働いていた。
生まれた時に私がアヤカシだったから、お父さんは気持ち悪がり出ていったとお母さんから聞いた。
毎日、家に誰もいなくて寂しかったが私を育ててくれるお母さんには、感謝してるからワガママは言えない。
ある日のこと、お母さんは気分転換でアンブール諸島に遊びに行きたいと言った。
その諸島ではアヤカシは人から嫌がられないらしく「ヒマリちゃんにもきっと過ごしやすい場所だわ。行きましょう」とお母さんに連れて来られた。
諸島のホテルに着いた早々に、お母さんは私を置いて外出してしまって、部屋にいても退屈であったので私は近くにある花畑へ散歩しに行くことにする。
私の名前の由来が"ひまわり"からきてたので、その花が気になり咲く畑を眺めていた。
すると、見知らぬ子が反対側からトボトボ歩いてきたので声を掛けた。




