14 悪夢な記憶⑦
「こんにちは」
「……なに?」
美しいブロンド色の髪をした、男の子らしき子は突き放すような言い方で返事してくる。身長は私より少し低い。
男の子の言い方が冷たく感じてしまい、お母さんに対する"いつもの癖"で相手の機嫌を直さなきゃと本能が私に訴えかけてきた。
「えっと、急に話し掛けてごめんなさい、私はヒマリって名前。あなたは?」
「……ホシド」
「ねぇ、ホシドくん。もし、暇なら私と一緒に遊ぼうよ」
◆◇
幼き頃のヒマリが自分より小さかったホシドへ遊びに誘ったところで、今いる空間が風のように消えていき周りが真っ白になる。
(遊んでもらった……というより、私が彼を誘ってたのか……にしても、私は母親にこんなにも嫌気をさしてたの?)
幼少期の記憶に心当たりが無くピンと来ないのと、母親への嫌悪感が今とは全然違い父親の話も覚えていない。
まるで他人の記憶のように感じられる。
『お前には懐かしさを感じる記憶なんて残されていない』
最初の時に言われたディアブルの言葉はこの事なのだろうか?
「ヒマリ、大丈夫か?」
「うん……て、あれは?」
ヒナドが心配そうに声を掛けてきたが、それよりも気になる光景が目の前に広がり始めたのでヒマリは声を出した。
「……この学校は」
先ほどの残像のようなヒマリ?が見覚えのある教室の中に映り込んでいる。
髪型は今とは違い下ろしたままで、黄色いリボンカチューシャを付けており、中学時の制服を着ていた。
(少し懐かしいかも……でも、こんな髪型してないけどな……)
他の学生が残像のように現れ始めて、教室でワイワイと楽しそうに喋る中、ヒマリらしき人物はポツンと1人で椅子に座って青空の窓を眺めていた。
そして、新たに創り上げられた空間にまたしても心の声が響き渡り始める。
◆◇
アンブール諸島へ母と引っ越して来た。
此処に来れば周りから気持ち悪がられないと思っていたが違った。
私は兎のアヤカシで周りからは「年中お前は発情期じゃん。やらせろよ」と言われて、下品だのクソ女だの言われた。
体格も他の子より良い方だったので、たくさん異性から弄られて吐き気がした。
「(もう、嫌だなぁ……)」
唯一、幼い頃に仲良くなっていた異性の友達であるホシドに連絡を取ろうとタブレットを出してアプリを開いたが
「(辞めよう……迷惑か)」
私はタブレット閉じてそのまま置くと、机で伏せながら窓の外に広がる眩しい青空を眺める。
「……ちょっとアンタさぁ」
いきなり横から声を掛けられたと思えば、嫌いな"そいつ"に胸ぐらを掴まれて対面になり睨まれた。
"そいつ"は私を弄ってくる男が好きな奴だった。
"そいつ"は前から"その男"が私を好きだから弄ってるんだ、と勘違いをおこしており毎回私に嫌がらせをしてくる。
ようは嫉妬だ。説明しても話を聞いてくれない奴だった。
「今日はなに?」
「いい加減に――くんの周りをうろつくの辞めてくれない?」
「うろついてないって」
そいつが言う男の名前なんて、私は周りに興味が無いし覚えてないから、上手く聞き取れないし誰の事か分からなかった。
「そう。正直に言わないなら、こうしてやるわッ」
「ーーッ!!」
また、始まった。
頬に平手打ちされて痛いと思えば、そのまま教室の床へ突き飛ばされて、取り巻きの他の女達に両手を押さえつけられて……。
「このクソビッチが」
「や、辞めてッ」
ハサミで容赦なくスカートが切り刻まれて不揃いになっていく。
周りは悲鳴と荒々しい興奮した声などが響き渡って……。
◆◇
「む、酷い……もう辞めて……見たくないこんな姿……ヒナド見ないで……」
ヒマリは両手で頭を抱えると肩を震わせて、その場でしゃがみ込んでしまう。
「ヒマリ大丈夫かッ?!」
ヒナドが自身の記憶に苦しむヒマリを何とかしようと、彼女に近づいて片膝立ちになり話し掛けた途端。
「良いわよね……貴方は幸せそうで」
教室内にいたもう1人のヒマリ以外の生徒は消えて、残像のようなヒマリ?はそう言いながら、何も無かったようにユラリと立ち上がり、ヒナドとしゃがみ込むヒマリに近づいてくる。
「何なんだお前はッ!」
ヒナドは相手へ叫ぶと苦しむヒマリを守るように彼女の前に立つ。
「私はその子、ヒマリだよ。本当のね……」
「"本当"の?何言って……」
ヒナドが聞き返そうとしたタイミングで「そこまでだヒマリ」と聞いたことのある声が割り込んできた。
姿をくらませていたホシドだった。
次回:未定




