12 悪夢な記憶⑤
ホシドの周りには、ヴィドーと呼ばれる生物が何匹か彼の周りを飛んでいる。
今でもこちらを攻撃してきそうな雰囲気だ。
「先へは行かせない」
「へ〜、兄貴から喧嘩売られんの? 兄弟喧嘩は久々だな。わりぃけど本気でやらしてもらうから。ヒマリ行くぜ!」
「う、うんッ」
ホシドが語ってくれないなら、彼と徹底的に戦って口を割らせるしかないと覚悟を決めてヒマリはヒナドと同じく構えた。
◆◇
どれだけの時間が此処で流れたかは分からない。
周りにいるヴィドーを片付けた後に、ヒマリは異能でホシドの足止めをして、ヒナドがすかさず彼の氷の異能を焼き切った後に、彼を炎の力で覆い尽くして、今回は見事に2人の連携が上手くいきホシドの両膝を床へ付かせた。
ヒマリの能力で動けないホシドは、疲れているのか頭を垂らし肩で息をしている。
「――ッ。はぁ……はぁ」
「流石に2人がかりだと兄貴もキツイだろ?今回は僕の勝ちだな。で気分はどうよ?喋る気ある?」
ホシドの前にしゃがみ込みながらヒナドは様子を伺っていた。
「ヒナド!あれ見て」
ヒマリに話しかけられたヒナドは「ん?」と言いながら立ち上がり、彼女が指さす方を見た。
「"期限切れの幼少期を、正しく廃棄する方法"……?なんだそれ」
言葉通りの文字が白い扉に書かれてある。
知らないうちに扉が出現していた。
「……その中には入らない方が良い」
ボソッと下を向きながらホシドが、力無く呟く。
「そう、忠告どーも。兄貴は他に喋る気無さそうだし行こうぜヒマリ」
「わ、わかった……」
「ヒマリ……行くな。お前もいつか苦しむことになる」
ヒマリの異能が解け始めて、ホシドはその隙間から彼女を止めるように、腕を弱々しく伸ばした。
こちらからしたら、何も語ってくれないホシドを信用して良いのか分からない。
それに先へ進まないと、ディアブルを倒さないと苦しむホシドを助けられない気がしたので扉の奥に進むことにした。
「……ごめんホシド。行くね」
ヒナドの側へ向かうと彼は扉を一気に開く。
眩い光が部屋一面に広がった。
「……なに、これ」
光が収まりヒマリは目を開くと先ほどの部屋ではなくて、何故か見覚えの無い夜のドヤ街が周りに広がっている。
目の前には檻に閉じ込められた、みすぼらしい姿の幼い少年のような子が2人横たわっている。
触れようとしてみたが、まるで3dで投影された映像のように手がすり抜けた。
「ヒナ……」
一緒にいるヒナドへ話し掛けようとしたヒマリだが、彼の表情を見て言葉が詰まる。
ヒナドは目の前に映る景色を見て、何かに恐怖して冷や汗をかいて顔が青ざめてるようだった。
「……大丈夫?」
口元を抑えて眺めていたヒナドが、ゆっくりと息を整えながらヒマリの声に反応する。
「あ……あぁ。そこに"いる"2人は……僕と兄貴だよ」
「えっ……」
ヒマリが小さく驚くと空間に、誰かの心の中の声が響き始め……
『兄ちゃん、怖いよ。もう痛いのも嫌だ……怖いッ!怖いよ』
『……大丈夫。俺がいるから』
◆◇
俺たちは生まれてから数年後に捨てられて、そして売られた。
本当の親の顔なんて覚えてない。
捨てられた理由は……たぶん送り狼だから。
世間では女を食い荒らす下品な種族とまで言われてるらしく、男で産まれたら捨てられる事が多いとドヤ街の売人から聞かされた。
また、人間より能力があるアヤカシは人に恐れられ、アヤカシへの差別や迫害がある当たり前の世界で今を生きている。




