9 悪夢な記憶②
ホシドに「頭がおかしくなったのか?」と言われると思ったヒマリは慌てて口を開く。
「ご、ごめん!へんなを話して。私の頭がおか……」
空気を誤魔化そうとヘラッと笑おうとしたヒマリだったが、言葉を遮るように予想してない反応が返ってきた。
「俺は信じる」
その一言で再び空気が静まり返る。
「ほ、ホシド?」
「何故、キミが"その世界"を知っているのかは理解しがたいが俺は信じるよ」
(私との出来事を覚えている?分からないけど、聞くなら今しかないかも)
ヒマリはホシドへ問うことにした。
「信じてくれるなら教えて……貴方は誰かに脅かされて、私に手を掛けようとしてるの?」
「近いけど違う。俺はある奴と"契約"をしてるんだ、1人で俺はそいつに逆らえない……それに、今でもこの話をどこかで聞いてるだろうな」
これ以上を聞いたらホシドの身が危ない気がしたのでヒマリは聞くのをやめた。
「ホシド……本当は私を傷付けたくないんだよね」
「……当たり前だ」
「分かった。教えてくれてありがとう……私がホシドを何とかして、助けてあげるから待ってて!」
そう伝えられたヒマリは、やるべき事が明確化したので次の日に備えようと駆け足で自室へ戻って行く。
「"ホシドを助けてあげる"か……ははッ」
誰もいなくなった脱衣所でホシドは、苦笑いのような反応をしてポツリと呟いた。
◆◇
(ん……やっぱり堕とされたんだ)
感じたことのある生暖かい風を全身で触れて、意識が覚醒したのでヒマリはゆっくりと体を起こす。
見えるのは大きなアーチ状の窓から、淡いパステルピンク調の空が四方八方どこまでも続き、雲がふわふわと浮かんでいる景色。
雲の上にそびえ立つ建物の中にいる。
(ヒナドは……?いるわけ無いか……)
昼間のバイト中に夢の話とホシドとの会話をヒナドに伝えて、夜中にこっそりタブレットで録画した証拠も彼に見せると信じてくれた。
ヒナドは直接ホシドにその件について聞いたらしいが、答えてはくれなかったらしい。
協力をしてくれるのは嬉しいものの、結局どうやってこの世界にヒナドを連れてくれば良いのか分からずに、ヒマリは頭を抱えた。
(とりあえず……この辺に懐中時計があったような)
ベッドのサイドテーブルの引き出しで見つけた時計の事を思い出したので取り出すと、そのまま白い螺旋階段が見える中央の部屋へと足を進める。
と、見覚えのある人と出会う。
「ヒマリッ?!びっくりした。足音が近づいてきたから誰かと思った」
「ひ、ヒナド?!こっちこそ驚いた」
中央の部屋にいたのは、ヒマリの姿を驚いた様子で見て、目を丸くしているジキルの衣装を着たアヤカシ姿のヒナドであった。
「てか、その服と見た目……ヒマリも此処に来てからそうなったのか?」
「うん。そうだよ、この世界ではアヤカシ姿に戻るみたい……ところでどうやってこの世界に?」
「部屋で寝てて、目を覚ましたら来てた。ヒマリが言ってたことは本当だったんだな……そしたら兄貴は……」
2人が会話をする中、急にどこからかカツッカツ。と室内に靴を鳴らすような足音が近づいてきて、黒い靄の中からある人物が現れる。




