【第20話あとがきメモ】
■ 辰五郎
荷駄に関わる人足頭。
第11話で肩に傷を負いながらも、荷や人足の動きを見続けている。
自分では動けない場面でも、人足の膝や肩の限界を見抜き、座ったまま指示を出した。
荷を運ぶことは、ただ力があればよいわけではないと示す人物。
■ 藤吉
若い人足。
第12話では、落ちた米俵のうち一つを背負って戻した。
第20話では、火薬箱が傾きかけた場面で、とっさに箱の下へ入り、落ちる角度を変えた。
まだ未熟だが、荷を守る者として少しずつ成長し始めている。
■ 梅吉
焼け出された避難民の男。
子を抱えて浄火寺へ逃れてきた。
最初は粥の量に不満を口にしていたが、次第に子ども連れの列を見る役目を担うようになる。
第20話では、逃げ出しそうになる者を押さえ、子ども連れの列を守った。
腹を減らしながらも、ただ守られる側ではなくなっていく人物。
■ 嘉七
黒根村の焼け出された男。
浄火寺の米や火について、不満を煽るような言葉を口にしたことがある。
一方で、火や煙の性質をよく知っており、第19話、第20話では煙や火の正体を見抜く役目を果たした。
敵とも民とも簡単には言い切れないが、同じ火を見たことで、少しずつ立ち位置が変わり始めている。
■ 太助
母を助けるために椀を奪った子ども。
罰として喜助とともに椀洗いをすることになる。
第20話では、火と煙で門前が揺れる中、椀を奥へ運び、割れ物を守る役目を果たした。
小さな役目でも、人の流れを守る一部になることを示す存在。
■ 庄吾
黒根村の近くにいた男。
荒砥側に道や煙のことで使われていた可能性がある。
子を連れて浄火寺へ現れ、煙を作る油布を持っていたため拘束された。
第20話では、右の林の火と煙の向きを告げ、門前の混乱を抑える助けとなった。
敵か、民か、父か、従わされた者かを一つに分けられない人物。
■ 八瀬隼人
黒羽甚内の配下の若い物見。
第16話から登場。
黒羽ほど落ち着いてはいないが、見たものを持ち帰る役目を学び始めている。
第19話、第20話では、火元や煙の確認に関わった。
■ 真下兵庫
赤松弥八の配下にあたる鉄砲衆の指揮役。
鉄砲の扱いに慣れており、撃つ判断も早い。
第18話では庄吾を撃つかどうかの場面で、迅と対立した。
ただし、撃たなかった判断を完全に否定しているわけではなく、鉄砲を持つ者としての厳しさを迅に突きつける存在。
■ 岩貫弥惣
荒砥側の小勢を率いる男。
槍で正面から攻めるよりも、煙、火、腹、疑い、避難民の流れを使って道を崩す策を取る。
第20話では、燧国側が完全には崩れなかったことを見て、一度引いた。
ただし、それは敗北ではなく、燧国の守り方を見極めるためでもある。
■ 鹿部市之助
岩貫弥惣の配下。
若く、湿った笑い方をする男。
力で押すことや斬ることを考えがちだが、岩貫の策に従って動いている。
荒砥側の小勢の不気味さを見せる役目を持つ。
■ 黒根村
嘉七が名乗った焼けた村。
庄吾も黒根村の近くの者とされる。
誰に焼かれたのか、どこまでが荒砥の仕業なのか、まだはっきりしていない。
戦の中では、焼けた村の者がそのまま味方になるとは限らず、敵に使われることもある。
■ 炭焼き道
煤谷村の裏手から通じる古い道。
荷駄や馬は通りにくいが、人なら通れる。
避難民の道にもなり、敵の小勢が使う道にもなる。
第16話以降、煙や獣道と合わせて、重要な道として扱われるようになった。
■ 獣道
炭焼き道の横にある細い抜け道。
小夜が石と枝でその可能性を示し、黒羽たちが確認した。
人が通れるかどうか分かりにくい道ほど、逃げ道にも敵の道にもなる。
■ 黒い煙
第15話以降、炭焼き道や右の林で見られる煙。
山火事そのものではなく、湿った葉や油布を使って、人の目を奪うために出されている。
火を広げるためではなく、人を動かし、列や道を崩すための煙。
■ 火薬箱
赤土峠へ送られる重要な荷。
濡らしてはいけない。
火に近づけてもいけない。
人混みに入れてもいけない。
守るための力でありながら、扱いを誤れば味方を傷つける危険もある。
迅が鉄砲や火薬への怖さを知り始めるきっかけになった。
■ 鉄砲
赤松弥八や真下兵庫が扱う武器。
遠くの敵を倒す力を持つが、撃つ場所を誤れば味方や避難民を傷つける。
第17話、第18話では、撃つことだけでなく、撃たないことにも責任があると示された。
迅にとっては、怖がるからこそ見るべきものが増える武器でもある。
■ 撃たぬ者
第18話の題にもなった言葉。
鉄砲を持つ者は、撃つ判断だけでなく、撃たない判断も背負う。
撃たなければ敵を逃がすかもしれない。
しかし、撃てば民や子を巻き込むかもしれない。
迅はこのあたりから、「撃つ前に見る」役目を少しずつ持ち始めている。
■ 小荷駄
大きな荷駄ではなく、少量の米や物資を細く運ぶ荷。
浄火寺へ米を送る際、俵を見せると避難民の列が崩れる危険があったため、小袋に分けて運ばれた。
荷は多ければよいわけではなく、見せ方や運び方も戦の一部になる。
■ 一椀と半椀
濡れた米から作られた粥が、椀に分けられて避難民へ渡された。
一椀で腹を満たすことはできない。
半椀では、なおさら足りない。
それでも、空の腹に温みを入れ、命を明日へつなぐ意味を持っている。
■ 水桶
喜助が多く関わっている道具。
飲み水、洗う水、火消し水として、それぞれ役目が違う。
第17話以降は、火薬箱や火元との距離も重要になり、水桶をどこに置くかが戦の判断にも関わるようになった。
■ 火勢
火の勢いのこと。
第20話では、右の林の火が本当に広がる火なのか、人の目を奪うための見せ火なのかを見極める必要があった。
火は大きさだけでなく、風、煙、燃えている場所によって危険が変わる。
■ 退路
退くための道。
ただ逃げる道ではなく、崩れずに下がるための道を指す。
戦では、進む道だけでなく、退く道を用意しておくことも重要になる。
■ 沢止め
第19話で瀬川が使った判断。
炭焼き道から流れてきた負傷者や避難民を、そのまま浄火寺へ流さず、沢の出口で一度止めること。
見捨てるためではなく、寺の門前で全体が崩れないようにするための苦い判断。
■ 役目に名が足りぬ
第20話で瀬川が口にした考え。
米を見る者。
荷を見る者。
道を見る者。
火を見る者。
水を見る者。
民を見る者。
これまでは、その場にいる誰かが必死に担っていた。
しかし、それでは毎回崩れかける。
この考えが、今後の燧国の軍制や役職の見直しにつながっていく。
■ 見る力
迅が少しずつ身につけている力。
敵だけを見るのではなく、人の足元、煙の向き、火薬箱の周り、水桶の位置、鉄砲の射線、避難民の列を見る。
戦が嫌いだからこそ、撃った後や動かした後に何が起きるのかを考える。
迅の成長は、強くなることだけではなく、見落とさないことから始まっている。




