第6話 ドラゴンとS級ブースト
ドラゴンの体力が少しでも減ってる今がいい。
「行くぞクリス」
「ええ、行くわよバイン」
二人で走り出す。
思えば後先考えない無茶な行動だがこの時はベストだと思ってやっている。
幸いかなり近くに行くまでドラゴンはのんびりしていた。
まさかドラゴン以外の生物が相手から攻撃してくるなんて思ってもないはずだ。
生まれてこの方なかったんだろう。
クリスが走りながら剣を引き抜き「やあああああ」と声を上げる。
初めてドラゴンが顔を向けた。
さすがに声を上げて近づく2人にドラゴンも警戒をした。
「オーーバアーーブーストオー」
俺も気合を入れてクリスにブーストのバフを付与する。
Sランク能力を発揮できるほどのブーストだ。
クリスが加速した、速い!
一気に懐まで入る。
右手と右足を切り裂いた。
これは…すげえ。
ドラゴンが支えを失い右に倒れる。
首を後ろから切りつける。切れた!
一瞬にして勝った!
あのドラゴンをほんの数秒で倒した。
しかし同時にクリスも丸太のように倒れた。
俺はやっとの思いで現場までやってきた。
クリスはこの坂を、この距離を一瞬で駆け抜けて、ドラゴンまで倒したのか。
ただ走ってきただけの俺はそれでヘトヘトだ。
それよりもクリスの様子を見ないと。
・・・気を失って倒れている。脈はあるので生きているが、脈打ちが異常に早く強い。
よく見ると手足も若干痙攣している。
少しだが失禁もしているようだ。これはさすがにやばいな。
俺は冒険者ギルドから預かっているフォレストベア回収用のマジックバックを使ってドラゴンを回収すると、クリスを背負ってその場を離れた。
山肌が出ている斜面から木々の生い茂る斜面まで戻ってくるとクリスを横に寝かせた。先ほどのドラゴンのもう一頭が現れると面倒なので木陰に隠したのだ。
クリスはそのまま次の日の昼まで眠り続けた。
俺はせめてもと毛布で身をくるんでやり冷えないようにしてやった。
昼過ぎ、ゆっくりと目を開けたクリスが急に飛び起きた。
「ば、バイン、ドラゴンは?」
「ああ、お前が倒したぞ、回収してこのバックの中だ。えーと、おめでとう」
「・・・あたし、やった?やったのね。やったあー」
またクリスに抱き着かれた。今回はちゃんと俺もうれしい。
強化魔法の限界への興味は失っていないが。
クリスが落ち着いたところで少し話をする。
「今のことろ昨日のもう一頭は戻ってきていない。しかし来ると面倒だ。クリス、お前が動けるようになったら早急に撤収したい」
「うん、そうね・・・」
「どうした?」
「ううん、なんでもない。ただ、もう一頭がいたら結局危ないのかなあって」
「それはそうだが、もう無理だぞ。次お前が同じことをやったら多分お前の体が崩壊する、それに昨日と違ってドラゴンも疲れていない」
「わかってるって。ただ心配に思っただけ」
「そうか、お前今回、十分に人の役に立ったぞ。よくやったな」
「あ、ありがと」
無茶さえしなければ照れている姿は本当にかわいいのだが。俺としても複雑だ。




