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World Without Memory ~生きる希望を探して~  作者: 深山河 蜻蛉
第三章 夢の中で出会った少女

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21 告げられた言葉

 「ごちそうさまでした」という食後の決まり文句を言った後、立ち上がって各々が食器を片付ける。

「美味しかったね」

 最後の一皿を水盤の上に乗せると、穂乃実が満足そうに微笑みかけてきた。

「ああ、美味しかったな」

 俺も表情を緩め、鸚鵡(オウム)返しのように言葉を返す。

「お昼、誘ってくれてありがとう」

「いや、大したことじゃないし、全然いいよ」

「私ね。お父さんは小さい頃に家を出ていっちゃったし、お母さんもいつも仕事で夜遅くに帰ってくるから、こうして誰かと一緒に食事をしたのは久しぶりだったんだ」

 穂乃実は感傷的にでもなったのか、ふと何かに思いを巡らせるように、自分のことを語り出した。

「誰かと一緒に食事をするのも、悪くないだろ?」

 俺はそんな彼女を見つめながら、確かめるように聞いてみる。

「うん、そうだね。もう慣れちゃったせいか、寂しいと感じることはないんだけど、たまに少しくらい賑やかなのもいいかなって思っちゃった」

 きっと一人が嫌だとか、そういうことではないのだろう。

 それでも大方の人間は、誰かとの繋がりを感じたいと思うはずだ。無論、俺もしかり。

「また来ればいいよ」

「……いいの?」

「都合がいいことに、俺はいつも、暇をしているからな」

 しんみりとした空気を吹き飛ばそうと、俺は軽く戯(おど)けてみせる。

 すると穂乃実は「何それ」というように右手で口元を隠し、ふふっとひっそり笑った。

 それから少し間を置いて、「でも」と話を切り出す。

「だったら、今度は私が料理をご馳走するよ」

「……いいのか?」

「もちろん! 今日のお礼もしたいし……そうだ! このプチっと占いのチョコ、その時まで取っておこうよ」

 穂乃実はおもむろにショルダーバッグからチョコを取り出すと、すっと俺の前に持ってくる。

「いいけど、別に次の機会にする必要もないんじゃないか?」

「だってそうすれば、また会える口実ができるでしょ?」

「それは……まぁ、そうかもしれない」

 本音を言えば、会うための口実は必要ないと思う。けれど、それも穂乃実が納得するために必要だというのなら、敢えて断る必要もないだろう。

「それじゃあ私、今日はこれで帰るね」

「わかった。またな」

「うん。お婆ちゃんも今日はありがとうございました」

「はいよ。気をつけて帰りなね」

「はい!」

 玄関先まで移動し、俺はそのまま彼女を見送った。

 足音が聞こえなくなるのを確認して、皿洗いでもしようと台所の方へ足を向ける。

 まさにその時――

「香織梨(かおり)さんも、穂乃実ちゃんには本当のことを言えなかったみたいだね」

 祖母が不穏なことを言った。

「え……?」 

「穂乃実ちゃんのお父さんね。十年前に亡くなっているんだよ」

 卒然(そつぜん)と告げられた祖母の言葉に、俺はその場で絶句するしかなかった。

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