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ルミビア  作者: 朝裏 刻


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7/10

エピソード6:かわいいコロッケそば

昼休み。


毎日あるはずの、何気ないお昼の時間。


何を食べようかと悩んでいるだけなのに、その時間にも、その人らしさは少しずつ滲み出てしまう。


そして、何気ない会話の中で、人との距離は少しだけ近づいていく。


今回は、そんな昼休みのお話です。


昼休みになった。


(さて、お昼どうしようかな?)


昨日はラーメンだったし。


昨日の夜はそうめんだったしな。


定食って気分でもないんだよな。


おにぎりだけっていうのも、なんか味気ないし…。


午後おなか空いてもいやだからな。


寿司は、給料日前だしなー。


奮発するお祝いが、何かあるわけでもなし。


焼き肉ってのも、昼だと違うかなー。


(あー、どうしよう。)


少し歩きながら考える。


その時、ふと思い出した。


(あ、そういえば。)


先週の『少年バンプ』で、主人公が食べてたそば。


めちゃくちゃうまそうだったんだよな。


あれ見てたら、あの時、めちゃくちゃ食べたくなったんだっけ。


(そうだ。今日は、そばにしよう!)


そう思って、駅前のお蕎麦屋さんへ急いで向かった。


なんだか今日は、忙しい一日だな(笑)


なんてことを考えて、暖簾をくぐる。


店の中を見渡す。


「あれ?中村さん?」


窓際の席で、中村さんがちょうど食べ終わったところだった。


目の前には、大きなどんぶり。


どう見ても、温かいお蕎麦だった。


「おっ、湊くん。」


「今日は暑いから、お蕎麦にしたんだ。」


「でも…。それ、温かいお蕎麦ですよね?」


「うん。」


少し間が空く。


「まあ、いいじゃないか、そこは。」


「そうなんですか?(笑)」


思わず笑ってしまう。


中村さんも、いっしょに笑った。


「何に、するの?」


「まだ、決めてないんです。」


「ここのコロッケそば、オススメだよ。」


「コロッケですか?」


「意外と、合うんだ。」


「本当は、二つ入れたいところなんだけどねー。」


「午後に眠くなっちゃうから、お昼は一個にしてるんだ。」


「そうなんですね!」


「午後も、仕事だからねー。」


「じゃあ、それにしてみます!僕も一個にしてみます!!」


券売機の前へ、立つ。


コロッケ


ちくわ天


紅しょうが天


いなり寿司


「紅しょうが天も、捨てがたい。」


「でも、我慢我慢。」


「中村さんの、オススメだしな。」


結局、


(今日は、コロッケそばにしよう!)


食券を買って、席へ向かった。


(コロッケは、たしか一個って言ってたな。)


(でも…。)


(午後、お腹空いたら嫌だし。)


(いや、でも食べ過ぎかな。)


(うーん…。)


(…よし。)


(お稲荷さんだけ、追加しよう。)


(…。)


(いや…やっぱり、ちくわ天も入れちゃおー♪)


(欲張り過ぎかな?まあ、いっか。)


しばらくして、運ばれてくる。


湯気が立ち上る。


思っていたより大きい。


一口、食べる。


「あつっ!!」


思わず声が、漏れた。


出汁が、沁みてうまい。


コロッケも、思ったより合う。


これは、驚きの気付きだった。


(人のオススメって、案外いいもんなのかもな。)


そんなことを思いながら、食べ進めるうちに、どんどん箸が止まらなくなった。


(ふー。おなかいっぱいだー。)


(やっぱり、ちょっと…たべすぎちゃったかもしれないな。)


午後の会社、部署へ戻る。


「中村さん。コロッケそば、美味しかったです。」


「食べちゃいました。」


「めっちゃ、うまかったです。」


「それは、よかった。」


「気に入った?」


「はい。今度は、二つ入れてみたいです。」


「一個にしたんだ。偉いね。」


「若いうちは、それぐらい食べられるからね。」


「あと十年、二十年したら油ものがきつくなるよ。」


「だいぶ先っすね。」


「あっという間だよ。」


「えっ、そうなんですか?」


「大人になると、体感は意外と早いもんなんだ。」


「知らないうちに、僕と同じぐらいになってるのも明日ぐらいかもよ?(笑)」


中村さんは、めずらしくイタズラそうな面持ちで笑った。なんだか、いつになくすごく楽しそうだった。


「それは、流石にないですよ(笑)」


「明日は、早すぎますって(笑)」


「でも、午後眠くなるから気をつけてね(笑)」


二人で笑った。


その時、ふと思った。


ルミビアで過ごしている時間が、もし地球にも影響しているなら。


時間の流れが違うなら、そういうことも、あるのかな。


そんなことを、少しだけ考えていた。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。


今回は、派手な出来事ではなく、ごく普通の昼休みを書いてみました。


誰かのおすすめを食べてみること。


何気ない雑談で笑うこと。


そんな小さな出来事が、少しずつ湊の世界を変えていきます。


ルミビアは特別な世界ですが、その中で積み重なる日常は、地球とどこか似ているのかもしれません。


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