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【日間コメディー〔文芸〕連載中5位入り】シリアス軍事SFから来たメカ娘、かわいいがわからないので日常コメディを破壊する 〜死の擬人化とマブダチになる模様〜   作者:
第二章 となりのタナちゃん

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12/21

第12話 マスターは撮りたい

 少佐の用意したアルバイト先は、市の中心駅から徒歩五分の距離に位置する喫茶店『わらび』だった。

 創業30年になる店舗だが、近年実施した全面改装により、開放感のあるモダンな内装になっている。

 個人経営、規模は小、従業員はオーナーを含む二名、経営状態不明。マキナのリサーチによると客足は停滞気味。しかし人口七万人規模の小都市であること加味すると、許容範囲内と判断する。

 なによりも少佐の推薦なのだから、信頼性は言うに及ばずである。


 「休憩中」のプレートが掲げられた店内で、マキナはベスト姿の老紳士と向かい合って座っていた。


 老紳士――オーナー兼マスターはマキナをひと目見た瞬間から、薄っすらと温和な笑みを浮かべ続けていた。

 マキナは業務について多くを質問したが、そのひとつひとつに丁重に答えてくれた。


 しばらくの間、志望動機や労働条件の確認など事務的な会話をしていたが、ふとマスターは小さく息をついた。


「若いなあ、本当に若い」


「それはどのような意味でしょうか? 確かにマキナは製造から日が浅い若輩者ではありますが、就労能力に不足はないと自覚しています。ご不明な点があられるのであれば、各機能について詳しく説明するのです」


 マキナが言うと、マスターは慌てたように手を振った。


「ああ、いやいや、申し訳ない。そういうつもりではなく、君のような若者が眩しいと言いたかったんだよ。そう、眩しすぎるから手元に置いておきたくなる、アンティークグラスのように」


「失礼ですが、そのお話は面接とどのような関係があるのです?」


「これは私にとって、とても大事なことなんだよ。筋肉軍人の面倒を見ることになるのかと思いきや、いやはや君のような可憐な少女とは……失敬、とどのつまり、君のことを大変気に入っていると伝えたかったんだ」


「はあ、それはどうもなのです」


 マスターは目を細め、吟味するようにマキナを見た。


「いささか奇抜ではあるが、筋肉よりはずっといい、筋肉よりは。私情を除いても、店も今より華やかになることだし、悪いことなどなにもない」


 マスターは腕を組んで、2度3度と頷いた。それから机に手をついて、姿勢を正した。


「とはいえ、採用にあたって一つだけ条件があってね」


「条件ですか? 労働時間のことならば、マキナは暇なので24時間365日連続稼働が可能なので、一般的な従業員よりも汎用性に優れているのです。是非、採用を検討していただきたいのです」


「24時間」


 マスターは一瞬眉をひそめて、すぐに表情をほころばせた。


「いやいや、すまないね、また不安にさせてしまったようだ。なにも無理なことを要求しようとしているのではなくて、制服のことなんだ。短めのフレアスカートに、ブラウスというシンプルなデザインなのだが」


「問題ないのです。マキナはオールラウンダーなので、装備を選びません」


「個性的な冗談を言う。なんてことはない、条件、そんな大層なものじゃないね、お願いというのは、制服を来たらまずは」


 窓際の棚に飾ってあったフィルムカメラを、マスターはちらっと見た。


「写真を1枚……いいかな? 君ならきっと、いや、必ず似合うと思うんだよ」


「写真撮影、なのですか? 構いませんが、どのような目的なのでしょうか?」


 マスターは目の付け根を指で揉んで、ふーと息を吐いた。そのまま、うつむき加減で言った。


「広報用……だよ、構わないかね?」


「宣材ですか、確認するので少々お待ち下さい……確認が取れました、匿名での利用なら問題はないのです」


 マスターの口元が歪んで見えた。徐々に崩れていって、くわっと目を見開いたかと思うと、勢いよく顔を上げた。


「ありがとう、それさえ叶えば私は満足だ。死んでもいい」


「亡くなられると困るのです、お体を労ってください」


 なぜ生死の話になるのだろう。宣伝用の写真を撮ることとの関連性が見えない。もしやこれは最初に小さな要求を飲ませてエスカレートさせていくフットインザドアテクニックではないだろうか――

 マスターの一言で、マキナの思考は中断させられた。


「よろしい、ならば合格だよ」


「えっ」


「面接は合格だ。君は今日から、私達のファミリーだよ」


「本当なのですか!?」


 マキナの腰が浮いて、椅子がカタカタっと音を立てた。

 こんな簡単に行くとは思いもしなかった。少佐の紹介とはいえ、自分は普通の人間ではない。難色を示されるものだと思っていたのに、こうもあっさり受け入れてもらえるなんて。


「ああ、嘘は言わないよ」


 マスターはカウンターの上の時計を見た。


「そろそろもう一人のアルバイト――桜野さんが出勤してくるから、挨拶していくといい。彼女には君の教育担当になってもらうからね」


「はいなのです!」


 マキナはまだ見ぬ先輩のことを思った。

 どんな人だろう、優しい人だろうか、怖い人だろうか。できたら、2人目の友だちになってもらいたい。データベースの作法に従って、自己紹介は明るく元気よくやろう。先輩を立てよう。

 

 とにかく、気に入ってもらえるように頑張ろう。


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