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アイツの過去 Ⅲ

矢野原の父さんは母さんが働いていた居酒屋の常連さんだった。

母さんに一目ぼれした父さんは色々アプローチしたんだ。だけど母さんはちょっと天然入っていて中々父さんの好意には気付かなくって三年程付きあうまで掛かったんだ。

母さんは俺がいたから最初は遠慮したけど、父さんの方も俺にとって一つ上の姉さんと一つ下の妹がいた。


『僕は魁李君の父親になりたい。もし良ければ僕の娘達の母親になって一緒に暮らせませんか?』


それがプロポーズの言葉だった。


その日俺が帰ったら父さんと、プロポーズを受け入れた母さんが家に待っていた。俺としてはイキナリの事だから混乱したし、受け入れなかったけど父さんと結婚すれば母さんが楽になれるならそれでいいと思ったから母さん達の前では祝福した。

姉さんと妹達は前から何となく父親の様子から何となく察していたらしい。姉さん達の本当の母親は浮気が原因で離婚。離婚する時に相当揉め他のが原因で、二人が憔悴してからは父さん大の女嫌いになっていたんだ。自分達のせいで再婚出来なくなった父さんが再婚する程好きになった母さんを二人は喜んで受け入れたよ。


それでまあ……母さんが少し席には慣れた隙に父さんが真剣な顔を作って俺に向き合った。

『単刀直入に聞くけど、魁李君。君、学校でイジメを受けているね?』

『はへっ?』

母さんが知らない筈の事を当時まだ赤の他人だった父さんの指摘に思わず変な声を出してしまった。直ぐに否定したけど。

『悪いけど僕は仕事柄君みたいな子供は何人も見来た。君のその怪我は遊んで出来る様な傷じゃない。……あの人に隠している様だからこうして二人っきりで話をしているんだ』父さんの気迫に負けた俺は観念して今日までの事を全て話した。あの子の持ちかけた話を含めてね。


『……君がされた事は立派な犯罪だ。しかし……魁李君の話だと担任だけではなく他の教師陣も知っていても可笑しくない。それなのに何もしないっと言う事は……先輩の出番だな』

顎を撫でながら一通り思案すると父さんは俺にもう一度聞きだしてきた。

『魁李君。君が望めば今すぐにでも転校をしても構わない。何なら明日からでも転校の手続きをしよう』

『えっ……?』

『正直言って今のままでは君が殺されてしまう。そんな学校行かなくて良い。彼女の事は僕が何とか説得する。……どうする?』

『…………二ヶ月。二ヶ月後に卒業式なんです。それまで堪え切れます』

『そうか……なら、中学は別の中学が良いね』

『はい』


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