アイツの過去 Ⅱ
彼女は六年生の三学期の終わり頃に転校してきた子だった。
彼女の顔の記憶はほとんどない。忘却もあるけど、彼女があまりクラスと馴染まず一匹狼をしていたが原因だった。彼女はクラスにいる間本を読んでいたり図書館に行っていたからいつの間にか消えていた事があったから、クラスメイト達は彼女と仲良くする事は止めたんだ。
まぁ予想通りに女子からも嫌われて、僕程ではないけど女子からも虐められる様に成ってね。最初の頃は。
彼女は本当に周りに無関心で、孤高で、中立を保っていた。
彼女の事で覚えている事は一つだけある。
何時もの様に女子トイレの中で僕は女子達に虐められていたんだ。
其処に偶然彼女が入って来た。彼女は虐めのシーンに少し驚いたのか目を見開いたけど、僕達を無視して遠い場所にある個室トイレに入ったんだ。
唖然としている僕達に様がすんだ彼女は手を洗って立ち去ろうとした時に女子達の顔を見て『……フッ』と小さく鼻で嗤った。
それに気付いたのリーダー格の女子は止めて何故そんな態度を取ったか問い質したんだ。そした彼女は馬鹿にしたように嗤ったまま。
『……だってさ。醜い貌をした女達がこれまた醜い笑顔をしながら醜い事をする。これ程面白い事を見て面白い事はないじゃあない?』
コレには女子達は大激怒。急に怒り出した女子達にキョトンとした彼女はさも不思議そうに。
『……分からないのなら鏡を見て確認をしたらどうです?』
そうして彼女が指差したのに釣られて俺や彼女達が鏡を見た。
其処に映っていた女子達は確かに彼女の言う通りに眼は釣り上がり、醜く笑っていた影響か眉間や口元が皺が寄っていて正しく『心が醜いと顔まで醜くなる』の典型的な例だった。女子達が自分の顔が醜くなっている事にショックを受けている内に彼女は僕の腕を掴んでトイレから出してくれたんだ。
彼女に手を引かれて僕は校舎裏まで一緒に逃げてくれたんだ。
『君の事情は男子から聞いているよ。母子家庭であんまり裕福じゃあないせいで虐められているんだって? お母さんは知っているの?』
母さんには余計な心配を掛けて虐めの事は言えずにいた。ボロボロにされた時は流石に隠す事は出来なかったけど、『遊んだ時に転んだ』と言って無理やり納得させてもらった。
『あのさ。他人の私が言うのもアレだけど。生活保護とか母子家庭の補助金を受けている?』
『えっ? 何それ?』
『知らないか……この様子だとお母さんも補助金とか受け取っていないね』
そうしてポケットから一枚の紙を取り出して俺に渡してくれた。
『コレをお母さんに渡してあげて。やりづらいなら新聞を取っているなら広告の中に放り込んで。取っていないなら封筒に入れて郵便が来たように偽造すれば良いよ』
私てくれた紙には母子家庭での補助金や生活保護の事が書かれた内容だった。
『もしお母さんが遠慮しているならもう一度私に言って。私のお母さん弁護士で、そう言った事に詳しいから。……こう言う補助金は本当に困っている人が受け取るものだから』 彼女は小学生だった俺に分かりやすく補助金の説明をしてくれて、もし母さんが渋ったら弁護士の彼女のお母さんが説得するって他人の俺に親身になってくれた。
まあ、結局彼女がくれた書類は渡せなかったけどね。……何故かって?
母さんが矢野原の父さんと結婚したからだよ。




