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アイツの過去 Ⅰ

俺の本当の親父は俺がまだ物心が付く前に事故で死んだんだ。

俺の両親は両方とも頼れる親族が誰もいなくって、母さんが女手一つで俺を育ててくれたんだ。ただ、母子家庭だったからあんまり裕福ではなかったいや、貧乏と言っても間違いない。

母さんは少しでも生活を楽にする為に昼は事務員、夜は居酒屋の調理師として朝から晩まで働いていた。あの頃の母さんは本当に過労で倒れるんじゃあないかと思う程働いていたよ。


そう言う訳で家事も母さんは殆ど後回しで、俺も出来る範囲で手伝っていたのだけど所詮子供のやる事だから高が知れてる。

それに貧乏だったから節約できる物は極限までに節約していたんだ。食事は居酒屋の残食か事情を知っているご近所の人が良くお裾分けしてくれたし、夜は月明かりで光熱費を節約していたし、散髪は母さんが近所の人から貰ったバリカンで切って貰ったから丸坊主だったし、風呂は濡れたタオルで身体を拭いて髪は坊主だから石鹸で洗って桶一杯の水で洗い流した。流石に夏はお風呂に入っていたけど、それでも半分以下の水の量だったな。洋服もほとんど近所の人の貰い物だからボロだったり流行遅れのデザインを着て、靴は履けなくなるまで履き続けたんだ。


そう言う訳で、坊主頭の衣服はボロボロ身体も薄汚れている俺は虐めのターゲットにされた訳。

男子も虐めに加わっていたけど、六年生の三学期まで女子全員から虐められていたからあんまり男子の虐めは気にならなかった。虐めの後半期はクラスの男子は女子達にどん引きして逆に俺を助ける様になったのも理由の一つだけど。


正直あの頃の記憶は全くと言うほどないんだ。

思い出そうとしても霧が掛かって思い出せないし、無理に思い出そうとしたら頭が割れる程の痛んで倒れて家族に心配掛けてしまってからは無理に思い出す事は止めたよ。

知り合いに精神科医がいたから相談したら『あまりにも辛い記憶を人間は時に忘れる事がある。魁李君の場合はそれで、無理に記憶を思い出したら精神が壊れるかもしれないから無理して思い出してはいけないよ』と言われたから小学時代の記憶は思い出さない様していしる。

ただ覚えているのは辛くて怖くて悲しい気持ちと、虐めていた女子達の嘲笑った顔、男子達の同情の眼。そして一人の・・・女の子・・・の事。


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