表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いい匂いと青い鳥と魔法の話  作者: かわいかつひと


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
61/62

朝練と兄の言葉

後から聞いた話だが、シャーロットがクラス分け試験で魔法をずっと維持させていたらしい。


去年の僕と同じだ。

Aクラスになるだろう。

僕はというと、二年生になった。

今年はクラス内での入れ替えはなかった。同じ顔ぶれだ。

朝練も再開した。

いつものメンバーが集まった。


僕、ルイーズ、レナード、エリック、セバスチャン。

いつもの場所で、いつもの時間に。

何かが変わったようで、何も変わっていない。

ただ一つ、ルイーズが違った。

ルイーズはバフを自分でかけるようになっていた。


カルヴィン領で覚えた空間魔力の補充。それを応用して、自分の身体にバフをかけている。

僕がかけるのとは違う。自分の感覚で、自分の限界をわかった上でかけている。

動きが鋭かった。

踏み込みの速さ、剣を振る力。どちらも以前とは別物だった。

レナードと打ち合っていたが、レナードが押されている場面があった。


はっきり言って、体術で敵う人間がいるのかと思った。

練習後、ルイーズが腕を押さえていた。

「反動がすごいのよ」

「痛む?」

「痛むというか、筋肉が悲鳴を上げている感じ。もっと強いバフをかけることもできそうだけど、筋肉が断裂しそうで怖い」


「無理はしないでください」


「わかってる。でも、これに耐えられる身体を作らないと。バフの意味がないわ」

ルイーズの目は真剣だった。

レナードもそう感じていたようだ。

「すごい動きだったな」

「ええ」


「だが、調子に乗ると怪我をするだろうな。身体の方が追いついていない」

「本人もわかっているみたいです」

「わかっているならいい」

レナードが少し間を置いた。


「レント、後で話がある。練習が終わってからでいい」

ルイーズたちが帰った後、レナードと二人になった。


訓練場の端のベンチに座った。朝の空気がまだ冷たかった。


「ルイーズのことだ」

レナードが言った。

「それと、アメリアとクララのことも」


「全部まとめてですか」

「まとめるしかないだろう」

レナードが僕を見た。


「お前は好きにすればいい。その考えは変わらない。だが、中途半端は良くない」

「中途半端ですか」

「ルイーズを連れて帰省した。アメリアに挨拶に行った。クララにはシャーロットを紹介した。お前はそれぞれに何かをしている。だが、誰にも本当のことを言っていないだろう」


返す言葉がなかった。


「僕は今、結婚のことは考えていない」

「何を考えている」

「魔族のこと。それと、勇者を死なせてはならないということ」

「だからルイーズと一緒にいると」

「ええ。一緒にいるべきだと思っている」


レナードがしばらく黙っていた。

「それをルイーズに言ったのか」

「いいえ」


「アメリアには」

「言っていません」


「クララには」

「言っていません」

「本音で話してみろ」

レナードが言った。

「景色が変わるだろう。景色が変われば、行動も変わる」

「景色が変わる」

「お前の考えは大切にしろ。だから、三人の考えも大切にしろ。お前は望んでいなくても力を持ってしまった。良くも悪くも影響が大きい。それを忘れるな」

重い言葉だった。

でも、兄が言うから聞けた。

「ありがとう。レナード兄さん。よく考えてみるよ」

「ああ」


レナードは立ち上がって、振り返らずに歩いていった。

一人になった。


『ソラ、どう思う?』

『環境がどうであろうと、レンさんがどうしたいかを大切にしてください』

『その環境がな。魔族はどうなんだろう。準備が活発になってきたと言っていたね』

『ええ、そうです。すぐに攻めてくるかはわかりませんが、来ることは確実でしょう』

『そうか』

少し黙った。

『そもそも僕は人を殺せるのだろうか。ルイーズは。みんなは』

ソラが少し間を置いた。


『レンさん、必ずしも殺す必要はないです。怪我をすれば戦えませんし、それを治療する人も必要になります』

『つまり』

『むしろ怪我をさせた方が、戦力を削れるかもしれません。一人の怪我人を運ぶのに二人要ります。治療にも人手がかかります。殺すより、生かして戦線から退かせる方が、相手の負担は大きい』

合理的だった。


ソラらしい答えだった。

でも、それが正しいのかはわからなかった。

怪我をさせることだって、簡単なことじゃない。

『考えましょう。時間はまだあります』

ソラが言った。

『ああ。考えよう』

朝の光が訓練場に差し込んでいた。


二年目が始まっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ