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いい匂いと青い鳥と魔法の話  作者: かわいかつひと


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入学式

入学式に上級生の参加義務はない。

ほとんどの生徒は来ていなかった。

僕はシャーロットがいるから観に来た、たぶんソラも観たいだろうし。


会場を見回すと、アメリアとルイーズがいた。

アメリアはクララ、ルイーズはシャーロットが気になるのだろう。

理由は違うかもしれないが、やってることは同じだった。

学年代表の挨拶が始まった。


クララが壇上に立った。

特に驚きはなかった。

王女なのだから、そんなものだろう。


「本日より、この学園の一員となりました。クララと申します」

去年のアメリアとは違った。

アメリアの挨拶は隙がなかったと思う。

完璧で、近寄りがたい距離を感じた。


クララの声には柔らかさを感じた。

「私は王族ですが、この門をくぐれば皆同じです。どうか気軽に声をかけてください」


実際にそうなるかはわからない。

でも、少なくともそう言おうとする人間だということは伝わった。

会場の空気が少し緩んだ。

挨拶が終わるかと思った。


「もう一つ、お願いというか提案があります」

クララが会場を見渡した。

「この学園には精霊様がいらっしゃいます。新入生として、ご挨拶すべきだと思います」

クララの視線がこちらを向いた。

「レント様、壇上にいらしていただけますか」


会場がざわついた。

気が進まなかった。

『そんなこともこれから増えるかもしれません』

ソラが言った。


学園長の方を見た。目が合った。小さく頷いてくれた。

立ち上がった。

通路を歩いて壇上に向かう間、周囲の声が聞こえた。

「すごくいい匂いがする」

「何をつけてるんだろう」

「香水?あんな香水ある?」


女子の声だった。

聞こえないふりをした。

壇上に上がった。新入生たちの顔が一斉にこちらを向いている。

「レント・カルヴィンです。二年生です。精霊のソラを紹介します」

ソラが肩から飛び立ち、僕の前で羽ばたいた。


『シャーロット様を敬ってください。あとは自由にしてください』

僕は少し間を置いた。

「いつでも話しかけてください、とのことです。これは僕の意見ですが、なんでも知っているので、迷ったことがあれば聞いてみてください」

会場がざわめいた。


「なんでも知っているって、どういうことですか」

誰かが声を上げた。新入生の男子だった。

「じゃあ、一つだけ聞いてみてください」

少し静まった。別の声が上がった。

「精霊様はどこから来たのですか」

『レンさん、好きに言ってもらって大丈夫ですよ』


「以前聞いたのですが、皆が好きなことをして暮らしている世界から来たそうです」

会場が静かになった。

「では、勉強とか仕事とかしなくてもいいのですか」

「ええ。必要なものはもらえますし、ただやりたいことだけをするみたいですよ」

「想像できません」

笑いが起きた。

『人は知っている範囲の延長でしか想像しないものです。その檻から出るのは難しいみたいです』

「いつかそんな世界が来てもいいように、何が好きか知っておくのはいいと思いますよ」

僕はそう言って壇上を降りた。


式が終わると、新入生たちが散っていった。

シャーロットとクララが並んで歩いてきた。

「レント兄様、急に呼ばれて大変だったでしょ」

「クララ、事前に言ってくれればよかったのに」

「すみません。でも言ったら断られると思って」

クララが悪びれずに笑った。


「まあ、そうだね」

「精霊様のお話、面白かったです。皆が好きなことをして暮らす世界」

シャーロットが言った。

「ソラちゃんはそういう世界から来たんだね」

「そう。僕も全部は聞いていないけど」

『聞かれたら何でもお答えしますよ』

「ソラちゃん、私にも色々教えてね」

シャーロットが言った。

『もちろんです』


クララが少し羨ましそうにしていた。

「クララも聞きたいことがあれば、遠慮しなくていいよ」

「本当ですか」

「ソラは誰にでも平等だから」


「二人はもう場所には慣れた?」

「私はまだ少し迷います」シャーロットが言った。

「クララは?」

「別邸ですので、迷うことはありませんが、学園の中はまだ覚えきれていません」

「シャーロットさんに案内してもらったんです」クララが言った。

「もう友達じゃない」

シャーロットが笑った。

「じゃあ、困ったことがあったら言って。二人ともね。あとクラス分けの試験頑張って」

「はい」


二人が揃って頷いた。

それを見て、少し安心した。

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