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いい匂いと青い鳥と魔法の話  作者: かわいかつひと


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クララとアメリア

部屋に戻ると、扉の前に人がいた。

三人。

真ん中に少女が一人、両脇に男女が一人ずつ。

少女が振り返った。

「レント様」

クララだった。

「クララ様、わざわざ来ていただきまして」

「様はよしてください。これからよろしくお願いしますね」

丁寧に頭を下げた。


アメリアとは少し違う。

もっと素直というか、構えがない。

「こちらこそ。学園はどうですか」

「まだ何もわかりません。でも楽しみです」

「それが一番です」

隣の女は控えめに微笑んでいた。

護衛というより侍女に近い雰囲気だった。


男の方は少し違った。

表情は整っている。

礼儀正しく立っている。

でも何か引っかかるものがあった。

目が笑っていないとか、そういう単純なことではない。

僕を見る視線に、余計なものが混じっている気がした。

警戒か、嫉妬か。

どちらにしても、初対面で出すものではないと思った。



「お二人は」

「私の友人です」クララが言った。「幼い頃からずっと一緒で」

友人、と言った。護衛とは言わなかった。

「そうですか。よろしく」

男が頭を下げた。

「オリバーと申します」

女が続いた。

「セシルです。よろしくお願いいたします」


「レント・カルヴィンです」

ソラに思念で合図を送った。

ソラが顕現した。

オリバーがほんの一瞬、目を細めた。

気のせいかもしれない。


「レント様も無事二年生になられたそうで」

「そうなんですか、知りませんでした」

「姉様が言っていました」

「アメリアから。彼女は情報通ですからね」

「ええ。レント様は変わった人だって」


クララが笑った。

「そうでもないさ」

「あと、魔法がすごいって」

「アメリアがそう言ったのかい」

「はい」

「クララ様は魔法を使いますか」

「少しだけ。得意ではありません」

「僕の妹も今年入学しています。シャーロットと言います」

「存じています。お会いしたいです」

「じゃあ、後で連れて行きます」


『同い年ですし、シャーロットさんにとっても良いのでしょう』

ソラが言った

『そうだね。じゃあ、呼びに行こうか』

シャーロットを探すのに時間はかからなかった。

中庭のベンチに座って、本を読んでいた。

「シャーロット」

「レント兄様」

「紹介したい人がいる」

「誰?」

「クララ王女」


シャーロットが少し驚いた顔をした。

「今から?」

「うん。だめかい?」

「だめじゃないけど、緊張しちゃう」

「こういうのは早い方がいいからね」

クララの部屋を訪ねた。

セシルが応対してくれた。


「シャーロット・カルヴィンです」

「クララです。お会いできて嬉しいです」

シャーロットが少し緊張していたのは最初だけだった。

「同い年なんですね」

「ええ。これから同じクラスになるかもしれません」

「そうなったら嬉しいです」


クララが言った。

「レント様の妹さんなら、魔法が得意ですか」

「得意というか、好きです」

「私は苦手で。教えてもらえたら嬉しいです」

「ええ。わかる範囲であれば喜んで」

会話が自然に続いていた。


僕が間に入る必要がなかった。

「姉妹になるかもしれませんね」


クララがさらりと言った。

シャーロットが一瞬こちらを見た。

僕は何も言わなかった。

「そうですね」シャーロットが答えた。


二人は笑っていた。

相性は悪くなさそうだった。

「じゃあ、僕はこれで」

「レント兄様、もう行くの」

「二人で話した方が楽しいでしょ」

シャーロットは否定しなかった。


ついでだから、アメリアにも顔を出すことにした。

部屋の前でリディアに取り次いでもらった。

「レント様。お久しぶりです」

「戻りました。挨拶が遅くなってすみません」

「いいえ」


アメリアはいつも通りだった。

表情が読めない。

穏やかに見えるが、それが素なのか作っているのか、いまだにわからない。


「帰省はいかがでしたか」

「ええ、のんびりしてました」

「どなたと帰郷されていたのですか」

知っているだろうに。

「ルイーズと帰っていました」

「そうですか」

「勇者を両親に紹介したかったので」

「そうですか」

同じ言葉が二度続いた。

声の温度は変わらなかった。


「クララが挨拶に来てくれました」

話を変えた。

「そうですか。妹がご迷惑をおかけしませんでしたか」

「いいえ。シャーロットとも引き合わせました。仲良くなれそうです」

「そうですか、それはいいことですが、クララがいると心配が増えます」


アメリアが少し間を置いた。

「王族として人との繋がりを広げていくことは大切です。クララにとっても、シャーロットさんにとっても。学園という場で関係を築くことは、将来の――」


僕は頷いていた。

頷きながら、聞いていなかった。

アメリアの本当の本心なら聞きたいけど。

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