シャーロットの覚悟
夕食前、シャーロットが部屋に来た。
「レント兄様、少し話を聞いてほしいです」
「どうしたの」
「マチルダさんから話を聞いて」
シャーロットが少し早口になった。
「マチルダさんは騎士団長の娘で、将来は兄さんの妻として戦場に行こうとしているんです。前線には立てないけど、家族のために、未来の夫のために、自分にできることを探して、治癒魔法を選んだんです」
「うん」
「私も同じです。剣も使えないし、戦うすべがない。でも治癒魔法ができる。家族を、領民を助けられるかもしれない」
「そうだね」
「だから、いざとなったら戦場に行きたいんです」
レントは少し考えた。
「夕食で言ってみるといい」
「父様が許してくれるかしら」
「わからないけど、言わないと始まらないよ」
シャーロットが頷いた。
夕食の席で、シャーロットが切り出した。
「父様、お話があります」
エドワードがフォークを置いた。
「私、戦場に行きたいんです。治癒魔法で、皆を助けたい」
エドワードが少し間を置いた。
「その気持ちは尊い。尊重したいとも思う」
シャーロットの顔が明るくなった。
「では、よろしいのですか」
「だが、戦争が起きると決まったわけではない。起きていないことを心配する必要はない」
シャーロットが少し止まった。
「今、孤児院の子供たちにも教え始めたと聞いている。いざとなれば、身を守れる男児が戦場に行けばいい。お前はこの地で傷ついた者を癒せばいい。これでもずいぶんと譲歩している」
エレノアが続けた。
「そうね。あなたが戦場に行くことで救われる人もいるでしょう。でも、あなたを守るために傷つく人もいるかもしれないのよ」
「でも」シャーロットが言った。
「自分の身を守ることは今考えています」
エドワードが少し首を傾けた。
「では、どうやって守るのだ」
「それは、まだですが。迷惑はかけません!」
エドワードが少し厳しい顔になった。
「できない事をできると言う人間は信用できない。できる事を証明してからの話だ」
シャーロットが口を開いた。でも言葉が出てこなかった。
ソラがシャーロットの肩に止まった。
その瞬間、シャーロットが泣き始めた。
マチルダがそっと立ち上がって、シャーロットの隣に行った。
「シャーロットちゃん、大丈夫よ。私が治癒魔法を覚えて、
あなたの家族が怪我したときは必ず治すから」
シャーロットが声を上げて泣き出した。
テーブルの全員がシャーロットを見ていた。
困ったような、愛おしいものを見るような目だった。
ソラがシャーロットの耳元で言った。
「できることはいっぱいありますよ。私も考えますから」
シャーロットが頷きながら泣いた。
夕食の後、庭に出た。ルイーズが隣にいた。
「シャーロットを見ていて、力を与えられたわ」
ルイーズが言った。
「そうですか」
「いい家族ね。うらやましいわ」
ソラが言った。
「血のつながりだけが家族ではないですよ。同じ方向を向いていれば、家族です」
ルイーズが少し笑った。
「そうかもね」ルイーズが言った。
「レントの家族が向いてる方向は、私の向きたい方向だと思うわ」
風が少し冷たくなっていた。
夜の空に星が出ていた。




