祝勝のディナー
レントが選んだのは王都の中にある静かな店だった。
「こんなところも知っているのね」
「ルイーズのために背伸びして調べたよ」
レントが笑いながらそう言った。ソラは窓枠に止まっている。
席に着くと、店の人がお茶を持ってきた。
レントが杯を持ち上げた。
「乾杯」「乾杯」
杯がぶつかった。
「勝つとは思っていたけど、やっぱり嬉しいよ、ルイーズが勝って」
「私もほっとしたわ」本当にそう思った。
「万が一もあるから。油断しないようにとずっと緊張してた」
「そんな風に思っていたんですね」
「実際ヴィンセントはすごいわよ」私は言った。
「力だけじゃなくて、勘もいい」
「そうですね。あのパワーで勘もあったら厄介かも」
「ええ」私は少し笑った。
「常に油断はできないわね」
しばらく話した。
「休暇はどうするの」レントが聞いた。
少し考えた。
「特に、帰るところもないわ」
「え、実家には帰らないんですか」
「父は忙しいですし。私も勇者と言われてから訓練とかで家にいないことが多かったので、実家は気を使うわ」
「そうですか」レントが少し間を置いた。
「じゃあ、うちに来ませんか」
うちってどこだろう。
「うち、というのは」
「カルヴィン領です。父さんも母さんも、ルイーズなら歓迎すると思います」
どうしよう、行きたいけど、行って良いのか。
急すぎる。
悪い話ではないけど、甘えて良いのか。
いろんな思考が浮かんでどうしようかと迷っていると、ソラが言った。
「ルイーズ。カルヴィン領は自然が多く良いところです」
ちょっと驚いた、ソラまで誘ってくれるなんて。
「シャーロットも会いたがっていると思います」ソラが続けた。
「シャーロットって?」ちょっと気になる。
「僕の妹ですよ。来年入学してきます」
「そうなの。行きたいけど、レナードさんは大丈夫かしら」
「兄さんもマチルダを連れてくるって言っていたし、
訓練相手が増えるのは歓迎しますよ」
「レナードさんはレンさんの判断は尊重してくれます」
「ソラはレンさんっていうのね。レントじゃなくて」
「ええ。はじめてあった時からです」
「そうなんだ。お言葉に甘えようかしら」
「うん。そうしてください」レントが言った。
「家族も喜びます、絶対に」
私は杯を持って言った。
「ありがとう」
店を出ると、夜の空気が少し冷たかった。
「楽しかったわ」
本音だった、いつもこうして過ごしたい。
「僕も」
「また」
「また」
私たちは別れた。
寮へ戻りながら、休暇のことを考えた。
カルヴィン領。レントの家族。シャーロット。
そう思うと、胸の中が少し温かくなった。
本当に嬉しい、と思った。
一方、王城ではアメリアが椅子に座っていた。
ナディアが報告を終えて黙った。
「わかりました」アメリアが言った。
「ご苦労様」
ナディアが下がった。
アメリアは少し考えた。
レントが勇者と訓練するのはわかる。国のためだ。
止めるべきではない。
私は王女なのだから、そこは理解している。
でも、食事まで行く必要があるだろうか。
問いただすべきか。
放っておくべきか。
アメリアは窓の外を見た。
どちらにしても、婚約者がクララか私かまだ決まっていないことがいけないのではないか。
父に話すべきかもしれない。
でも父に話せば、どう転ぶかわからない。
今夜はここまでにしよう。
アメリアは立ち上がった。




