それぞれの言葉
翌朝の訓練の時、レナードから声をかけられた。
「昨日の試合、見ていたぞ」
「どうでしたか」
「悪くはない」レナードが言った。
「ただ、もう少し工夫のしようはあっただろう」
「工夫、ですか」
「お前は魔法が凄まじいから、そういう発想はないかもしれんが」
レナードが続けた。
「剣だけで戦う時、相手の力を利用することを考えたか。あの馬鹿力をそのまま受けようとしていた」
「受け流せなかったということですか」
「流すだけでなく、引き込むこともできる。強みは弱点にもなる」
レントは黙って聞いていた。
「魔法でなんとかなるというのは油断につながる」
レナードが言った。
「常に今発揮できる力で最大の結果を出すことを考えることだ」
説教なのかアドバイスなのかわからなかった。
でも間違ってはいない気がした。
「わかりました」
『レナード様には感謝ですね』ソラが言った。
『そうだね』
午後、アメリアのところに行った。
「少し聞いてもいいですか」
「何でしょう」
「ソラが怖いという噂が広まっているようです。知っていましたか」
アメリアが少し間を置いた。
「知っています」
「そうですか」
「噂などはほうっておきなさい」
アメリアが言った。
「行動に人はついてくるものです。あなたはこれだけのことができる。
それが伝わっていけば噂など消えます」
はぐらかされたのか、本当にそう思っているのかわからなかった。
「私からもそれとなく伝えておきます」アメリアが続けた。
「任せてください」
「ありがとうございます」
アメリアが深呼吸した。
それだけだった。
『レンさん、ルイーズさんとリナさんがいます』ソラが教えてくれた。
夕方、廊下を歩いているとルイーズとリナが話していた。
「少し混じっていいですか」
ルイーズが頷いた。
リナがソラを見て、それからレントを見た。
少し緊張した顔をしていた。
『リナさん、はじめまして』ソラが言った。
「はじめましてって言ってるよ」レントが伝えた。
リナが少し目を丸くした。
それから少し表情が緩んだ気がした。
「は、はじめまして。精霊様にも感謝を」
『警戒してそうです』ソラが言った。
「そんなに緊張しなくても大丈夫よ」ルイーズが言ってくれた。
しばらく三人で話した。
リナは話すと面白い人だった。
二刀流を始めた理由、Bクラスに入った経緯。
平民出身で、道具を二本持てば単純に攻撃が二倍になると思って子供の頃から始めたらしい。
「今度、一緒に訓練しませんか」レントがリナに言った。
ルイーズが少し顔を変えた。
不機嫌そうだった。
「いいですね」リナが言った。「ぜひ」
「ルイーズも来ますよね」
「……行くわよ」ルイーズが言った。
なんでだろうと思った。
『レンさん、わかりませんか』
『何がさ』
ソラはそれ以上何も言わなかった。




