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いい匂いと青い鳥と魔法の話  作者: かわいかつひと


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準決勝

最初はルイーズ対リナだった。


「ルイーズ、見てるよ」レントは声をかけた。

「ええ」


観客席が埋まっていた。

リナが構えた。

両手に木剣。


低い重心。


ルイーズが向かい合った。


リナが構えた。

両手に握られた木剣が、わずかに揺れている。

重心は低く、いつでも飛び込める姿勢。


対するルイーズは、静かだった。


「始め」

号令と同時に、リナが地面を蹴った。

砂が跳ねる。

二本の木剣が、まるで別々の生き物のように襲いかかった。

右が来る。


ルイーズは軽く払う。

左が来る。

体を回して流す。

ルイーズの動きは捌いたというより、誰も触れられない何かに見えた。


リナは距離を取って、また踏み込む。

リズムが独特だ。

速くて、変則的。


観客席からも感嘆の声が聞こえた。


それでもルイーズは一歩も下がらない。

足元が揺れない。まるで地面に根を張っているようで、上半身だけで軽くいなしていた。

リナがさらに激しく仕掛けた。連撃、打ち込みの音が連続して響く。


ルイーズはその場を動かずに全部捌いた。

そのたびに、木剣同士がぶつかる乾いた音が響く。

リナの動きが大きくなった――その瞬間。

ルイーズが前に出た。

砂が跳ね、空気が裂ける。


右の剣を払い左の剣を弾いた。

リナの体がわずかに開いた。

その隙に、ルイーズの木剣が首元へ寸止め。

そして脇腹へ寸止め。


「そこまで」

グレイの声と同時に、観客席がざわめいた。

リナは木剣を下ろし、息を整えた。

「ここまで差があると感情が出ない。まるで幼子と大人の闘い」

リナが少しだけ少しだけ悔しそうにそう言った。

「いえ、多彩な攻撃で面白かったです。まだ奥の手はあるのでしょ」


リナが少し笑う。

「少しだけです。すべて出して自信を失うこともないでしょ」

ルイーズは目を細めた。

「そうですか。次回も楽しみです」

それだけだった。


「ルイーズは流石だね」

「ええ、二刀流は対応がしやすかったです。やはり片手であれば力は弱いですから」

「そうか、ルイーズと決勝戦できるように頑張るよ」

「ふふ、応援していますね」


ヴィンセントと中央に歩いて行った。

改めて近くで見ると、壁のように大きい。

その影がレントに覆いかぶさる。

「レント、俺に勝ってみろ」

「言われなくてもそのつもりだよ」

「俺は実力を示さないといけない。怪我をさせたらすまん」

「ヴィンセントが怪我するかも」

「ああ、そうだな」


「始め」

ヴィンセントが動いた。

巨体とは思えない速さ。

地面が震えるんじゃないかと思った。

レントは受けた。

衝撃が腕を走り、骨が軋む。

ただ重い。

ただの一撃で体勢が揺らいだ。

今度はヴィンセントが横から来た。


それを流した。そのまま上から来た。

避けつつ、踏み込んで反撃。

ヴィンセントが受けた、と思ったら身体をそのまま押された。

レントの足が後ろに滑った。

パワーが違いすぎる。


こっちは受けるたびに体が弾かれ、ヴィンセントは僕の攻撃にびくともしない。

ヴィンセントが前に出てきた。

剣を振って、また振った。


流しきれなかった。

横からの衝撃で、レントの体が弾かれた。

視界が揺れ、いつの間にか呼吸が乱れてきた。


体勢を立て直す前に、ヴィンセントが追ってくる。

受けたけど、木剣が手から離れ、宙を回転して落ちた。

「そこまで」

グレイの声が響いた。


レントは肩で息をした。

腕が痺れて、指先が震えていた。

「楽しかったぞ、レント」

ヴィンセントが笑う。

「それは良かったね」

「わっはっは。お前は楽しいやつだ」

肩を叩かれた。痛い。

でも嫌な感じはしなかった。


観客はヴィンセントの闘い方に興奮した様だった、

ルイーズの時とは違う熱狂の様なものがあった。


しばらくして、ルイーズが隣に来た。

「負けたわね」

「まったく惜しくもなかったです」

「そうね。どう分析する?」

「パワーが違いました。技術は同じくらいだと思ったんですが」

「攻撃をまともに受け止めていたから、体力を使ったみたいね」

「ルイーズはどうするつもりですか」

「どういう意味?」

「ヴィンセントが相手です」

ルイーズは少し考えた。


「攻撃が当たらないから関係ないわ」


「それで思い出しましたけど、ヴィンセントと訓練した時、

受け止めたルイーズのバランスが崩れていましたよね」

「そうね、だから受けなければいい。簡単よ」

二人で黙って訓練場を見つめた。

「ルイーズ、勝ったらお祝いしましょう」

「じゃあ、お祝い決定じゃない」

『ルイーズさんはお祝い何がいいんですかね』

「ソラさんはなんて?」

「お祝いが何がいいのかって」

「私もソラさんとお話ししたいわ」


『レンさん、いいですか?』

『勝ったらいいんじゃない』

「なんて言ったの?」

「勝つのが見たいって」


ルイーズが微笑みながら言った。

「やる気出てきたわ」

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