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いい匂いと青い鳥と魔法の話  作者: かわいかつひと


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41/57

準々決勝

ルイーズはひと足さきに準決勝進出を決めた。


ルイーズ対リナ・クレール。


残る1枠は、

レビン対ヴィンセント。

レント対アルベール・フォンテーヌ。

で今日決まることになる。


試合の前日、アルベールから声をかけられた。

「レントくん、よろしくお願いします。今日は精霊様と一緒じゃないんですね」

「呼ぼうか。すぐ来るよ」

「い、いえ、結構です」アルベールが少し後退した。

「怒らせると怖いので」

「え、怖くないよ。危害なんか絶対加えないし、怒ることなんかないと思うよ」

「あの、あくまで噂なんですが」アルベールが少し声を低くした。

「精霊様が怒ると罰を与えると聞いていまして」

「そんな事ないって言い切れるけど」

「そうなんですか。でも、レントくんに気に入られないと精霊様に罰せられるという話が」


レントはしばらく黙った。

「その噂は広がっているの?」

「はい。本当だったら怖いなと思いまして」

そういえば、と思った。

レントの周りに匂いで人は集まってくる。

でも話しかけてくる人はほとんどいなかった。

「ソラはそんなことしないよ」

「少しホッとしました」アルベールが少し表情を緩めた。

「ただ、授業でレビン様と対戦された時、その、雰囲気が」

「あれは僕がやったことで、ソラは関係ないよ」

「はあ」アルベールがまだ少し遠慮がちだった。

「明日、よろしくお願いします」

「こちらこそ」

アルベールが去った。


『ソラ、どう思う?』

『誰かが噂を広めた可能性はあります。目的はいろいろ考えられるので現時点ではなんとも』

『みんなに広まってそうだね』

『先ほどの話からするとそうですね。ということはアメリアさんが知らないことはないと思います』

あとでアメリアに聞かないと思った。


翌日、試合が始まった。

観客が増えていた。準々決勝だからだろう。


まずレビン対ヴィンセントだった。

レビンが仕掛けた。

速い。型が綺麗だ。

ヴィンセントが受ける。軽そうに見えた。

「どうした。そんな攻撃では突破できんぞ」

ヴィンセントは話す余裕もあるらしい。

レビンの猛攻が続く。でも、ヴィンセントは下がらない。

剣を捌きながらヴィンセントが前に出る。

ヴィンセントがただ力任せに剣を振ったように見えた。

レビンが流そうとした。


しかし流しきれなかったようだった、体勢を崩した。

そこをヴィンセントは一撃。

レビンはなんとか受けた。

木剣と一緒にレビンが弾き飛んだ。

「そこまで」グレイが言った。

「本気になれんな」ヴィンセントの決め台詞らしい。


次は僕の番だった。

アルベールが構えた。

槍だった。

訓練で数回経験があるだけだ。


「始め」

アルベールが来る。

剣を構え、呼吸を整えた。

向き合った槍の長さが、思った以上に圧を放っていた。

次の瞬間、風を裂く音。

槍の穂先が伸びてくる。

反射的に身をひねった。

踏み込もうとした足が止まる。

そのまま突っ込んで行ったらやられる。


それが本能的に理解できた。

アルベールは淡々と距離を保ち、穂先を揺らす。

挑発というよりは、そこが間合いなんだろう。

剣を握る手に汗が滲む。


どうやって近づけばいいのか……

槍が再び突き出される。

今度は低い軌道。

木剣で弾いたが、衝撃が腕に響き、体勢が崩れた。

アルベールは近づいて来なかった。

なんとなくわかってきた。


アルベールは穂先をわずかに引き、構え直した。

木剣を握り直し、低く構えた。

今度は、槍の動きをよく見る。

槍の穂先が、またわずかに揺れた。

その揺れが来る合図だと、理解した。

次の瞬間、槍が一直線に伸びる。

空気を裂く鋭い音。

横へ跳ぶのではなく、前へ踏み込んだ。

ここしかないと思った。

穂先が頬をかすめた。

踏み込んだ足が土をえぐり、体が前へ滑り込む。

アルベールの目がわずかに見開かれた。

槍の柄が横へ払われた。


でも、もう僕は槍の死角に入っていた。

長い武器が最も扱いづらい、至近距離。

木剣を低く構え、息を吐いた。

何度も同じことはできない、ここで決める。

槍の穂先が動いた。

かわしてから、踏み込んだ。


槍を横に振られた。

なんとか受け止められた。

その瞬間に踏み込んだ。

槍が使えない距離だ。

木剣をアルベールの肩に当てた。

「そこまで」グレイが言った。


息が上がっていた。

あっさり終わらなかった。

アルベールが頭を下げた。

「ありがとうございました」

「こちらこそ。強かったです。」

「レントさんも」アルベールが少し嬉しそうだった。


ルイーズが近づいてきた。

「苦戦してたわね」

「そうですね。槍は想定外でした」

「それが見ててわかりすぎたわよ。たとえそうだとしても、涼しい顔していないと」ルイーズが言った。


「最後、踏み込むタイミングは良かったわ」

「まぁ、勝てたから良しとしてください」

「準決勝はヴィンセントとあなたね」

「決勝で対戦できるといいわね」ルイーズが言った。

「ルイーズもこれから準決勝じゃないですか」

「負けるわけないでしょ」

ルイーズが少し呆れた顔をした。

「私が負けるとしたら魔法を使うあなただけよ」

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