ルイーズの見ているもの
「知っているとは思うが、改めてルールを説明する」
グレイが全員の前に立った。
「対戦相手はランダムで決まる。勝ち抜き戦、で負けたら終わり」
全員が黙って聞いていた。
「試合は基本木剣のみ、とはいえ木であれば槍でもなんでもかまわん。
魔法は原則禁止。ただし、特別な事情がある場合は申告しろ」
レントはソラを見た。
ソラが小さく羽を動かした。
「試合は学園の訓練場で行う。日程は追って知らせる。以上だ」
「先生」レビンが手を上げた。
「対戦相手は本当にランダムですか」
「ランダムだ」グレイが言った。
それだけだった。
『レンさん』ソラが日本語で言った。
『ランダムではないと思います』
『なんで』
『グレイさんの目が少し動きました。癖があります』
『癖覚えといて』
僕も気をつけないと。
最初の試合が始まった。
観客はまばらだった。
学園内の生徒が何人か立って見ている程度だった。
ルイーズの試合になると満席になった。
ヴィンセントの試合も多かった。
レントの番が近づくと、また少し増えた。
匂いが届いているのかもしれない。
観客の端の方でひそひそと話している声が聞こえた。
「なんか良い匂いがするわ、癒される」
「あの人よ、噂の彼」
「あーそうなんだ」
「ソラ、少し姿を消しといて」
『わかりました』
ソラが消えた。
レビンの試合があった。
相手は名前を知らない生徒だった。
レビンが来る。
速い。
無駄がない。
型が綺麗だった。
基本に忠実な動きだった。
力もある。
押し込んで、崩して、仕留める。
あっさり終わった。
負けた相手が木剣を下ろした。
「強いな」隣にいたエリックが言った。
「そうですね」
レビンのことをあまりわかっていなかったと思った。
別の試合でBクラスの女性が出た。
小柄で両手に木剣を持っていた。
相手が来る。
動く。速い。
二本の剣が別々の軌道で動く。
相手が捌こうとする。片方を捌けばもう片方が来る。
リズムが読めない。
変則的な動きだった。
あっという間に終わった。
「あの子は」レントがエリックに聞いた。
「リナ・クレール。Bクラスだ。二刀流は珍しい」
エリックが言った。
「そうですね」
ルイーズを若くした感じがした。同じ年だけど。
もし対戦することがあれば面白そうだと思った。
レントの試合が来た。
試合が始まった時から観客がざわめいていた。
相手は名前を知らない生徒だった。
静かそうな男だった。
「よろしく」レントが声をかけた。
「お手柔らかにお願いします」相手が言った。
向かい合った。
「始め」
相手が来る。
速くはない。こんなものかと思った。
流してカウンター。
もう一度押す。
相手がよろける。
木剣を相手の肩に当てた。
「そこまで」グレイが言った。
あっさりと終わった。
匂いのせいかもしれない。
僕の目的とずいぶん違ってきた気がした。
試合が終わって戻ってくると、ルイーズが隣に来た。
「調子はどう?」
「あっさり終わってしまったよ」
「そうね」ルイーズが言った。
「あなたは普通に強いわよ、魔法がなくてもね」
「ルイーズは?」
「特に問題ないわね。体調もいいし」
ルイーズが言った。
「リナ・クレールって知ってる?」
「ええ」ルイーズが少し考えた。
「二刀流は対処がよくわからないわ」
「ルイーズと当たったらどうなると思う」
「どうかしら」
ルイーズが言った。
「負けないと思う。嫌味じゃないのよ、ただそうなの」
「まだ本気出してないんじゃない」
「そうね」
『ルイーズさんは、全部わかっていそうです』
「ソラさんはなんて?」
「ルイーズはすごいって」
「あなたからそれを言われると考えちゃうわ」




