翻訳が必要な来訪者
朝練が終わる頃、レナードが見慣れない顔を連れてきた。
ずいぶんと背が高い、横にも広い。
立っているだけで圧がある。
「レント、紹介する」レナードが言った。
その男が喋った。
「ヴィンセント・アーノルドだ。お前と同学年だが、俺のが強い」
「カルヴィン・レントです。よろしくお願いします」
ヴィンセントがレントを見た。
それから少し鼻を動かして、深呼吸した。
首を振った。
顔が少し赤かった。
「レナードさんの弟とはいえ」ヴィンセントが言った。
「同級生を簡単にアレク様に会わせるわけにはいかん。まず勝負だ」
「いきなり意味がわかりませんが」
「アレク様に会う資格があるか試してやるって言ったんだ」
「アレク様?ああ、アレクサンダー王子ですか。
会わせる権限がヴィンセントにあるんですか」
ヴィンセントが止まった。
「わっはっは」レナードが笑った。
ヴィンセントが構えた。「面白いことを言う」
「とにかく勝負だ」
仕方なく木剣を構えた。
ヴィンセントは体に合わせたのか、バスタードソードを模した木剣だった。
ヴィンセントが来た。
重かった。
受けた瞬間にわかった。力が違う。
エリックやセバスチャンとは次元が違う。
力だけならレナードより強いだろう。
正面から受け続けると腕が持たない。
全て受け流すことにした。
ヴィンセントが打ってくる。
流す。
また来る。
また流す。
重さがある分、動きが大きい。
隙が生まれる。
カウンターを狙った。
脇腹に当たった。
けど、全然止まらない。
受けるしかないと思った瞬間「そこまで」レナードが言った。
ヴィンセントが止まった。
息が少しも乱れていない。
「同学年で俺の攻撃を凌ぐとはな」ヴィンセントが言った。
嬉しそうだった。
「いえ」
「そうか」ヴィンセントが木剣を下ろした。
しばらく何か考えていた。
「アレク様に合わせてやる」
「兄さんの紹介のがいいです」
「うるさい。来い」
アレクサンダーは学園の中庭にいた。
ヴィンセントと二人で近づいていった。
背が高かった。
落ち着いた目をしていた。
隣にはレナードが立っていた。
「アレク様」ヴィンセントが言った。「連れてきました」
「敬称か名前を言え。公の場ではそうしろといつも言っているだろう」
アレクサンダーが言った。
静かな声だった。
「俺はお前の親ではないぞ」
「失礼しました。アレクサンダー様」
アレクサンダーがレントを見た。しばらく見ていた。
「カルヴィン・レントか」
「はい。はじめまして」
「噂は聞いている」アレクサンダーが言った。
「精霊に加護を受け、凄まじい魔法の才能があると」
「学園では勇者と仲がいいと話題にもなっている」
「一緒に訓練しているだけです」
「それだけか」アレクサンダーが少し目を細めた。
「勇者には期待している、国のためにな」
「本人の意志は聞かないのですか」
アレクサンダーが少し間を置いた。それから小さく笑った。
「レナード、面白い弟だな」
「ええ、まぁ」レナードが言った。
「レント、俺も勇者と手合わせしたい」
ヴィンセントが腕を組みながら言った。偉そうだ。
「聞いとくよ」
帰り際、レントはレナードに小声で言った。
「兄さん、よくヴィンセントと一緒にいれるね」
「あいつは、ああ見えてかわいいやつだ」
レナードが言った。
「マチルダの弟でな。姉を取られると思って対抗心をぶつけてくる。
単細胞で真っ直ぐなだけだ。それを知っていれば腹も立たん」
「マチルダって?兄さんの彼女ですか」
「ああ、騎士団長の娘だ。次の帰郷の時連れて帰るつもりだ」
「そうなんですか。その前に会わせてください」
「そういえば、マチルダもソラに会いたいと言っていたな。近いうちに場を作る」
午後、ルイーズと話した。
「ヴィンセント・アーノルドって知ってる?」
「騎士団長の息子さんですよね」ルイーズが言った。
「Bクラスですが、実技はトップクラスと聞いています」
「今日会って、手合わせした」
「どうでしたか」
「強いと思う。力が特に、まともに受けたら押し込まれる」
ルイーズが少し考えた。
「そうですか」
「今度ルイーズに会わせろって言われた。手合わせしたいって」
「それはレントも一緒に来るの」
「ん、そりゃ行くよ。僕が紹介するんだから」
ルイーズが頷いた。
「じゃあいいわよ」
『アメリアさんも呼んだらどうですか』
『なんで?呼ばなくていいよ』
「ソラさんはなんて?」
「ヴィンセントとの対戦は楽しみだって」
「アメリアって聞こえましたけど....」




