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いい匂いと青い鳥と魔法の話  作者: かわいかつひと


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それぞれの常識

学園生活に流れができてきた。

朝はレナードたちと訓練する。

ルイーズもよく来るようになった。


午前は座学。

午後は実技。

放課後はアメリアとお茶をすることが多かった。

ただちょくちょく断って、ルイーズと訓練することもあった。

アメリアは断られるたびに深呼吸した。


ある日の放課後、レントはルイーズを誘った。

「街に行こうよ。ゆっくり話したくて」

ルイーズが少し目を丸くした。

「街、ですか」

「街で訓練とかじゃないですよね?」


「そんなことしないよ」

ルイーズは面白い発想をする人だ。

「ええ、いいですよ」少し弾んだ声だった。


二人で城門を抜けた。

王都の街は相変わらず賑やかだった。

レントが歩くと人が振り返った。

ルイーズが歩いても振り返られた。

振り返る理由はおそらく違うと思う。


「レントは目立ちますね」

ルイーズが言った。

「ルイーズもだよ」

適当な店に入って、窓際の席に座った。

ソラが窓枠に止まった。


お茶が来た。

「ゆっくり話したいというのは」

ルイーズが聞いた。

「特に用事があるわけじゃなくて。ただ、訓練以外で話したことがあまりなかったなと思って」

ルイーズが少し考えた。「そうですね」


しばらく話した。

ルイーズの生まれた場所のこと、衛兵の娘であること。

勇者と言われるようになった経緯、そこから優遇されてきたこと。

そこから剣だけをやってきたこと。


「まだ週に2回は稽古をつけてもらっています。ただ師匠にはこれ以上は教えることがないと言われてしまいました」

「やっぱりルイーズはすごいね。あの動きを見てれば納得できるよ」

「ところで....」ルイーズがちょっと間を置いてから聞いた。

「アメリア様はいいのですか」

「何がですか」

「こうして私と一緒にいて」

「僕がルイーズと一緒にいたいからです。何か問題がありますか」

「そ、それはその、ありがとうございます。で、でも婚約されたのでは?」


レントは少し考えてから答えた。

「決まったわけじゃないですよ。第二王女のクララかもしれませんし、

父からはできればしてほしいくらいしか言われていないので」


「そ、そうなの。私だったらそれを断ることなんかできないわ」

ルイーズが言った。

「うーん」レントが言った。

「今のところ断る理由もないですが、僕がお願いした訳でもないので」

「それは許されるのかしら」

「何もない人間なら難しいかもしれませんね。でも何もないなら婚約しろとは言われないですから」

「そういうものですか。レントは変わっているわね、少し羨ましい」

「ルイーズもできますよ。その気になれば」


ルイーズが言った。「あなたは不思議な人ですね」

「ルイーズだって勇者って呼ばれても、ルイーズはルイーズでしょ」

ルイーズが窓の外を見た。

街の人たちが歩いていた。

「私は勇者と言われてから、周りの目が変わりました」

ルイーズが言った。

「近寄らなくなった人もいます。遠巻きにする人もいます。レントは違いますね」

「いい訓練相手でしょ?」

「最初はそうだったかも」ルイーズが少し笑った。

「でも今は違う気がします」


レントは答えなかった。

ソラが窓枠で羽を動かした。


翌日の朝、廊下でリディアとナディアが待っていた。

アメリアの取り巻きだった。

「レント様」リディアが言った。

「ひどいと思います」

「何がですか」

「アメリア様がお可哀想です」

ナディアが続けた。


「昨日も街にルイーズ様と行かれたとか」

「それが何か」

「レント様からもアメリア様を誘ってください」リディアが言った。

「最近、ルイーズ様と一緒にいることが多いですよね」

「訓練です。国のためです」

「そうだとしても」ナディアが言った。

「アメリア様は気にされています」

「レント様の実力はみなさん知っています」リディアが言った。

「だからルイーズ様と一緒にいる理由もわかります。でも、アメリア様を大切になさってください」

二人が頭を下げて去った。

レントはしばらく廊下に立っていた。


夜、ソラと話した。

『一度きちんとアメリアと話さないといけないかな』

『そう思います』ソラが言った。

『何を話せばいいんだろう』

『レンさんの気持ちを正直に話せばいいと思います』

『気持ちか』レントは天井を見た。

『僕はどうしたいんだろう』

『わかりませんか』

『わからない』

『婚約について、どう思っていますか』

『父が望んでいるからね』

『アメリアはどうですか』

レントは少し考えた。

『面白い人だと思う。でもまだよくわからない』

『クララは』

『明るくて好きだよ。シャーロットと仲良くなってくれたらいいなと思う』

『ルイーズは』

レントが黙った。

『ルイーズは』ソラが繰り返した。

『魔族と戦うなら、一緒にと思っている』

『それだけですか』

『彼女はいい人だよ。傷ついて欲しくない』

ソラが少し間を置いた。


『今すぐ決める必要はないと思います』

『ただ、アメリアとはゆっくり話した方がいいです。お互いがどうしたいのか』

『そうだね』レントが言った。

『話してみる』

窓の外はすっかり暗くなっていた。

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