試験
試験は三日に分けて行われた。
一日目は歴史と外交、戦術だった。
歴史は書いて答える形式だった。
ソラが書斎で読んだ書物の内容と、生まれてから蓄えてきた知識を合わせれば大体は答えられた。
外交は外交と言うより、その世界の地形・気候・人口・産業・都市や特色など、
前の世界では地理と言われていたものだ。
こちらもソラに事前に確認しておいた。
『手応えはどうですか』
『悪くないと思う』
午後から戦術。
過去の戦争を題材にした問題が並んでいた。
実際の戦闘の流れを読み、次にどう動くべきかを答える形式だった。
レントは少し手が止まった。
実際には正解はわからないからだ。
隣の席でジャンが静かに答えを書いていた。迷いがなさそうだった。
レントは考えた。ソラなら何と答えるだろう、と。
思いついた答えを書いた。
『ソラ、この試験どう思う?』
『平和を表していると思います』
終わってから廊下でジャンに聞いた。
「難しくなかったですか。正解なんて戦場でしかわかりませんし」
「確かにそうですね」ジャンが言った。
「でも、セオリーがありますから。その場での最善と思えるものを書きました」
「そうですか」
二日目、魔法の試験だった。
広い部屋に椅子が並んでいた。
一人ずつ前に出て、光を出す魔法をどれだけ持続できるか計測する形式だった。
試験官は中年の女性だった。
「ハウエルです」と名乗った。
「計測を始めます。光を出したら声をかけてください。消えた時点で記録します」
一人目が前に出た。
光を出した。
少ししてから消えた。
「22秒」とハウエルが言った。
二人目、38秒。
三人目、27秒。
「かなり優秀ですね」ハウエルが言った。
それが続いた。平均は30秒ほどだろうか。
ひとり90秒を超えた生徒が一人いた。
周囲がざわめいた。
レントの番が来た。
「王城でのことは聞いています。あなたには期待しています」
レントは頷いて、それから光を出した。
ハウエルが時計を見た。
30秒経った。光は消えない。
60秒。消えない。
90秒を過ぎた。ハウエルが少し顔を上げた。
2分が経った。
正直どうしようかと考えていた。
たぶん意識がある限りは続けていられる。
ハウエルが時計を置いて、レントを見た。
少し飽きてきたから、光を大きくした。
それからイメージで色をつけてみた。
青くして、赤くした。それから緑にして、また白に戻した。
形を変えたり、点滅させたり。
「他の子見てるから、続けられるだけ続けててちょうだい」
ハウエルは他の生徒の計測をはじめた。
部屋が静かになった。
次の生徒が前に出て始めた。
レントは壁際で光を出し続けた。星の形にしてみた。
ハウエルが時折レントを見た。何も言わなかった。
全員が終わったところで、ハウエルが言った。
「カルヴィン様、結構です」
「はい」
光が消えた。
「魔法の勉強はしていましたか?」
「はい、独学ですがしています」
「独学でしたか。それは楽しみです」
ハウエルがそれだけ言った。
3日目は実技だった。
教官はグレイという名の男だった。
がっしりした体格で、口数が少なかった。
「一人ずつ前に出ろ。こちらがいいと言うまでだ。全力でこい、いいな」
一人目が出た。
グレイは軽く動いているように見えた。
それなりに押し返した生徒もいた。
レントの番が来た。
木剣を構えた。
グレイが踏み込んできた。
速い。
武官たちと同じくらいだと思った。
レナードよりは遅い。
捌いて、反撃した。捌かれた。
グレイのスピードが上がった、レナードと同じくらいか。
なんとか捌けた。
グレイが少し下がって、目を細めてこちらを見た。
「ここまでだ」
二人が離れた。
グレイがレントを見た。
「カルヴィンと言ったな。レナードの弟か」
「はい」
「そうか」グレイが言った。
その後も試験は続いた。
試験が全部終わった夜、ソラに言った。
『どうだったと思う』
『あのグレイさん、体力が凄まじかったです』
『確かにそうだけど、そうじゃなくて試験のこと』
『戦術が少し心配です。他は問題ないと思います』
『Aクラスに入れるかな』
『アメリア様に怒られないといいですね』
『そう言われると、別にAクラスに入りたい訳じゃないから、どっちでもいいか』
明後日、結果が出る。




