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いい匂いと青い鳥と魔法の話  作者: かわいかつひと


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入学式

夕食の時間、席に着いた時声をかけられた。

「あの、よろしいでしょうか」


顔を上げると、少し緊張した顔の男の子が立っていた。

同い年くらいに見えた。服が他の寮生より質素な気がした。


「はい」

「ジャンといいます。精霊様にご挨拶したくて」

ソラが羽を動かした。

『これからしばらく増えそうです』

ジャンが少し後ろに下がった。

「挨拶してくれたのですか。光栄です」

レントは特に訳さなかった。

「隣に座ってください」レントが言った。

「言葉も普通にして欲しいです」


ジャンが席に着いた。

少し緊張がほぐれた顔をしていた。

「平民でこの学園に来るということは、何か得意なことがあるんですか」

ジャンが少し考えた。

「戦略ゲームが得意です。負けたことがないので」

「それはすごい。一度も負けたことがないということですか?」

「はい。それで推薦されて。ここには士官になる方も多いので気に入られれば登用されるかもしれないと」


レントはソラを見た。

『興味深いですね』ソラが言った。

『ソラと勝負したらどうなるんだろう』

『私も気になります』


「私は戦略ゲームは得意ではないのですが、ソラは得意だと言っています。

いつか手合わせをしてみてください」

ジャンは嬉しそうに答えてくれた。「私でよければ、ぜひ」


入学式の朝、ソラに声をかけた。

「今日は姿を消しといて」

『わかりました』

ひとりで中に入った、ソラがいると必要以上に目立つから。

でも、すれ違うたびに振り返られた。

おそらく全員が。


ソラはいない、けどあまり関係なかった。

レントは前を向いて歩き続けた。

大広間に入ると、すでに生徒たちが並んでいた。

レントが歩いていると、視線が集まってきた。


気持ちの良い目立ち方ではなかった。


壇上に学園長が立った。

年老いた男だった。

落ち着いた声で歓迎の言葉、学園の歴史、期待の言葉。それが続いた。

次に壇上に上がったのはアメリアだった。

アメリアが前を向いた。背筋が伸びていた。


「本日ここに集った皆様へ。私はこの国の王女として、この場に立つことを誇りに思います。

学園はただ知識を得る場ではありません。共に学び、共に競い、共に高め合う場です。

この中に将来の国を担う者たちがいる。私はそう信じています。

皆さんとともに、この学園で過ごせることを楽しみにしています」

短かった。でも澱みがなく、よく通る声だった。


拍手が起きた。

レントも拍手をした。


式が終わると、アメリアが取り巻き二人と一緒にレントのところに来た。

近づきながら、深呼吸した。

「挨拶はどうだったかしら」アメリアが聞いた。

「堂々としていて良かったと思います」

「そう」アメリアが少し頷いた。

「本来はあなたから言いに来るべきよ。挨拶すると言ったでしょう」

「それは失礼しました」

「まあいいわ」アメリアが言った。

「今日はソラはいないのかしら」

「姿を消してもらっています、そばにいますよ。ソラ、出てきていいよ」

小さな光がだんだんソラの形になっていって顕現した。

演出を考えたらしい。

「ソラ、ごきげんよう。レントの試験対策はどうですか」

「僕に聞いてください。まぁ大丈夫ですよ」


アメリアが少し目を細めた。

取り巻きの一人がまた小さく笑った。

アメリアが振り返った。

取り巻きが顔を戻した。

「違うクラスになるということは婚約は破棄になるかもしれません」


アメリアはそのまま歩いていった。

深呼吸しながら。

『あれは脅しかもしれません』

『脅せてないけどね。でも面倒そうだから頑張るよ』

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