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いい匂いと青い鳥と魔法の話  作者: かわいかつひと


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22/59

ソラのお披露目

出発まであと十日というころから、屋敷の前に人が来るようになった。

門番が困った顔で報告してきた。

「精霊様を一目見たいという方々が」

「うーん、お断りしてください」

「はい」

次の日も来た。またその次の日も。


エドワードに相談に行った。

「王都から噂が広まっているようです」

「そうだな」エドワードが言った。

「噂はもう止められん。神の使いだと思われているようだ、私もだがな」

「どうしますか」

エドワードが少し考えた。

「エレノアに相談してみろ」



エレノアに会いに行くとハグをされた。

最近は特に多い気がする、学園に行くからだろうか。

「そうね。出発の当日にソラ様をお披露目しましょうか。

中途半端に隠すより、見せた方が噂が落ち着くでしょう」

エドワードも同意した。

「そうしよう」

その間も毎日ソラに会いたいと人は来ていた。

そこでも伝えて、告知した。

出発の朝、壇上に出ると。



当日の朝、屋敷の前が人で埋まっていた。

カルヴィン領の領民だけではなかった。

遠くから来た人もいるようだった。

「思ったより多いですね」レントが言った。

「そうか?予想通りだ」エドワードが言った。


レントはソラを見た。

『行きましょう』ソラが言った。

屋敷の門が開いた。

人々がざわめいた。

レントが歩き始めた。

人が左右に分かれていった。

ソラが肩の上にいた。

前に進むにつれて、ざわめきが変わっていった。

「いい匂い」

「なんだこれ」

「気分が良くなってきた」

「この世のものとは思えない」

「癒される」

後ろの方まで届いているのかどうかわからなかった。

でも前の方から波のように広がっているようだった。

人々の視線はレントよりソラに集まっていた。

精霊がいい匂いをもたらしている、と思っているようだった。


周りが静かになっていった。

レントが壇上に上がった。

眼下に人が広がっていた。

「カルヴィン辺境伯の次男、レントです」レントが言った。

「精霊のソラに加護をしていただきました」

人々がソラを見ていた。

「ソラ、挨拶をお願いできますか」

ソラが羽を広げた。

『皆様、はじめまして』ソラが日本語で言った。


ざわめきが起きた。

「精霊が喋った」誰かが言った。

「なんて言っているんだ」別の誰かが言った。

「皆さん、はじめましてと言っています」

レントがなんと言っているか説明した。

前の方にいた女性が隣の人に何かを言った。

隣の人が頷いた。二人ともレントを見ていた。


レントはもう一度言った。

「本日、ソラと共に王都に向かいます。

勉強して、領地の発展のために尽くします。

ソラも協力してくれると言っています」


『シャーロット様を大切に。レンさん、私が光るイメージをしてください』

ソラがもう一度羽を広げた。

「僕の妹のシャーロットをよろしくと言っています」

ソラが光輝いて、しばらくして収まった。

人々がまたざわめいた。今度は温かいざわめきだった。


壇上を降りて屋敷に戻った。

家族が玄関に揃っていた。

エドワードが頷いた。「行ってこい」

「はい」

エレノアがレントの頭に手を置いた。

「気をつけてね。ここと違って好意的な人ばかりとは限らないから」

そう言ってハグをしてくれた。


シャーロットが前に出てきた。レントの袖を引いた。

「レント兄様」

「なに」

「休みには戻ってきてくださいね」

レントはシャーロットを見た。

シャーロットが真剣な顔をしていた。

「ソラのこと頼む、じゃないんだ」

「ソラちゃんは兄様のことを守ってくれるから。私がソラちゃんに会いたいの」


レントはソラを見た。

ソラが小さく羽を動かした。

「何かあればすぐに飛んできます」ソラが言った。

「ソラちゃん、さっきは恥ずかしかったわ。でも嬉しかった」


「行こうか」レントが言った。

シャーロットが手を離した。

馬車が動き出した。

屋敷が遠くなった。

人々の声がまだ聞こえていた。

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