それぞれの見方
翌朝、シャーロットを呼んだ。
「治癒魔法に興味があるか聞きたいんだけど」
シャーロットがレントを見た。
「どうして?」
「魔法を教えたいなと思って。シャーロットも治癒ができるようになるかもしれないし」
「ソラから提案があったんだ。来年僕が学園に行く間、何かあったときのためにと」
「はい」ソラが同意した。
シャーロットがソラを見た。ソラが羽を動かした。
「ソラちゃんが考えてくれたの?うん、やってみたい」
研究室にシャーロットを連れて行った。
ガイア、オルテガ、マッシュが机を囲んで話し込んでいた。
「皆さんにお願いがあります、シャーロットに治癒魔法を教えて欲しいです」
三人が顔を見合わせた。
「それは」ガイアが言った。「我々がですか」
「はい。よろしくお願いします」
「しかし我々もまだ研究の途中でして」
「シャーロットの指導をしながらお願いします。研究を伝える必要もありますし、まず信頼できる人間からと言うことで」
オルテガが何か言いかけた。マッシュも何か言いかけた。
ガイアが何かを決意したようだ。「わかりました」
シャーロットが不安そうに三人を見た。「よろしくお願いします」
三人の顔が変わった。
「こちらこそ」ガイアが言った。急に丁寧になった。
部屋を出ながらソラが日本語で言った。
『3人はしばらく大人しくなりますね』
『そうなるといいけど』
その日の夕方、エドワードとエレノアのいる部屋を訪ねた。
「相談があります」
二人が向き直った。
「治癒魔法の研究を進めたいのですが、試す相手が必要で」
「あまり噂になるのは良くないな」エドワードが言った。
「はい。どのような影響が出るか予測しづらいです。できるだけ秘密裏に進めたいと考えています」
エドワードが頷いた。
エレノアが口を開いた。「私が昔から携わっている孤児院があります」
「孤児院」
「いくつかありますが、最近は戦争がないのでずいぶん減りましたが」
エレノアが少し間を置いた。
「食事はそれなりに与えていますし、読み書きも教えています。ただ、あまり手厚くするわけにもいかず知られてもいません」
「なぜですか」
「以前、不満の声が上がりました」エレノアが言った。
「真面目に働いている領民より孤児院の子たちの方が恵まれているのではないかと。それからは、ある程度に抑えています」
レントは少し考えたが理由がよくわからなかった。
ソラの方を見た。
『不満のぶつけ先になりやすいのでしょう。ただ、ここは経済も安定しているので少数意見ではないかと思いますが』
「定期的に三人を派遣して、治癒の練習をさせたいのですが。怪我や病気があれば治す。孤児院の子たちには医者と言っておけば」
エレノアがエドワードを見た。エドワードが少し考えた。
「やってみろ」エドワードが言った。「ただし」
「はい」
「やりすぎるな。目立たぬようにやれ」
「わかりました」
エレノアが頷いた。「昔なじみの院長に話をしておきます。信頼できる方です」
「ありがとうございます」
「レント」エレノアが言った。「孤児院の子たちに、あまり期待させないようにしてください」
「どういうことですか」
「自分たちが特別だと感じさせると、後が難しくなります」エレノアが言った。
「当たり前のこととして扱ってください」
レントは頷いた。「わかりました」
部屋を出てから、ソラに言った。
『エレノア様は孤児院の子たちが特別扱いされることで、
領民との摩擦が生まれる可能性を考えているのでしょう』
ソラが言った。
『そうかな。子供たちの将来を考えたんじゃない?』
『それもあるでしょう。エレノア様は領主側から、レンさんは孤児たちの側からの見方です』
『うまくいっても考えないといけないことが多そうだね』
『どこでも同じ問題があります』
『前の世界でもそうだった?』
『病院の治療が無料になるまではそうだったです』
レントは廊下を歩いた。
簡単ではない。でもできることはある。
やらないといけない。




