表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いい匂いと青い鳥と魔法の話  作者: かわいかつひと


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
18/56

レナードの帰郷

マッシュが手応えを掴んだのは、三人が来て五日目だった。

朝、研究室に入ってきたマッシュの顔が明らかに違った。

「できたかもしれません」

「やってみてください」

マッシュが目を閉じた。

魔力を使い切ってから、それから少し間を置いた。

手に光が灯った。

小さかった。でも体内の魔力が枯渇した後だ。

「できました」マッシュが言った。

声が震えていた。

ガイアとオルテガが前に出てきた。

「どんな感覚か教えてくれ」ガイアが聞いた。

「枯渇した後に、じわじわと戻ってくる感じです」マッシュが言った。

「自然にではなく、引っ張るような感覚で」

「引っ張る」

「はい。意識して強制的に戻す感じです」

ガイアが目を閉じた。オルテガが目を閉じた。

しばらく静かだった。

ガイアの手に、ごく小さな光が灯った。すぐ消えた。「今、何かありました」

「続けてください」レントはそう言った。

オルテガはまだだった。でも表情が変わっていた。

『レンさん』ソラが日本語で言った。

『三人とも時間の問題だと思います』

『そうだね』


レントは自分の手を見た。

『ソラ』

『はい』

『僕にはやっぱりわからない』

『転生したということも関係あるのかもしれません。

どちらにせよ空間の魔力を使えなければ大規模な魔法は使えないでしょう』

『そっか』

体内魔力の回復ができるようになっても、元の総量が少ない分、大規模な魔法は難しい。

でも治癒やバフなら長い時間使えるようになるかもしれない。

それはそれで意味がある、レントはそう考えた。



レナードが帰ってきたのは、それから数日後だった。

馬車から降りてきたレナードがレントを見た。

「でかくなったな」

「そうですか」

「背が伸びた」レナードが言った。「顔つきも変わったな」

「兄さんも」

「俺は変わってない」レナードが言った。

「さっさと荷物を置いてくる」

五分後に戻ってきた。

「訓練するぞ」

「今日は休んだ方が良くないですか」

「やるぞ、レント」


庭に出た。

レナードが木剣を手に取った。レントも手に取った。

「バフを使ってみろ」レナードが言った。

「俺にも」

「はい」

光が二人に当たった。

レナードが手を開いたり閉じたりした。

「お前のは何か違うな」

「そうですか。他の人のを受けたことはないので」

「なるほど」レナードが木剣を構えた。

「来い」

レントが踏み込んだ。

速い。

自分の動きが速くなった。

バフが効いている、この速さにも慣れてきた。


レナードに届いた。

捌かれた。

そのまま反撃が来た。

見えた。でも間に合わなかった。

木剣が脇腹に当たった。

「一本」レナードが言った。

また構えた。


今度はレントが待った。レナードの動きを見た。

踏み込みのタイミングを計った。

レナードが来た。

体を横にずらした。カウンターを狙った。

レナードがそれを読んでいた。

カウンターをさらに捌いて、レントの背中に木剣を当てた。

「二本」


レントは息を整えた。

バフが効いていても追いつかない。

見えている、でも対応できない、経験の差なのか実力なのか。

王都でハワードに苦労したのとは次元が違った。


僕は強くなった。それでもまだ、遠い。

また打ち合った。

レントが押す場面もあった。レナードが少し後退した。

でも崩れなかった。

立て直してから反撃してきた、反撃が重い。

しばらくして二人とも木剣を下ろした。

「やるじゃないか」レナードが言った。

息が少し乱れていた。

「全然でした」

「そんなことはない」レナードが言った。

「今では俺に押し返してくるやつもそうはいない。誇っていいぞ」

「バフありですけど」

「それは俺も同じだ」

レナードが木剣を壁に戻した。

「今日から毎日やるぞ」

「毎日ですか」

「俺がいる間はな。いい訓練になる、相手がいて嬉しいぞ」

レントも嬉しかった。


庭の端では、シャーロットとソラが遊んでいた。

シャーロットが手を伸ばした。

ソラが逃げた。シャーロットが追いかけた。

「ソラ、捕まえた」シャーロットが言った。

手がすり抜けた。

「捕まりたいです」ソラが言った。

「残念ね」シャーロットが手を下ろした。

「ソラ、学園って楽しいところかしら」

「わかりませんが、先に行って待っています」

「そうね。先に行っちゃうのよね」シャーロットが空を見た。

「寂しくなるわ」

「私もです」

シャーロットが顔を赤くした。「ソラもそういうこと言うのね」

「そう思ってます」

「嬉しいわ」シャーロットが笑った。

「レント兄さん羨ましい」

ソラが少し間を置いた。

「レントさんとシャーロットさんがいるここが好きです」

「同じ気持ちね」

「はい」ソラが言った。「嬉しく思います」

シャーロットがソラを見た。

「私に加護をくれれば良かったのに。そう思ってしまうわ」



夕食の席に全員が揃った。

エドワード、エレノア、レナード、レント、シャーロット。

久しぶりの全員での食事だった。

食事が進んでから、レントがレナードに聞いた。

「学園はどうですか」

「何を聞きたい」レナードが言った。

「友人はできましたか」

「ああ、それなりにな。向上心がある人間と過ごすのは悪くない」

「どんな人たちですか」

「剣をやる連中だ」レナードが少し考えた。

「アレクの派閥に入った」

「アレクサンダー王子ですか」

「そうだ。なんとなく入った方が楽だからな。王都にいる連中はそういうものだ」

エドワードが黙って聞いていた。


「お前は気にせず好きにすればいい」レナードがレントを見た。

「王子の派閥に入らなくてもな。俺がそこにいるから」

「兄さんが守ってくれると」

「そういうことだ」レナードが料理を口に入れた。

「まあ、お前は派閥とか関係なく注目されるだろうがな」

エレノアが口を開いた。

「アメリア王女の派閥もできるのじゃないかしら。あなたを担ぎあげる動きもありそうね」

「さもあろう」エドワードが言った。

「どちらにせよ、好きにするがいい。レナードを引き抜いてもいいぞ」

エドワードが楽しそうに笑った。

レナードはどうでも良さそうだった。

「アメリア王女も来年から学園ですね」レントが言った。

「お前と同い年だからな」レナードが言った。

「一度は会わないと」

「兄さんは興味があるんですか」

「お前の婚約者候補だろうが」レナードが言った。

「挨拶ぐらいはするだろう」


エレノアがお茶を一口飲んだ。

「レナードはどうなの」

「母上。いずれ紹介します」

「あら、剣術だけじゃないのね」

「当然です。私には責任があります」

レナード兄さんが笑っていた、珍しいことだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ