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いい匂いと青い鳥と魔法の話  作者: かわいかつひと


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13/55

アメリアとクララ

廊下の前で侍女が止まった。

「少々お待ちください」

扉の前で声をかけた。

中から返事があった。扉が少し開いて、侍女が何かを確認した。

その間にレントはソラに言った。

『先に入っていてもらえる』

『はい』

ソラが扉をすり抜けた。

侍女が振り返った。「どうぞ」

扉が開いた。


部屋は明るかった。

大きな窓から光が入っていた。

丸いテーブルに椅子が並んでいた。お茶の用意がされていた。

第一王女と第二王女が座っていた。

ソラがテーブルの端に止まっていた。

二人がソラを見ていた。

レントが入ると、二人の視線がレントに移った。

「遅くなり申し訳ありませんでした」レントが頭を下げた。

「魔導士の方々と話し込んでしまいました」

「構いません」第一王女が言った。

声が落ち着いていた。「ですが次はこのようなことがないようにしてください」

「そうそう」第二王女が言った。「退屈していたし」

第一王女が第二王女を見た。

第二王女が口を閉じた。

「どうぞ座ってください」第一王女が言った。

レントが椅子に座った。

ソラがレントの肩に移った。


「改めて自己紹介を」第一王女が言った。「アメリアです」

「クララです」第二王女が言った。「よろしく」

「レントです。カルヴィン辺境伯の次男です。よろしくお願いします」


お茶が注がれた。

「魔導士と何を話していたのですか」アメリアが聞いた。

「魔法を試していました。知らない魔法を教えていただいて」

「たとえば」

「引力を操ったり、遠くを見たり」

「引力?」クララが言った。「聞いたことない」

「私も今日初めてやりました」

「見せて!見せて」クララが身を乗り出した。

「クララ」アメリアが言った。

クララが戻った。

アメリアがレントを見た。

「学園の入学は来年でしたね。寄宿舎に入るのですか?」

「そうなると思います。王都に屋敷はないですし、兄もそうしていますので」

「レナード様ですね」アメリアが言った。

「私も来年入学です。レナード様のことは聞いております。

学園の中では剣術で敵うものはいないと聞いています」

「そうなんですか。それは知らなかったです」

「興味がなさそうですね。男子であればもっと気にされても良いと思いますが」

断定だった。確認ではなかった。

レントは少し考えてから「学園はどんなところですか」

アメリアが少し目を細めた。

「すみません」おもわず謝罪の言葉が出てしまった。

「構いません」アメリアが言った。

「王族、貴族の子弟が通います。一部優秀な平民たちも。

剣術、魔法、政治、外交、様々なことを学びます。

今年はどうやら勇者候補も入学するようです」

「そうなんですか。勇者候補も学園に」

「はい。女性です。かなり優秀だと聞いています」

「クララ様は」レントが聞いた。

「私は来年」クララが言った。「レントの後輩ね」

アメリアがクララを見た。

「レント様の後輩になりますわ」クララが正面を向いた。


お茶が一杯目から二杯目になったころ、クララが言った。

「ねえ、聞いていい」

「クララ」

「いいじゃない」クララがアメリアを見た。

それからレントを見た。「父上から、あなたと婚約しなさいと言われたの」

レントは黙っていた。

「アメリア姉様でも私でもいいって。あなたはどちらがいいの」

部屋が静かになった。

侍女たちが壁際で固まっていた。アメリアが目を閉じた。

レントはソラを見た。

ソラが小さく羽を動かした。

日本語で言った。『ここは慎重に』

レントはアメリアを見た。次にクララを見た。

二人とも見ていた。

アメリアは表情を変えず、クララは少し前のめりだった。

「お二人のことをまだほとんど知りません」レントが言った。

「今日初めてお話ししたので」

「そうね」クララが言った。「じゃあ、こちらから決めていいかしら」

「クララ」アメリアが言った。今度は少し柔らかい声だった。

クララが口を閉じた。

アメリアがレントを見た。

「急かすつもりはありません。

ただ、父の意向はお伝えしておかなければと思いました」

「はい」レントが言った。「わかりました」

「学園で会えるでしょう。その中で判断してください」

レントが頷いた。

クララがまた身を乗り出した。

「ねえ、さっきの言っていた引力の魔法、少しだけ見せてくれない?」

「クララ」

「少しぐらいいいじゃない。姉様も見たいでしょ」

アメリアが息を吐いた。

レントを見た。目が「どうぞ」と言っていた。

レントはテーブルの上のカップを見た。

なるべくカップだけを引き寄せるイメージで。

クララが声を上げた。アメリアが目を細めた。

侍女たちがまた壁際で固まった。

カップがレントの手元に引き寄せられるように動いた。

「もう一回」クララが言った。

「クララ」

「もう一回だけ」

『レンさん、あまり聞いてばかりだと止められなくなります』

「精霊様はなんとおっしゃたのですか」アメリアが尋ねる。

「力は家族になったものに見せなさいと」

「そっか、ならしょうがないか」クララは納得したみたいだ。

「じゃあ、次の質問」クララは止まらなかった。

「何かいい匂いがするのは精霊様が付いてるからなの?」

アメリアは今度は止めなかった。

「いえ、これは生まれつきです」

「そうなのですか」とアメリア。

「ほんとすごくいい匂いよね」とクララ。

「ちょっといいかしら」そう言ってクララがレントの周りをぐるぐる周った。

「あまり良いとは言えませんが...」

レントがそう言いながらアメリアの方を見ると羨ましそうに見えた。

鼻が動いていたから。

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