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いい匂いと青い鳥と魔法の話  作者: かわいかつひと


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魔導士たちの要求

朝食を済ませ魔導士たち元へ向かった。

三人が並んで出迎えてくれた。昨日の訓練場より緊張しているように見えた。

「今日はお時間をいただきありがとうございます。わざわざお越しいただいて恐縮です」

一番年長らしい男が言った。「私はガイア。こちらはオルテガとマッシュ」

「レントです。この後お茶会に呼ばれてますので、気になさらず」

ソラが大きく羽を広げた。

三人がソラを見た。

『何か困ったことあれば精霊のせいにしてください』

「なんとおっしゃられているのですか?」オルテガが聞いてきた。

「仲良くしてねと言っていますよ」

「なんと。ありがたいお言葉です」マッシュが答える。


「早速ですが」とガイアが言った。

「昨日、魔法が使えなくなることはないとおっしゃっていましたが、本当ですか」

「はい」

「魔力が枯渇しないのですか」

「空間にある魔力を使っています。体内の魔力ではなく」

三人が顔を見合わせた。オルテガが口を開いた。「空間に魔力があるのですか!?」

「はい、循環しています。ソラが教えてくれました」

三人がまたソラを見た。

ガイアが息を吐いた。長い息だった。

「我々の概念が根底から覆るかもしれませんな」

「知らなかったんですか」

「その昔に理論はあったらしいのですが、

証明できないので間違っているとして見向きもされませんでした」

レントは少し考えた。「他にもありますか?証明されなかった理論」

三人の顔が変わった。

「あります」ガイアが言った。「たくさん」


そこから話が止まらなくなった。

オルテガが重力の話をした。

物を引きつける力、あるいは反発させる力。

理論としては存在するが、魔力が足りないからか、理論が違うからなのか確かめられないものだった。

『重力場を作るのかな』

『どうでしょう。いろいろとイメージしてみてください』

「やってみます」レントが言った。

机の上の水差しを見た。引きつけるイメージを作った。

机も水差しもレントの方に滑った。

『これは引力です。対象のみを引き寄せるのは難しいのではと思います』

オルテガが椅子から立ち上がった。

「動いた」と言いながらオルテガもこちらに引き寄せられてくる。


「もう少し強くします」

水差しが浮いた。三人もよってきた。

「やめます」レントが言って、動きが止まった。

「これは、すごい」

「魔力が足らないだけだったのか」


マッシュが「透視はどうでしょうか」と言った。

「壁の向こうを見る力です。これも文献にはありますが」

「試してみます」

扉の向こうをイメージした。光が透過するイメージ、壁を通り抜けて向こう側を見る感覚。

「廊下に誰かいますか」

「います。男性の衛兵が一人」

ガイアが確認してから戻ってきた。

椅子に座った。それからまた立った。また座った。(せわ)しない。

「大丈夫ですか」レントが聞いた。

「興奮しています」ガイアが言った。


千里眼の話になった。

「遠くを見る力です」マッシュが言った。

「伝書鳩より早く情報を得られる。戦争では決定的な力になります。

ただ距離が遠くなるほど魔力を消費するので」

「イメージは」

「見たい所をイメージするだけです。目と目的地を繋げる」

レントは目を閉じた。カルヴィン領をイメージした。辺境の屋敷、庭。見える。

『レンさん、これは戦争の形を変えてしまいます。慎重に』

「遠くまではできないようです」

「そうですか」マッシュが残念そうにそう言った。

「はい。城の庭園ぐらいまでです」

三人が何も言わなかった。

『レンさん、3人とも、おそらくその距離も無理なんでしょう』

『そうか』


能力強化(バフ)の話になったのは昼を過ぎたころだった。

「兵士の身体能力を一時的に上げる魔法です」ガイアが言った。

「我々が実際に現場で使うものです。ただ一人につき魔力をかなり消費する。

3回ほど能力強化(バフ)を使えば限界がきます」

「見せてもらえますか」

ガイアが手を伸ばした。レントの腕に触れた。

何かが流れ込む感覚があった。体が少し軽くなった。

「これです」ガイアが言った。「かなり魔力を消費しました」

「なんとなく、わかりました」レントはイメージを作った。

同じ感覚を再現しようとした。

ガイア、オルテガ、マッシュ3人の腕に光が当たった。

ガイアが自分の腕を見た「体が軽い」

オルテガが「力が溢れてくる」

マッシュが「かなり身体能力が上がったようだ、試してみたい」

「合っていますか」

「はい」ガイアが立ち上がった。

「我々のものとは全然違う。こんな感覚は」

「人数の制限は」オルテガが聞いた。

「たぶんありません」

三人が黙った。

「軍全体に、ということも」

「試したことはないですが、できる気はします」

ガイアが座った。「我々は何をしていたんだろうと思います」

「今日教えてもらったことは全部使えます」レントが言った。

ガイアが顔を上げた。

「知識を持っている人間が必要でした」レントが続けた。

「僕だけでは限界があります。一緒に研究しませんか」

三人が顔を見合わせた。

「喜んで」ガイアが言った。

「我が領に来てください。3人とも歓迎します」


扉が開いたのは、そこからさらに話が続いていたころだった。

勢いよく開いた。

女性が三人飛び込んできた。

息を切らしていた。

王女付きの侍女らしかった。服の刺繍からそう見えた。

「レント様はこちらでしょうか」一人が言った。

「はい」

「お茶会の時間が」侍女が言った、それから止まった。

三人が止まった。

室内の空気を吸った。

「はぁ」一人が言った。

「いい香り」別の一人が言った。

「癒されるわ」三人目が言った。

しばらく三人がそのままでいた。


魔導士たちが侍女たちを見た。

侍女たちが我に返った。

「た、大変失礼いたしました」一人が言った。

「お茶会の時間がとっくに過ぎております。王女様方がお待ちです」

「申し訳ありません、失念しておりました」

「忘れて」侍女が言った。「おりましたか」

「はい」

侍女たちが顔を見合わせた。

「急ぎましょう」一人が言った。

声が少し震えていた。

怒っているのか別の理由かわからなかった。


レントは魔導士たちを見た。「続きはまたカルヴィン領で」

「承知しました」ガイアが言った。

レントが部屋を出ると、侍女たちが前後を固めた。

急ぎ足で廊下を進んだ。

廊下を歩きながら、一番後ろの侍女がもう一度言った。

「はぁ、癒されるわ」

小さい声だ。本人は聞こえていないと思っているらしい。

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