第90話:扉が開く瞬間
ついに開かれた、運命の扉。
リュカの腕に導かれ、アイリスは自分を捨てた世界の中心へと、圧倒的な輝きを纏って帰還します。
大階段を上り詰めた先、そこには王都の権威を象徴する、金箔を施した巨大な双開きの扉が立ちはだかっていた。
魔法という奇跡が存在しないこの世界において、この扉の向こう側に足を踏み入れられる者は、血統と実力、そして今夜のアイリスが持つような「圧倒的な美学」を認められた者だけだ。
「……アイリス、準備はいいか」
リュカ様が低く、熱い声を耳元で響かせた。
彼は包帯の巻かれた左手で私の腰を引き寄せ、逃れられぬように強く、独占欲を滲ませて抱きしめた。漆黒の軍礼装に刻まれた猛禽の刺繍が、私の肩に触れ、そこから彼の強靭な意志が伝わってくる。
「はい。……貴方の隣なら、地獄へでも赴けますわ」
私が微笑むと、リュカ様は満足げに目を細め、扉を警護する近衛兵たちを鋭いアイスブルーの瞳で射抜いた。
「開けろ。……北方の真実を、その曇った眼に焼き付けてやるがいい」
重厚な金属音が響き、ゆっくりと扉が開かれていく。
広がるのは、数千の燭台に照らされた、王都ルミエールの核心。そこには国王陛下を筆頭に、顔を青ざめさせたエドワード様、そして狂気と屈辱に震えるセレーナが、私たちを待ち構えていた。
扉が開いた瞬間、私のドレスに仕込まれた水晶片が、王宮中の光を吸い込み、爆発的な輝きを放った。
「……っ! なんだ、あの光は!」
「アメジスト……。あの日、雨の中で捨てられたはずの、あのドレスなのか!?」
会場に満ちる驚愕と畏怖。
魔法など必要ない。一針一針に込めた誇りと、リュカ様への愛が、物理的な光となって虚飾の王宮を焼き尽くしていく。
私はリュカ様の手を強く握りしめ、一歩、また一歩と、自分を裏切った者たちの中心へと歩みを進めた。
かつての私は、この扉が開くたびに、誰かの評価に怯えていた。
けれど今、扉の向こうに広がるのは、私を傷つけた者たちが跪くための、残酷で美しい「反撃の園」。
「行こう、アイリス。……世界を、塗り替える時だ」
リュカ様の言葉と共に、私たちは王都の歴史が塗り変わる瞬間の、その中心へと踏み出した。
第90話をお読みいただきありがとうございます。
扉が開いた瞬間の「アメジストの閃光」……アイリスの技術が、ついに王宮を沈黙させました。
リュカ様の独占欲とアイリスの誇りが一つになり、最高の逆転劇が始まります。
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