第80話:嵐を呼ぶ招待状
王家が屈し、正式に届いた「辺境伯の伴侶」としての招待状。
アイリスの名誉回復への道が、リュカの圧倒的な力によってこじ開けられます。
別邸の静寂を切り裂くように、今度は本物の王宮の先導役が、仰々しい足取りで姿を現した。
彼の手にあるのは、先日の脅迫紛いの書状とは一線を画す、王家直系の金装飾が施された正式な招待状。
「……辺境伯リュカ・ヴォルテール殿。および、ご同伴のアイリス・ランチェスター嬢。今夜の王宮大夜会、国王陛下の名において、最上位の貴賓としてお招きいたします」
儀典官の声は、屈辱に震えていた。
魔法の力など借りずとも、リュカ様が示した「北方との国交断絶」という脅し……いや、正当な通告が、王宮の腐った重鎮たちを震え上がらせたのだ。
「……ふん。ようやく筋の通った言葉を覚えたようだな」
リュカ様は、ひれ伏す儀典官から招待状を奪い取ると、それを私の目の前で広げて見せた。
そこには、かつて「不貞の女」として名を消されたはずの私の名前が、リュカ様の名の隣に、堂々と、誰にも消せないインクで記されていた。
「アイリス。これで舞台は整った。……お前を『不貞の女』として追い出したあいつらが、今度はお前を『辺境伯の伴侶候補』として、跪いて迎え入れることになる」
「伴侶、候補……」
その言葉の重みに、私の鼓動が激しく波打つ。
単なる専属針子としてではなく、彼の隣を歩む「対等な存在」として王宮へ乗り込む。それは、セレーナが最も恐れ、エドワード様が最も後悔する、残酷なまでの逆転の象徴。
リュカ様は私の腰を引き寄せ、逃れられぬように強く、独占欲を滲ませて抱きしめた。
包帯の巻かれた左手の感触が、私の背中に「これは現実だ」と刻みつける。
「嵐が来るぞ、アイリス。王都中の貴族たちが、お前のそのアメジストの輝きに、己の醜さを突きつけられる夜がな」
魔法なき世界の権威が、一人の男の愛と、一人の女の気高さに屈した瞬間。
私はその招待状を胸に抱き、嵐の中心へと飛び込む覚悟を完全に固めた。
第80話をお読みいただきありがとうございます。
王宮側が折れ、正式な招待状を届けに来るシーン……スカッとしますね。
「伴侶候補」という肩書きの重みに、二人の愛の深さを改めて感じます。
「リュカ様、有能すぎて惚れ直す!」「王宮側の悔しそうな顔が目に浮かぶ」と思ってくださった方は、
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次話、決戦を前にドレスに魂を吹き込む、第81話「最後の一針」へ。




