第58話:密室の糾弾
閉じ込められた密室で、エドワードの歪んだ愛が爆発します。
しかし、その執着を物理的に粉砕したのは、北方の主の圧倒的な殺意でした。
祝宴の喧騒が遠のき、冷たい石造りの回廊に私のヒールの音だけが虚しく響く。
リュカ様が主催者との挨拶に席を外したわずかな隙。背後から伸びてきた無作法な手に、私は小部屋へと強引に引き込まれた。
「……何をするのですか、エドワード殿下」
鍵をかけられた密室。エドワード様は、かつての優雅な面影を失い、血走った瞳で私を凝視していた。
「アイリス……。あの辺境伯は君を洗脳しているのだ! あんな無骨な男に、君のアメジストの瞳は相応しくない。君をこのまま逃がしはしない。不貞の証拠ならいくらでも捏造できる……私の側室として、一生この王宮に閉じ込めてやる!」
魔法のないこの国で、王族の執着は逃れようのない呪縛だ。彼は私の手首を掴み、狂気すら感じさせる力で引き寄せた。
「君を捨てたのは間違いだった……だが、君を他人に渡すくらいなら、ここで壊してでも手に入れる!」
その時。
扉が、爆発したかのような轟音と共に粉砕された。
「……誰を壊すと?」
砂塵の中から現れたのは、抜身の長剣を提げた、夜の化身のようなリュカ様だった。彼のアイスブルーの瞳は、もはや怒りを超えて、無機質な殺意の深淵と化している。
「リュ、リュカ……! 貴様、王宮で剣を振るうつもりか!」
「お前が俺の宝にその汚れた手を触れた瞬間に、この場所は処刑場に変わったのだ」
リュカ様は一瞬で距離を詰め、王子の喉元に剣先を突きつけた。魔法なき世界の理を無視したかのような速さと、圧倒的な武の重圧。エドワード様は腰を抜かし、私の手首を離して無様に床へ這いつくばった。
「アイリス……こちらへ来い」
リュカ様は私を背後に隠すと、王子の喉を剣先でわずかになぞる。
「次はない。……この女の肌に、お前の視線が触れることさえ、俺は許さない。その指がまた彼女を求めたなら、お前が愛する王位と共に、その手首を切り落としてやる」
リュカ様は震える王子を一瞥もせず、私を抱きかかえるようにして部屋を後にした。
独占欲。そして守護。
私の世界を支配する熱い鼓動が、今はリュカ様の掌から、私の手首に刻まれていた。
第58話をお読みいただきありがとうございます。
エドワード王子の側室発言に、リュカ様の逆鱗が完全に触れました。
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次話、危機を乗り越えた二人が、愛の真実を語り合います。第59話「私の心はここに」へ。




