表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無色の令嬢と氷の辺境伯 〜魔法のない世界で、貴方の瞳に映る私だけが本物でした〜  作者: 寝不足魔王


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

50/57

第50話:暗闇の吐息

王都の不安に震える夜。

リュカの独占欲が、アイリスの恐怖を甘い束縛へと変えていきます。


 王都の夜は、離宮のそれとは違い、不気味なほどに騒がしい。

 遠くで鳴り響く警邏の足音や、どこかの夜会から流れてくるかすかな音楽。それらすべてが、今の私には、この「檻」を壊そうとする刺客の足音のように聞こえていた。


 寝室の灯を消し、私は一人、厚いカーテンの影で身を縮める。

 エドワード様が見せた未練、セレーナの底知れぬ悪意。それらが暗闇から手を伸ばし、私の足を掴もうとしているような錯覚。


 その時、背後の扉が無音で開き、漆黒の気配が部屋に流れ込んできた。


「……アイリス。眠れないのか」


 リュカ様の声だ。

 彼は上着を脱ぎ捨て、白いシャツの襟元を緩めた姿で、私の背中を包み込むように抱き寄せた。魔法のないこの地で、彼という圧倒的な質量が寄り添ってくれることだけが、私の狂いそうな神経を繋ぎ止めてくれる。


「リュカ様……。王都の空気が、私の肌を刺すようですわ。……私は、本当にここにいて良いのでしょうか」


「案ずるな。お前の居場所は、俺がこの手で囲ったこの場所だけだ」


 リュカ様は私の腰を引き寄せ、逃れられぬように寝台へと導いた。

 暗闇の中で重なる、二人の熱い吐息。

 彼は私の髪を乱暴に、けれど慈しむようにかき分け、その首筋に顔を埋めた。


「エドワードが……あいつが、まだお前を捜している。セレーナという毒婦が、お前の名前を汚し続けている。……それが、俺の理性を焼き尽くそうとしているんだ」


 リュカ様の言葉には、制御しきれないほどの独占欲が滲んでいた。

 彼は私の手首を掴み、頭上へと押し込める。

 魔法が使えないからこそ、彼は自らの肉体をもって、私のすべてを支配しようとする。


「アイリス。誰にもお前を見せない。誰にもお前の声を聴かせない。……この暗闇の中で、俺の吐息だけを吸っていろ」


 至近距離で注がれる、彼の熱情。

 私は彼の手を握り返し、その逞しい胸板に顔を埋めた。

 

 窓の外の喧騒など、もうどうでもよかった。

 この閉ざされた暗闇の中で、リュカ様の重い愛に縛られていること。それが、今の私にとって唯一の、そして最高の救いだった。


 私たちは夜が明けるまで、一言も交わさず、ただ互いの存在を刻みつけるように、熱い吐息を重ね続けていた。


第50話をお読みいただきありがとうございます。

暗闇の中での濃厚な独占欲……リュカ様の「俺の吐息だけを吸っていろ」というセリフに、彼の執着が凝縮されています。

「リュカ様が重すぎて最高!」「二人の絆が深まる夜にドキドキする」と思ってくださった方は、

ぜひ【★★★★★】評価やブックマークをいただけると嬉しいです!

次話、二人の仲を裂こうとするセレーナの卑劣な策略――「届けられた古い手紙」へと物語は動きます。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ