第33話:深まる闇、深まる愛
離宮を襲う、セレーナの放った刺客。
しかし、その脅威さえもリュカの独占欲を加速させるスパイスに過ぎませんでした。
風の唸りが地響きのように離宮を震わせ、窓ガラスがガタガタと悲鳴を上げている。
真夜中、私はリュカ様に手を引かれ、迷路のような回廊を抜け、彼の私室に隣接する「奥の間」へと導かれていた。
「……リュカ様、やはり何かが起きているのですか?」
私が問うと、リュカ様は一度だけ足を止め、私の肩を抱き寄せた。彼の腰にある長剣の鞘が、カチャリと冷たい音を立てる。魔法のないこの地において、剣の響きは死と直結する。
「案ずるなと言ったはずだ。……刺客が紛れ込んだ。だが、この離宮の構造を知り尽くした俺の部下たちが、今、闇の中で始末している」
彼は私を部屋の中へ押し入れると、重厚な扉の閂を閉ざした。
そこはリュカ様の寝室と繋がった、最も安全で、最も彼に近い場所。
「お前はここで、朝まで俺の気配を感じていろ。一歩も外へ出るな。……セレーナが放った鼠どもに、お前の一筋の髪さえも触れさせはしない」
リュカ様のアイスブルーの瞳は、これまでにないほど深く、暗い独占欲に沈んでいた。
彼は私の頬に手を添え、親指でその輪郭をなぞる。
「……怖いか?」
「いいえ。……貴方の側にいられるのなら、闇さえも温かく感じられますわ」
私が微笑むと、リュカ様は堪えきれないといった様子で私を抱きしめた。
鎧のように硬い胸板と、その奥で激しく刻まれる鼓動。
外では誰かが倒れる音や、静かな争いの気配がしているはずなのに、この腕の中だけは、世界で最も甘美な避難所だった。
「アイリス……。お前が俺の弱点だと奴らは思っているようだが、逆だ。お前がいるから、俺は誰にも負けない。お前を失うくらいなら、俺はこの北方の雪ですべてを凍らせてやる」
魔法を持たぬ男の、呪いにも似た情熱的な誓い。
彼は私の項に顔を埋め、深く、深く、その香りを確かめるように吸い込んだ。
深まる闇の中で、二人の愛は外敵の殺意を糧にして、より一層、逃れようのないほど強固に結ばれていった。
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自分の寝室の隣でアイリスを保護するリュカ様……「お前が俺の弱点ではない」という言葉の力強さにしびれます。
「リュカ様、守護神すぎる!」「二人の密着度が増していく……」と思ってくださった方は、
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次話、眠れない夜、手を取り合う二人の間に「永遠の誓い」が交わされます。




