表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無色の令嬢と氷の辺境伯 〜魔法のない世界で、貴方の瞳に映る私だけが本物でした〜  作者: 寝不足魔王


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/61

第17話:揺れ動く恋心

守られた喜びが、切ないほどの「恋」に変わる瞬間。

リュカの不器用な指先が、アイリスの心の奥深くを揺さぶります。


 カトリーヌ様が去った後も、リュカ様に握られた手の熱が、いつまでも引かずに残っていた。

 一人で部屋に戻り、窓の外を眺める。雪を照らす月光がアメジストのように淡く輝いているが、私の胸の中は、もっと別の、熱くどろりとした感情で満たされていた。


(これは、感謝なの……? それとも……)


 エドワード様を愛していた頃の私は、常に彼に「選ばれる」ための努力をしていた。彼の好みに合わせ、彼の顔色を伺い、完璧な人形であろうとしていた。

 けれど、リュカ様は違う。

 ボロボロの私を見つけ、泥に汚れたドレスを「美しい」と言い、名前も身分も失った私を「俺の貴客」だと断言してくれた。


 不意に、針仕事をする自分の指先を見つめる。

 かつては義務だった刺繍が、今は彼に喜んでほしい、彼に相応しい一着を仕上げたいという、ひたむきな熱情に変わっている。


「……アイリス様、旦那様がお呼びです。夜風に当たりたいとのことで、バルコニーへ」


 マーサの声に、私は弾かれたように立ち上がった。鏡も見ずに髪を整え、急いで廊下を駆ける。

 バルコニーに出ると、そこには漆黒の闇に溶けそうなほど静かに立つリュカ様がいた。


「……あ、リュカ様」

「来たか。寒くはないか」


 彼は振り返らずに言った。その背中は広く、あの日雨の中で私を抱き上げた時の逞しさを思い出させる。

 私が彼の隣に並ぶと、リュカ様は不意に視線をこちらへ落とした。


「……カトリーヌの言ったことは気にするな。お前を卑しめる言葉は、すべて空虚な風と同じだ」

「はい。……リュカ様が、あのように言ってくださったから。私、もう大丈夫ですわ」


 私が微笑むと、リュカ様は何かを堪えるように僅かに眉を寄せ、私の頬にそっと手を添えた。

 冬の夜気で冷えているはずの彼の指が、驚くほど熱く感じられる。


「……お前は、自分がどれほど危うい顔をしているか分かっていないな」

「え……?」


 至近距離で見つめ合う。

 リュカ様のアイスブルーの瞳に、月明かりを反射して揺れる「私」が映っている。

 魔法が使えないこの地で、心の距離を測る術は、瞳の色と、指先の微かな震えだけだ。


 彼の手がゆっくりと、私の髪をなぞるように滑り落ちる。

 その刹那、心臓が痛いほどに脈打った。

 これは、かつて感じたことのない情動。誰かに依存するのではなく、その人そのものを渇望する、激しい恋の始まりだった。


「……夜は長い。冷える前に戻れ」


 リュカ様はそれだけ言うと、逃げるように手を離し、先に部屋へと戻っていった。

 残された私は、彼が触れた頬を両手で覆い、一人、冷たい空気の中で熱い吐息を漏らすことしかできなかった。


第17話をお読みいただきありがとうございます。

アイリスが自覚した「リュカ様への恋心」。

これまでの義務的な愛とは違う、魂が震えるような感情に、

「アイリス、応援してる!」「リュカ様の指がエロい……」と思ってくださった方は、

ぜひ【★★★★★】評価やブックマークをいただけると嬉しいです!

次話、平和な二人の時間を引き裂く、王都からの「不穏な影」が迫ります。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ