表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無色の令嬢と氷の辺境伯 〜魔法のない世界で、貴方の瞳に映る私だけが本物でした〜  作者: 寝不足魔王


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/57

第16話:守られた矜持

アイリスに振り上げられた悪意を、リュカが断固として退けます。

「俺の選んだ女」を侮辱することは許さない。辺境伯の独占欲が火を噴きます。


「……我が館で、誰に手を上げようとしている」


 リュカ様の低い声がサンルームに響いた瞬間、室内の温度が数度下がったかのような錯覚に陥った。

 カトリーヌは上げた手を宙に止めたまま、氷に触れたかのように硬直した。


「リュ、リュカ様! 違うのですわ。この無礼な下女が、私のドレスを侮辱いたしましたの!」

「下女だと?」


 リュカ様はカトリーヌを通り過ぎ、迷いのない足取りで私の隣に立った。そして、守るように私の肩を引き寄せると、カトリーヌを冷酷に射抜いた。


「言葉を慎め、カトリーヌ。彼女は我が館の貴客であり、俺がその腕を認めた唯一の専属針子だ。彼女を侮辱することは、彼女を選んだ俺の目を、ひいてはヴォルテール家の審美眼を泥で汚すことと同義だと思え」


「な……っ! 専属、ですって……?」


 カトリーヌの顔から血の気が引いていく。

 魔法のないこの国で、最高位の貴族が「専属」として遇することは、その人物を自身の庇護下に置き、全責任を負うという宣誓に等しい。


「お前が纏っているその絹の塊より、彼女が今、指に嵌めている銀の指貫ゆびぬきひとつの方が、俺には価値がある。……二度と我が領の土を踏むな。今すぐ立ち去れ」


「リュ、リュカ様……! そんな……っ!」


 カトリーヌは屈辱に震え、涙を浮かべて部屋を飛び出していった。

 嵐が去った後のような静寂の中、私はリュカ様の腕の中で、早鐘を打つ鼓動を必死に抑えていた。


「……申し訳ありません、リュカ様。私のような者のために、伯爵家との仲を……」

「気にするな。あのような、布地の重みすら解さぬ女との縁など、最初から必要ない」


 リュカ様は私の肩から手を離すと、今度は私の両手を包み込むように握った。

 針仕事をしていたせいで少し冷たくなっていた私の指先を、彼の熱い掌が溶かしていく。


「アイリス。お前がその針で守ろうとしているのは、俺の家の紋章だけではない。……お前自身の、折れない矜持だ。それを他人に踏みにじらせるな。お前を傷つける全てのものは、この俺が排除する」


 その言葉は、甘い囁きというよりも、絶対的な騎士の誓いのようだった。

 守られている。ただの道具としてではなく、一人の女性として、その魂ごと。


「……はい、旦那様。……ありがとうございます」


 私は彼の手をそっと握り返した。

 エドワード様の隣にいた頃には決して得られなかった、本当の安らぎ。

 私の誇りは、この極寒の地で、彼の手によって守られ、育まれていくのだと確信した。


第16話をお読みいただきありがとうございます。

「俺の専属だ」というリュカ様の宣言、最高にシビれます……!

アイリスの技術だけでなく、その「存在」そのものを認めてくれるヒーローの姿に、

「リュカ様、かっこよすぎ!」「カトリーヌ、ざまぁ!」と思ってくださった方は、

ぜひ【★★★★★】評価やブックマークで応援をよろしくお願いします!

次話、守られた喜びが、アイリスの胸で切ない「恋心」へと形を変えていきます。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ