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73/80

騎士団が姫様を殺す日

《暫定未来》


《レシティア・パープル》


《死亡》


《明日》


そして。


その下。


《死因》


《騎士団》


レシティアの。


笑みが。


消えた。


「……」


セラフィナ。


壁を見る。


リベル。


言葉を失う。


エリシア。


青ざめる。


そして。


地下から。


「姫様ぁぁぁぁぁ!!」


声。


近づく。


剣士騎士。


帰ってくる。


---


「姫様!」


黒い穴から。


最初。


手。


出る。


次。


剣士騎士。


這い上がる。


「ご無事ですか!」


「大丈夫」


「お怪我は!」


「ないわ」


「本当に!?」


「本当よ」


剣士騎士。


レシティア。


確認。


頭。


肩。


腕。


胸。


脚。


全部。


無事。


ようやく。


息。


吐く。


「よかった……」


その後ろ。


女性騎士。


魔法騎士。


諜報騎士。


ゼフィール。


続々。


戻る。


ガルド。


最後。


「ただいま」


レシティア。


「おかえり」


そして。


全員。


壁を見る。


《死因》


《騎士団》


沈黙。


---


剣士騎士。


「……」


女性騎士。


「……」


魔法騎士。


「……」


諜報騎士。


「……」


レシティア。


「とりあえず」


剣士騎士。


剣。


抜く。


「何してるの!?」


刃。


自分の首。


向ける。


レシティア。


即座。


剣。


叩き落とす。


ガキン!


「何してるのよ!」


「原因の排除を」


「あなたでしょう!?」


「はい」


「排除しないで!」


女性騎士。


剣。


置く。


「では私は拘束を」


「しなくていい!」


魔法騎士。


「魔力封印を」


「しなくていい!」


諜報騎士。


「両腕を」


「切らないで!」


「まだ何も言っておりません」


「絶対切るつもりだったでしょう!」


「可能性の一つです」


「却下!」


---


ゼフィール。


「お前ら」


「行動早すぎだろ」


ガルド。


「姫絡むと」


「判断力上がるのか下がるのか」


レシティア。


「下がってるわよ!」


剣士騎士。


「姫様」


「何?」


「我々が姫様を害する可能性が」


「僅かでもあるなら」


レシティア。


「ない」


即答。


剣士騎士。


「しかし」


「ない」


「予言が」


「予言じゃないわ」


全員。


止まる。


レシティア。


壁。


見る。


「暫定未来って」


「書いてあるでしょう?」


---


黒髪の女。


非常口の向こう。


「……そう」


レシティア。


「合ってる?」


「合ってる」


女。


壁。


睨む。


「これは予言じゃない」


「観測者が」


「未来の候補を」


「一つ」


「選んだだけ」


リベル。


「しかし」


「世界中の人間に」


「その未来を観測させれば」


黒髪。


「現実になる」


女性騎士。


「なら」


「その前に」


レシティア。


「だから自分を縛ろうとしない」


女性騎士。


黙る。


「いい?」


騎士団。


見る。


「誰も」


「自分を傷つけない」


「拘束しない」


「腕も切らない」


諜報騎士。


僅かに。


目を逸らす。


「特にあなた」


「……承知しました」


---


剣士騎士。


壁。


見る。


「ですが」


「我々が」


「何らかの方法で」


「操られる可能性は」


エリシア。


「ある」


全員。


彼女を見る。


エリシア。


「観測者は」


「操らない」


「もっと面倒」


「どういう意味です」


「あなたたちが」


「姫を殺す人間になるように」


「世界の方を」


「合わせる」


---


例えば。


剣を振る。


その先に。


偶然。


レシティアがいる。


防御魔法。


張る。


その魔法が。


偶然。


レシティアだけを。


弾く。


毒から。


守る薬。


飲ませる。


薬の成分が。


偶然。


彼女にだけ。


致死毒になる。


助けようとする。


その行動が。


死因になる。


エリシア。


「そうやって」


「全部」


「結果へ向かう」


レシティア。


「迷惑ね」


ガルド。


「その感想で済む?」


「じゃあ」


「最低?」


「軽いなあ」


---


剣士騎士。


レシティアから。


三歩。


離れる。


レシティア。


「何で離れるの」


「安全距離です」


「近くにいて」


「しかし」


「近く」


「……」


剣士騎士。


二歩。


戻る。


「もう一歩」


「姫様」


「いつもの距離」


仕方なく。


戻る。


レシティア。


少し。


安心。


剣士騎士。


それを見る。


何も。


言わない。


---


その時。


壁。


文字。


増える。


《暫定未来》


《補強開始》


《観測点》


《284,901》


《501,772》


《891,220》


数字。


凄まじい速度。


リベル。


「増加が加速しています!」


黒髪の女。


「噂が」


「噂を呼んでる」


「一人が知れば」


「二人に話す」


「二人が」


「四人」


「四人が」


「八人」


レシティア。


「止める方法は?」


「世界中の人間を」


「黙らせる」


「無理ね」


「うん」


「他には?」


黒髪の女。


黙る。


---


ガルド。


「逆の話を」


「流す?」


黒髪。


「駄目」


「なんで」


「対抗する未来を」


「観測させたら」


「観測そのものが増える」


「じゃあ」


「レシティアは明日死なないって」


「広めるのも?」


「危険」


リベル。


理解。


「レシティア様について」


「考えさせること自体が」


「観測点になる」


黒髪。


「そう」


「否定も」


「肯定も」


「どっちも」


「そいつの餌」


---


レシティア。


「じゃあ」


「放っておく?」


「それも」


「一〇〇%まで行けば終わる」


「面倒ね」


「だから言ってる」


黒髪の女。


頭。


抱える。


「観測者は」


「嫌いなんだよ」


「話が通じるようで」


「全然通じない」


レシティア。


「でも」


「さっきは」


「少し通じたわ」


女。


顔。


上げる。


「だから」


「気に入られたんだよ!」


「私のせい?」


「かなり!」


「ごめんなさい」


「素直!」


---


その時。


レシティアの影。


小さく。


動く。


「ねえ」


レシティア。


「何?」


影。


「未来」


「食べようか?」


全員。


見る。


「食べられるの?」


「境界」


「ある」


影。


壁。


指す。


「今」


「明日」


「境界」


「ある」


「それ」


「なくせば」


「明日」


「来ない」


沈黙。


レシティア。


「却下」


影。


「早い」


「明日が来ないのは困るわ」


「どうして?」


「明後日も来なくなるでしょう?」


影。


「……そう」


「それに」


レシティア。


影を見る。


「あなたに」


「何でも食べさせて解決するの」


「嫌」


影。


「私」


「食べるの得意」


「知ってる」


「いっぱい食べられる」


「知ってるわ」


「役に立つ」


レシティア。


少し。


考える。


「役に立たなくても」


「ここにいていいのよ」


影。


止まる。


「……」


エリシア。


横。


向く。


何か。


刺さったらしい。


---


《観測点》


《1,901,117》


リベル。


「二百万に達します!」


黒髪。


「早すぎる」


「何か」


「媒介がある」


諜報騎士。


「媒介?」


「新聞や夢だけじゃ」


「こんな速度にならない」


「何か一つ」


「世界中へ」


「同じ情報を」


「一気に伝えてる」


リベル。


「星泉?」


「違う」


エリシア。


「神代網?」


「もう壊れてる」


セラフィナ。


小さく。


「あの」


全員。


見る。


「何?」


「空」


---


神殿。


外。


全員。


出る。


空。


昼。


青。


雲。


普通。


だが。


太陽。


横。


何か。


ある。


文字。


巨大。


世界中。


どこからでも。


見えるほど。


《明日》


《紫の姫は》


そこまで。


書かれている。


レシティア。


「……空に書くのは」


「反則じゃない?」


黒髪の女。


「最悪」


---


王都。


農村。


砂漠。


海。


獣人国。


猫の国。


アステリア。


人々。


空。


見る。


文字。


読む。


「紫の姫?」


「誰だ?」


「第三王女じゃないか?」


「レシティア様?」


「何があるんだ?」


人。


人。


人。


空を。


見る。


《観測点》


《5,000,000》


《8,000,000》


《12,000,000》


確定率。


《0.0001%》


《0.01%》


《0.1%》


---


黒髪の女。


「目を逸らして!」


無理。


世界中へ。


届かない。


《世界確定率》


《1%》


その瞬間。


レシティア。


胸。


痛む。


未来。


一瞬。


見える。


星見の神殿。


明日。


騎士団。


全員。


いる。


レシティア。


中央。


剣。


胸。


刺さっている。


握っているのは。


剣士騎士。


---


現実。


レシティア。


剣士騎士を見る。


剣士騎士も。


同じものを。


見た。


顔。


真っ青。


一歩。


下がる。


「姫様」


レシティア。


手。


伸ばす。


「離れないで」


「ですが」


「離れないで」


剣士騎士。


止まる。


レシティア。


その手。


掴む。


「未来に」


「私たちの今までまで」


「決めさせないで」


剣士騎士。


手。


握り返す。


「……御意」


---


《世界確定率》


《2%》


未来。


より。


鮮明。


女性騎士。


泣いている。


魔法騎士。


倒れている。


諜報騎士。


片腕。


ない。


剣士騎士。


レシティアを。


刺している。


そして。


レシティア。


笑っている。


「……?」


レシティア。


違和感。


死ぬ。


未来。


なのに。


自分。


笑っている。


「待って」


黒髪。


「何?」


「私」


「笑ってた」


「……何?」


「刺されてるのに」


「笑ってた」


剣士騎士。


「姫様」


「私」


一拍。


「自分から」


「刺されてない?」


---


全員。


未来。


思い返す。


剣士騎士。


表情。


変わる。


「確かに」


レシティアの手。


剣士騎士の手。


重なっていた。


刺した。


ではない。


一緒に。


剣を。


握っていた。


リベル。


「では」


「騎士団が殺すという記述は」


黒髪の女。


「嘘じゃない」


「観測者は」


「嘘をつかない」


「ただ」


「意味を」


「限定してる」


ガルド。


「都合のいい部分だけ?」


「そう」


レシティア。


目。


細くなる。


「性格悪いわね」


---


《世界確定率》


《3%》


次。


未来。


音。


聞こえる。


明日の。


レシティア。


『お願い』


剣士騎士。


『できません』


『お願い』


『できません!』


レシティア。


『あなたしか』


『できないの』


剣士騎士。


泣いている。


『姫様……』


レシティア。


笑う。


『大丈夫』


そして。


自分から。


剣先へ。


近づく。


---


現実。


剣士騎士。


「……」


レシティア。


「私」


「何をするつもりなの?」


誰も。


分からない。


影。


突然。


「扉」


全員。


見る。


影。


「胸」


「剣」


「扉」


レシティア。


自分の胸。


見る。


第二の扉。


黒髪の女。


顔色。


変わる。


「まさか」


エリシア。


「何?」


黒髪。


「未来のレシティア」


「第二の扉を」


「壊そうとしてる」


---


《世界確定率》


《4%》


未来。


さらに。


続く。


剣。


胸。


貫通。


血。


しかし。


刃。


その先。


レシティアの背中から。


出ていない。


代わりに。


白い。


扉。


貫いている。


剣士騎士。


叫ぶ。


『姫様!』


レシティア。


『今!』


騎士団。


全員。


魔力。


解放。


第二の扉。


破壊。


そして。


扉の向こう。


何か。


巨大なもの。


断末魔。


---


現実。


黒髪の女。


「そういうことか」


レシティア。


「分かったの?」


「観測者は」


「レシティアの死を」


「作ったんじゃない」


一拍。


「未来のどこかで」


「本当に」


「あなたが死ぬ可能性を」


「見つけた」


「それを」


「明日に」


「固定しようとしてる」


リベル。


「なぜ?」


黒髪。


「観測しやすいから」


「死は」


「分かりやすい」


「生き続ける人間は」


「未来が枝分かれする」


「でも」


「死んだ人間は」


「そこから先」


「枝分かれしない」


エリシア。


「確定させやすい」


黒髪。


「そう」


---


レシティア。


「つまり」


「私を殺したいんじゃなくて」


「未来を」


「簡単にしたい?」


《肯定》


空。


文字。


出る。


全員。


空を見る。


《対象死亡》


《観測効率》


《99.999%向上》


レシティア。


「……」


ガルド。


「お」


「本人から回答」


レシティア。


「腹立つわね」


---


空。


《死亡を推奨》


レシティア。


「嫌」


《世界安定》


「嫌」


《未来確定》


「嫌」


《不確定性排除》


「嫌よ」


《理由》


レシティア。


空。


見ない。


でも。


声。


届くように。


「生きたいから」


空。


止まる。


《非合理》


レシティア。


「知ってる」


《世界安定より》


《個体生存を優先》


「そうよ」


《理由》


レシティア。


少し。


怒る。


「だから」


「生きたいの!」


---


文字。


止まる。


単純。


理屈。


ない。


使命。


ない。


選ばれたから。


でもない。


世界を救うため。


でもない。


ただ。


レシティア・パープルが。


生きたい。


それだけ。


《理解不能》


レシティア。


「でしょうね」


---


その時。


フィオナ。


遠い。


アステリア。


空。


見ていた。


「お姉様……」


巨大な文字。


《紫の姫は明日死ぬ》


周囲。


兵士。


騒ぐ。


研究者。


記録。


取る。


フィオナ。


立つ。


「全部」


「止めなさい」


「殿下?」


「記録を」


「取らないで」


「しかし」


「空を見ないで」


「全員」


「地下へ」


側近。


「何が」


フィオナ。


分からない。


でも。


胸騒ぎ。


「お姉様を」


「見世物にしないで」


---


猫の国。


女王。


同じ。


空。


見る。


「……姫」


そして。


すぐ。


命令。


「国民を」


「屋内へ」


「窓を閉じろ」


「空を見るな」


側近。


「理由は」


女王。


「知らん」


「だが」


空。


睨む。


「気に入らん」


---


獣人国。


ナミラ。


空。


文字。


読む。


「パル様?」


そして。


周囲。


見る。


人々。


空。


指差す。


「見るな!」


大声。


「なんで?」


「知らん!」


「じゃあ何で」


「嫌な感じするから!」


理由。


それだけ。


---


《観測点》


増加。


鈍る。


黒髪の女。


「……?」


リベル。


「どうしました?」


「止まり始めた」


《15,821,901》


《15,822,010》


《15,822,041》


遅い。


「なんで?」


レシティア。


「みんな」


「空を見るの」


「やめた?」


黒髪。


「そんな」


「世界中で同時に?」


---


観測者。


空。


文字。


《観測妨害》


《原因検索》


《対象個体との関係性》


《友好》


《信頼》


《好意》


《恩義》


《……》


レシティア。


少し。


目。


見開く。


世界。


旅した。


いろんな場所。


会った。


いろんな人。


助けた人。


助けられた人。


喧嘩した人。


食事した人。


名前も。


知らない人。


その人たちが。


理由も。


分からないまま。


ただ。


「なんとなく嫌だ」


それだけで。


空から。


目を逸らし始める。


---


《世界確定率》


《4.0001%》


止まる。


ガルド。


「……すげえ」


黒髪。


笑う。


「観測者」


「計算に」


「入れてなかった」


レシティア。


「何を?」


女。


レシティアを見る。


「人間が」


「合理的に」


「動かないこと」


---


空。


文字。


荒れる。


《観測不足》


《追加観測点生成》


黒髪。


「まだ来る!」


《媒体変更》


《夢》


《記憶》


《伝承》


《歴史》


リベル。


「歴史?」


黒髪。


顔。


変わる。


「まずい!」


世界。


揺れる。


---


レシティア。


突然。


頭。


痛む。


知らない。


記憶。


流れ込む。


幼い。


自分。


五歳。


王宮。


庭。


剣士騎士。


いる。


でも。


おかしい。


彼は。


今と。


同じ姿。


幼いレシティア。


笑う。


『ずっと一緒にいてね』


剣士騎士。


答える。


『死ぬまで』


記憶。


終わる。


レシティア。


膝。


つく。


「……何」


剣士騎士。


支える。


「姫様!」


「今の」


「あなた」


「五歳の私と」


「話した?」


剣士騎士。


「いいえ」


即答。


「私は」


「その頃」


「姫様と面識がありません」


レシティア。


「じゃあ」


黒髪の女。


「歴史を」


「書き換え始めた」


---


空。


《因果補強》


《騎士団》


《死因》


《関係性構築》


《過去修正》


レシティア。


顔。


上げる。


「……」


観測者は。


未来だけでは。


足りない。


騎士団が。


レシティアを。


殺す。


その結末を。


自然にするため。


過去まで。


作り始めた。


---


剣士騎士。


頭。


押さえる。


新しい記憶。


入る。


十年前。


幼い姫。


守る。


九年前。


姫。


守る。


八年前。


姫。


守る。


存在しなかった。


過去。


次々。


「……っ」


レシティア。


「聞かないで」


剣士騎士。


見る。


「新しい記憶を」


「本当かどうか」


「私に聞かないで」


「なぜ」


「確かめたら」


レシティア。


理解している。


「観測になる」


全員。


凍る。


---


黒髪の女。


「そう」


「思い出しても」


「確かめるな」


「記録するな」


「話すな」


「過去が」


「確定する」


剣士騎士。


歯。


食いしばる。


レシティア。


手。


握る。


「大丈夫」


「でも」


「覚えておいて」


剣士騎士。


「何を」


レシティア。


笑う。


「私たち」


「そんなに昔から」


「仲良くないわ」


剣士騎士。


少し。


止まる。


「……そうでしたね」


「ええ」


「最初」


「あなた」


「すごく怖かったもの」


「姫様が勝手に訓練場へ」


「それ以上は観測になります」


「……失礼しました」


---


空。


《過去修正》


《抵抗確認》


《手法変更》


レシティア。


「まだあるの?」


ガルド。


「気に入られたなあ」


「嬉しくない」


《直接因果生成》


黒髪。


「直接?」


次。


《死因個体》


《騎士団》


《一名選定》


騎士団。


全員。


身構える。


文字。


高速。


変わる。


《剣士》


《適合率 81%》


《女性騎士》


《適合率 74%》


《魔法騎士》


《適合率 69%》


《諜報騎士》


《適合率 63%》


そして。


止まる。


《選定》


剣士騎士。


レシティアの前。


立つ。


「私か」


レシティア。


「嫌」


《因果接続開始》


剣士騎士の。


右手。


突然。


動く。


剣。


抜く。


「っ!?」


本人の。


意思ではない。


レシティア。


後退。


「姫様!」


剣士騎士。


左手。


右手。


掴む。


止める。


「離れてください!」


「嫌!」


「姫様!」


剣。


震える。


切っ先。


レシティア。


向く。


女性騎士。


剣士騎士を。


後ろから。


拘束。


魔法騎士。


腕。


固定。


諜報騎士。


剣。


奪おうとする。


しかし。


剣。


離れない。


《因果》


《成立》


黒髪。


「駄目!」


「止めたら」


「止める行為まで」


「未来に組み込まれる!」


「じゃあどうすれば!」


レシティア。


叫ぶ。


影。


足元。


突然。


「食べる?」


レシティア。


「何を!?」


影。


剣士騎士。


指す。


「騎士」


全員。


「駄目!!」


影。


びくっ。


「違う」


「騎士と」


「死因」


「その間」


一拍。


「食べる」


エリシア。


目。


見開く。


「因果の境界……?」


影。


「うん」


黒髪の女。


「できるの?」


「分からない」


「失敗したら?」


影。


少し。


考える。


「騎士と」


「姫」


「関係」


「なくなるかも」


レシティア。


止まる。


剣士騎士も。


止まる。


それは。


死より。


軽い。


はず。


なのに。


誰も。


すぐ。


選べない。


---


剣士騎士。


剣。


少しずつ。


レシティアへ。


「姫様」


「はい」


「やってください」


レシティア。


「嫌」


「姫様」


「嫌よ」


「関係が消えるだけです」


「だけじゃない」


「生きられます」


「あなたが」


「私を知らなくなる」


剣士騎士。


苦しそうに。


笑う。


「また」


「お仕えします」


レシティア。


止まる。


「……」


「何度でも」


「姫様の騎士になります」


レシティア。


目。


少し。


潤む。


「それ」


「ずるいわ」


「申し訳ありません」


---


影。


待っている。


「食べる?」


レシティア。


答えようとする。


その時。


ガルド。


「待て」


全員。


見る。


「関係を切る必要」


「ないかもしれん」


黒髪。


「何かある?」


ガルド。


空。


見る。


「観測者は」


「騎士団が死因だって」


「決めたんだよな」


「そう」


「騎士団って」


「何だ?」


全員。


「……?」


ガルド。


笑う。


「定義」


「決めた?」


黒髪。


目。


見開く。


リベル。


理解。


「騎士団という概念そのものが」


「曖昧」


「そう」


ガルド。


剣士騎士。


見る。


「こいつは騎士団」


「でも」


「姫の護衛」


「一人の男」


「剣士」


「人間」


「全部」


「同時に成立する」


エリシア。


「境界を」


「ずらす?」


影。


「できる」


---


レシティア。


剣士騎士を見る。


「あなた」


「今」


「騎士?」


剣士騎士。


「はい」


「駄目」


「え?」


「今だけ」


「騎士を」


「やめて」


剣士騎士。


完全に。


固まる。


「……」


「姫様」


「お願い」


「それだけは」


「明日また」


「任命するから」


「しかし」


「今だけ」


レシティア。


手。


差し出す。


「私の」


少し考える。


「……友達?」


剣士騎士。


顔。


変わる。


女性騎士。


「姫様」


魔法騎士。


「その分類は」


諜報騎士。


「かなり無理があります」


レシティア。


「じゃあ何!?」


ガルド。


爆笑。


「友達でいいじゃん!」


剣士騎士。


ものすごく。


複雑な顔。


「……友人」


レシティア。


「嫌?」


「嫌では」


「なら」


「今だけ」


「私の友人」


長い。


沈黙。


剣士騎士。


剣を。


握ったまま。


「……承知」


言い直す。


「分かった」


レシティア。


少し。


笑う。


「うん」


---


影。


動く。


二人の間。


黒い線。


触れる。


「騎士」


「友達」


境界。


少し。


ずらす。


空。


《死因個体》


《騎士団》


《対象》


《……》


剣士騎士の。


右手。


止まる。


剣。


落ちる。


カラン。


《対象不一致》


全員。


沈黙。


ガルド。


「通った」


レシティア。


「……よかった」


剣士騎士。


床。


剣。


見る。


次。


レシティア。


見る。


「姫様」


「今は友達」


「……レシティア様」


「様もいらないんじゃない?」


「それは無理です」


「そこは無理なの?」


「無理です」


レシティア。


笑う。


---


だが。


空。


文字。


変わる。


《対象不一致》


《再定義》


《騎士団》


《定義拡張》


黒髪。


「まずい」


《レシティア・パープルに仕える者》


女性騎士。


「……」


魔法騎士。


「範囲を」


諜報騎士。


「広げた」


次。


《レシティア・パープルを守る者》


セラフィナ。


「私も?」


ルミエル。


「恐らく」


《レシティア・パープルを愛する者》


世界。


止まった。


レシティア。


「……え?」


ガルド。


「うわ」


黒髪の女。


「最低」


エリシア。


「観測者」


「本気ね」


《死因》


《レシティア・パープルを愛する者》


対象。


世界中。


増える。


家族。


騎士団。


友人。


国民。


助けられた人。


フィオナ。


猫の女王。


ナミラ。


そして。


今。


神殿にいる。


全員。


《適合個体》


《多数》


レシティア。


顔。


青ざめる。


今度は。


騎士だけではない。


自分を。


大切に思う人間。


全員が。


自分の死因に。


される。


---


影。


小さく。


「……ひどい」


レシティア。


見る。


影。


「これ」


「嫌」


レシティア。


「私も」


影。


「じゃあ」


「壊す」


「どうやって?」


影。


空。


見る。


「観測者」


「分けるの得意」


「うん」


「私」


「混ぜるの得意」


エリシア。


「まさか」


影。


初めて。


少し。


楽しそう。


「喧嘩」


「する」


レシティア。


「勝てる?」


影。


「分からない」


「そう」


レシティア。


剣。


拾う。


影。


「あなたも?」


「もちろん」


「怖い?」


「怖いわ」


「死ぬかも」


「嫌ね」


「でも行く?」


レシティア。


少し。


笑う。


「私の未来でしょう?」


一拍。


「勝手に決められたままにするの」


「嫌だもの」


---


空。


《世界確定率》


《5%》


黒髪の女。


叫ぶ。


「待って!」


レシティア。


「何?」


「観測者を」


「倒そうとしちゃ駄目」


「どうして?」


「倒せないから」


「じゃあ」


「どうするの?」


黒髪の女。


答える。


「間違えさせる」


レシティア。


「もう一回?」


「違う」


黒髪の女。


笑う。


少し。


悪い顔。


「世界中で」


「同時に」


「間違えさせる」


ガルド。


理解。


笑う。


「なるほど」


リベル。


「何をするつもりです?」


黒髪の女。


レシティアを見る。


「観測者は」


「一つの未来を」


「確定したい」


「だから」


「逆に」


一拍。


「明日までに」


「レシティアが死ぬ未来を」


「一万個作る」


全員。


「……」


レシティア。


「私」


「一万回死ぬの?」


「死なない」


黒髪の女。


「全部」


「偽物」


「全部」


「可能性だけ」


「全部」


「矛盾させる」


リベル。


目。


見開く。


「観測結果を」


「飽和させる」


「そう」


「どれが本当か」


「決められないくらい」


「未来を増やす」


レシティア。


少し。


考える。


そして。


「面白そう」


騎士団。


全員。


「姫様」


「何?」


「その反応は」


「やめてください」


「どうして?」


「ろくなことになりません」


「失礼ね」


---


その時。


地下。


大きいおじさん。


何か。


気づく。


『……待て』


助手。


「今度は何?」


巨大な目。


白いもの。


見る。


十二万。


全部。


震えている。


だが。


今度は。


恐怖ではない。


口。


一斉。


開く。


「未来」


「未来」


「未来」


少女。


「おじさん」


「この子たち」


「なんか」


「嬉しそう」


大きいおじさん。


嫌な。


予感。


『まさか』


白いもの。


一体。


自分の身体。


噛む。


そして。


二つに。


分かれる。


二体。


それぞれ。


違う方向。


見る。


「未来」


「二つ」


次。


別。


自分を。


噛む。


四つ。


「未来」


「四つ」


助手。


「……これ」


大きいおじさん。


『ああ』


「増えるのって」


『殺された時だけでは』


『なかったらしい』


少女。


「じゃあ」


白いもの。


一斉。


自分。


噛み始める。


十二万。


二十四万。


四十八万。


「未来」


「未来」


「未来」


「いっぱい」


大きいおじさん。


巨大な両手で。


顔。


覆った。


『……最悪だ』


---


神殿。


黒髪の女。


作戦。


説明。


「必要なのは」


「未来の分岐」


「できるだけ多く」


「できるだけ矛盾して」


「できるだけ」


「あり得るもの」


リベル。


「誰が作るのです?」


黒髪。


「みんな」


「え?」


「観測者が」


「人間を観測点にするなら」


「こっちも」


「人間を使う」


レシティア。


「世界中の人に」


「私の未来を」


「考えてもらう?」


「そう」


「でも」


「さっきは考えさせるなって」


「状況が変わった」


黒髪。


空。


睨む。


「今は」


「観測者が」


「一つの答えを」


「押しつけてる」


「なら」


「世界中から」


「別の答えを」


「返す」


---


レシティア。


少し。


笑う。


「じゃあ」


「簡単ね」


リベル。


「何か方法が?」


「うん」


「どうするのです?」


レシティア。


王女。


なのに。


悪戯を。


思いついた子どもみたいな顔。


「噂を」


「流すの」


黒髪。


「どんな?」


レシティア。


考える。


「何でもいい」


「明日」


「私が結婚するとか」


剣士騎士。


「却下です」


即答。


レシティア。


「友達でしょう?」


「それでも却下です」


「じゃあ」


「魔王になる」


女性騎士。


「それも」


「猫になる」


魔法騎士。


「可能性が低すぎます」


「月へ行く」


諜報騎士。


「方法がありません」


ガルド。


「俺が連れてける」


騎士団。


「黙れ」


「なんで!?」


---


レシティア。


笑う。


久しぶりに。


普通に。


そして。


空。


見る。


巨大な文字。


《レシティア・パープルを愛する者》


それを。


見て。


少し。


照れる。


「……これ」


「あとで消してくれない?」


黒髪。


「そこ?」


「恥ずかしいもの」


「世界滅亡級の状況だよ?」


「それとこれは別」


---


しかし。


その文字。


突然。


乱れる。


《レシティア・パープルを愛する者》


《死因》


《――》


消える。


全員。


「……?」


次。


新しい。


文字。


《観測対象増加》


《未来分岐数》


《12》


《108》


《9,881》


《210,044》


黒髪の女。


「まだ」


「何もしてない」


リベル。


「では」


「誰が?」


地下。


大きいおじさん。


叫ぶ。


『上!!』


声。


届く。


『白い奴らを』


『何とかしろ!!』


レシティア。


「え?」


次の瞬間。


神殿。


床。


白い顔。


一つ。


にゅ。


出る。


「未来」


レシティア。


「……」


もう一つ。


「未来」


さらに。


十。


百。


千。


床。


壁。


天井。


白い顔。


次々。


出現。


セラフィナ。


「きゃああああ!?」


白いもの。


襲わない。


ただ。


レシティアを見る。


「紫」


「未来」


「いっぱい」


「いっぱい」


「いっぱい」


そして。


それぞれ。


違う声。


話し始める。


「紫」


「明日」


「王になる」


別。


「紫」


「明日」


「海にいる」


別。


「紫」


「明日」


「子どもになる」


別。


「紫」


「明日」


「百歳」


別。


「紫」


「明日」


「空を食べる」


レシティア。


「最後のは嫌」


---


空。


《未来分岐》


《8,991,201》


《31,002,841》


《計算負荷》


《増大》


黒髪の女。


ぽかん。


ガルド。


腹。


抱える。


「っははははは!」


エリシア。


「笑ってる場合!?」


「いや」


「だって」


ガルド。


白いもの。


見る。


「こいつら」


「観測者と」


「相性」


一拍。


「最悪だ」


---


空。


文字。


激しく。


乱れる。


《未来確定》


《失敗》


《再計算》


《失敗》


《再計算》


《失敗》


白いもの。


増える。


「未来」


「未来」


「未来」


影。


レシティアの足元。


出てくる。


白いもの。


見る。


「いっぱい」


レシティア。


「いっぱいね」


影。


「混ぜる?」


レシティア。


「今は待って」


「うん」


---


そして。


黒髪の女。


突然。


笑み。


消える。


「……いや」


ガルド。


「何?」


「おかしい」


「何が」


「観測者なら」


「こんな負荷」


「切ればいい」


「観測をやめれば」


「済む」


エリシア。


「じゃあ」


「なぜ続けてるの?」


黒髪の女。


空。


見る。


《再計算》


《再計算》


《再計算》


止まらない。


女。


顔。


青ざめる。


「観測者じゃない」


レシティア。


「え?」


「今」


「計算してるの」


「観測者じゃない」


ガルド。


一つ目。


細くなる。


「じゃあ誰だよ」


黒髪の女。


ゆっくり。


答える。


「観測者が」


「見つけた」


一拍。


「この世界自身」


---


星泉。


突然。


沸騰。


神殿。


震える。


地上。


地下。


空。


海。


全て。


同時。


揺れる。


文字。


変わる。


《自己観測》


《開始》


黒髪の女。


「まずい」


《世界》


《自己定義》


レシティア。


「世界が」


「自分を見る?」


「そう」


「それの何が」


黒髪。


レシティアを見る。


「人間だって」


「自分が何者か」


「考えすぎたら」


「分からなくなることあるでしょ」


レシティア。


「あるわね」


「世界規模で」


「それが起きる」


---


《私は》


文字。


空。


《何》


世界中。


全ての人。


見る。


《私は》


《世界》


《世界とは》


《何》


海。


一瞬。


空になる。


空。


一瞬。


地面になる。


山。


上下。


反転。


すぐ。


戻る。


世界が。


自分の形を。


疑い始める。


《私は》


《ここ》


《ここは》


《どこ》


リベル。


「……まずい」


黒髪。


「世界が」


「自分自身を」


「定義できなくなる」


レシティア。


「どうすればいいの?」


黒髪の女。


答えようとする。


だが。


答え。


出ない。


エリシアも。


ガルドも。


黙る。


外から来た者たちですら。


知らない。


---


その時。


レシティア。


ふと。


思う。


「ねえ」


「何?」


「世界って」


「自分で」


「自分が世界だって」


「知る必要あるの?」


黒髪の女。


止まる。


「……え?」


レシティア。


空。


見る。


《私は何》


「別に」


「知らなくても」


「いいんじゃない?」


全員。


黙る。


「私だって」


「自分が何なのか」


「全部知ってるわけじゃないし」


胸。


非常口。


第二の扉。


契約王。


神代。


アリア。


黒髪の女。


謎。


山ほど。


「でも」


レシティア。


自分の手。


見る。


「私が」


「レシティアなのは」


「分かる」


空。


文字。


止まる。


《私は》


レシティア。


「あなたも」


「世界でいいんじゃない?」


「理由」


「いる?」


---


長い。


長い。


沈黙。


そして。


空。


《……》


初めて。


世界が。


迷った。


《私は》


《世界》


レシティア。


「うん」


《根拠》


「知らない」


《……》


「でも」


レシティア。


足元。


踏む。


「ここに」


「あるでしょう?」


---


風。


吹く。


草。


揺れる。


遠く。


鳥。


飛ぶ。


人。


息。


する。


猫。


欠伸。


する。


子ども。


泣く。


誰か。


笑う。


誰か。


怒る。


誰か。


眠る。


世界。


動いている。


レシティア。


「それじゃ」


「駄目?」


空。


《……》


文字。


一つ。


浮かぶ。


《不明》


レシティア。


笑う。


「じゃあ」


「一緒ね」


《何が》


「私も」


「分からないこと」


「いっぱいある」


一拍。


「分からないまま」


「生きてる」


---


空。


静か。


《世界確定率》


《5%》


数字。


揺れる。


《4%》


黒髪の女。


息。


呑む。


《3%》


《2%》


《1%》


そして。


《0.0001%》


最初。


戻る。


観測者。


文字。


出ない。


代わりに。


世界自身。


最後。


一文。


《私は》


間。


《まだ》


間。


《決めない》


文字。


消える。


---


静寂。


レシティア。


「……終わった?」


黒髪の女。


「たぶん」


ガルド。


「たぶん?」


「世界が自分で」


「確定を拒否した」


「そんなこと」


「できるの?」


黒髪。


笑う。


「今」


「できるようになった」


レシティア。


「じゃあ」


「よかった」


その瞬間。


足元。


白いもの。


「未来!」


レシティア。


「あなたたちは」


「ちょっと静かにして」


白いもの。


「……はい」


素直。


---


剣士騎士。


レシティア。


見る。


「姫様」


「何?」


「友人の件ですが」


「あ」


「騎士に」


「戻ってよいでしょうか」


レシティア。


少し。


考えるふり。


「どうしようかな」


剣士騎士。


「姫様」


「冗談よ」


レシティア。


笑う。


「戻って」


剣士騎士。


片膝。


つく。


「御意」


その瞬間。


他の騎士。


全員。


同じ。


膝。


つく。


レシティア。


「あなたたちは」


「やめてなかったでしょう?」


女性騎士。


「念のためです」


魔法騎士。


「再確認を」


諜報騎士。


「重要ですので」


レシティア。


「変なところ真面目ね」


---


だが。


黒髪の女。


まだ。


空。


見ている。


レシティア。


気づく。


「どうしたの?」


「観測者」


「いなくなってない」


「でも」


「世界は拒否したんでしょう?」


「うん」


「なら」


黒髪の女。


首。


横。


「諦めるやつじゃない」


その瞬間。


非常口。


コン。


音。


全員。


見る。


白い扉。


外から。


ノック。


コン。


コン。


ガルド。


顔。


変わる。


「おい」


黒髪。


「……嘘」


コン。


コン。


コン。


今まで。


非常口の向こうは。


世界の外。


誰でも。


来られる場所ではない。


なのに。


ノック。


そして。


声。


「失礼します」


妙に。


礼儀正しい。


男の声。


「観測管理局です」


全員。


「……」


レシティア。


黒髪の女を見る。


「知り合い?」


女。


首。


横。


全力。


「知らない」


扉。


向こう。


男。


続ける。


「当該世界において」


「重大な未確定事象を確認しました」


一拍。


「責任者の方」


「いらっしゃいますか?」


全員。


ゆっくり。


レシティアを見る。


レシティア。


「……」


「なんで」


「私を見るの?」


黒髪の女。


ガルド。


エリシア。


騎士団。


全員。


目を逸らす。


扉。


コン。


コン。


「責任者の方?」


レシティア。


深く。


ため息。


そして。


「……私」


「姫なんだけど」


剣士騎士。


「存じております」


「こういうの」


「王様の仕事じゃない?」


「陛下を世界の外へ」


「呼びますか?」


「それは駄目ね」


レシティア。


白い扉を見る。


嫌そうに。


立ち上がる。


「……はい」


扉。


向こう。


返事。


「ありがとうございます」


「では」


「立入検査を」


「開始します」


黒髪の女。


顔。


真っ青。


「開けるな!!」


レシティア。


「開けてない!」


なのに。


非常口の。


取っ手。


ゆっくり。


勝手に。


下がった。

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