騎士団が姫様を殺す日
《暫定未来》
《レシティア・パープル》
《死亡》
《明日》
そして。
その下。
《死因》
《騎士団》
レシティアの。
笑みが。
消えた。
「……」
セラフィナ。
壁を見る。
リベル。
言葉を失う。
エリシア。
青ざめる。
そして。
地下から。
「姫様ぁぁぁぁぁ!!」
声。
近づく。
剣士騎士。
帰ってくる。
---
「姫様!」
黒い穴から。
最初。
手。
出る。
次。
剣士騎士。
這い上がる。
「ご無事ですか!」
「大丈夫」
「お怪我は!」
「ないわ」
「本当に!?」
「本当よ」
剣士騎士。
レシティア。
確認。
頭。
肩。
腕。
胸。
脚。
全部。
無事。
ようやく。
息。
吐く。
「よかった……」
その後ろ。
女性騎士。
魔法騎士。
諜報騎士。
ゼフィール。
続々。
戻る。
ガルド。
最後。
「ただいま」
レシティア。
「おかえり」
そして。
全員。
壁を見る。
《死因》
《騎士団》
沈黙。
---
剣士騎士。
「……」
女性騎士。
「……」
魔法騎士。
「……」
諜報騎士。
「……」
レシティア。
「とりあえず」
剣士騎士。
剣。
抜く。
「何してるの!?」
刃。
自分の首。
向ける。
レシティア。
即座。
剣。
叩き落とす。
ガキン!
「何してるのよ!」
「原因の排除を」
「あなたでしょう!?」
「はい」
「排除しないで!」
女性騎士。
剣。
置く。
「では私は拘束を」
「しなくていい!」
魔法騎士。
「魔力封印を」
「しなくていい!」
諜報騎士。
「両腕を」
「切らないで!」
「まだ何も言っておりません」
「絶対切るつもりだったでしょう!」
「可能性の一つです」
「却下!」
---
ゼフィール。
「お前ら」
「行動早すぎだろ」
ガルド。
「姫絡むと」
「判断力上がるのか下がるのか」
レシティア。
「下がってるわよ!」
剣士騎士。
「姫様」
「何?」
「我々が姫様を害する可能性が」
「僅かでもあるなら」
レシティア。
「ない」
即答。
剣士騎士。
「しかし」
「ない」
「予言が」
「予言じゃないわ」
全員。
止まる。
レシティア。
壁。
見る。
「暫定未来って」
「書いてあるでしょう?」
---
黒髪の女。
非常口の向こう。
「……そう」
レシティア。
「合ってる?」
「合ってる」
女。
壁。
睨む。
「これは予言じゃない」
「観測者が」
「未来の候補を」
「一つ」
「選んだだけ」
リベル。
「しかし」
「世界中の人間に」
「その未来を観測させれば」
黒髪。
「現実になる」
女性騎士。
「なら」
「その前に」
レシティア。
「だから自分を縛ろうとしない」
女性騎士。
黙る。
「いい?」
騎士団。
見る。
「誰も」
「自分を傷つけない」
「拘束しない」
「腕も切らない」
諜報騎士。
僅かに。
目を逸らす。
「特にあなた」
「……承知しました」
---
剣士騎士。
壁。
見る。
「ですが」
「我々が」
「何らかの方法で」
「操られる可能性は」
エリシア。
「ある」
全員。
彼女を見る。
エリシア。
「観測者は」
「操らない」
「もっと面倒」
「どういう意味です」
「あなたたちが」
「姫を殺す人間になるように」
「世界の方を」
「合わせる」
---
例えば。
剣を振る。
その先に。
偶然。
レシティアがいる。
防御魔法。
張る。
その魔法が。
偶然。
レシティアだけを。
弾く。
毒から。
守る薬。
飲ませる。
薬の成分が。
偶然。
彼女にだけ。
致死毒になる。
助けようとする。
その行動が。
死因になる。
エリシア。
「そうやって」
「全部」
「結果へ向かう」
レシティア。
「迷惑ね」
ガルド。
「その感想で済む?」
「じゃあ」
「最低?」
「軽いなあ」
---
剣士騎士。
レシティアから。
三歩。
離れる。
レシティア。
「何で離れるの」
「安全距離です」
「近くにいて」
「しかし」
「近く」
「……」
剣士騎士。
二歩。
戻る。
「もう一歩」
「姫様」
「いつもの距離」
仕方なく。
戻る。
レシティア。
少し。
安心。
剣士騎士。
それを見る。
何も。
言わない。
---
その時。
壁。
文字。
増える。
《暫定未来》
《補強開始》
《観測点》
《284,901》
《501,772》
《891,220》
数字。
凄まじい速度。
リベル。
「増加が加速しています!」
黒髪の女。
「噂が」
「噂を呼んでる」
「一人が知れば」
「二人に話す」
「二人が」
「四人」
「四人が」
「八人」
レシティア。
「止める方法は?」
「世界中の人間を」
「黙らせる」
「無理ね」
「うん」
「他には?」
黒髪の女。
黙る。
---
ガルド。
「逆の話を」
「流す?」
黒髪。
「駄目」
「なんで」
「対抗する未来を」
「観測させたら」
「観測そのものが増える」
「じゃあ」
「レシティアは明日死なないって」
「広めるのも?」
「危険」
リベル。
理解。
「レシティア様について」
「考えさせること自体が」
「観測点になる」
黒髪。
「そう」
「否定も」
「肯定も」
「どっちも」
「そいつの餌」
---
レシティア。
「じゃあ」
「放っておく?」
「それも」
「一〇〇%まで行けば終わる」
「面倒ね」
「だから言ってる」
黒髪の女。
頭。
抱える。
「観測者は」
「嫌いなんだよ」
「話が通じるようで」
「全然通じない」
レシティア。
「でも」
「さっきは」
「少し通じたわ」
女。
顔。
上げる。
「だから」
「気に入られたんだよ!」
「私のせい?」
「かなり!」
「ごめんなさい」
「素直!」
---
その時。
レシティアの影。
小さく。
動く。
「ねえ」
レシティア。
「何?」
影。
「未来」
「食べようか?」
全員。
見る。
「食べられるの?」
「境界」
「ある」
影。
壁。
指す。
「今」
「明日」
「境界」
「ある」
「それ」
「なくせば」
「明日」
「来ない」
沈黙。
レシティア。
「却下」
影。
「早い」
「明日が来ないのは困るわ」
「どうして?」
「明後日も来なくなるでしょう?」
影。
「……そう」
「それに」
レシティア。
影を見る。
「あなたに」
「何でも食べさせて解決するの」
「嫌」
影。
「私」
「食べるの得意」
「知ってる」
「いっぱい食べられる」
「知ってるわ」
「役に立つ」
レシティア。
少し。
考える。
「役に立たなくても」
「ここにいていいのよ」
影。
止まる。
「……」
エリシア。
横。
向く。
何か。
刺さったらしい。
---
《観測点》
《1,901,117》
リベル。
「二百万に達します!」
黒髪。
「早すぎる」
「何か」
「媒介がある」
諜報騎士。
「媒介?」
「新聞や夢だけじゃ」
「こんな速度にならない」
「何か一つ」
「世界中へ」
「同じ情報を」
「一気に伝えてる」
リベル。
「星泉?」
「違う」
エリシア。
「神代網?」
「もう壊れてる」
セラフィナ。
小さく。
「あの」
全員。
見る。
「何?」
「空」
---
神殿。
外。
全員。
出る。
空。
昼。
青。
雲。
普通。
だが。
太陽。
横。
何か。
ある。
文字。
巨大。
世界中。
どこからでも。
見えるほど。
《明日》
《紫の姫は》
そこまで。
書かれている。
レシティア。
「……空に書くのは」
「反則じゃない?」
黒髪の女。
「最悪」
---
王都。
農村。
砂漠。
海。
獣人国。
猫の国。
アステリア。
人々。
空。
見る。
文字。
読む。
「紫の姫?」
「誰だ?」
「第三王女じゃないか?」
「レシティア様?」
「何があるんだ?」
人。
人。
人。
空を。
見る。
《観測点》
《5,000,000》
《8,000,000》
《12,000,000》
確定率。
《0.0001%》
《0.01%》
《0.1%》
---
黒髪の女。
「目を逸らして!」
無理。
世界中へ。
届かない。
《世界確定率》
《1%》
その瞬間。
レシティア。
胸。
痛む。
未来。
一瞬。
見える。
星見の神殿。
明日。
騎士団。
全員。
いる。
レシティア。
中央。
剣。
胸。
刺さっている。
握っているのは。
剣士騎士。
---
現実。
レシティア。
剣士騎士を見る。
剣士騎士も。
同じものを。
見た。
顔。
真っ青。
一歩。
下がる。
「姫様」
レシティア。
手。
伸ばす。
「離れないで」
「ですが」
「離れないで」
剣士騎士。
止まる。
レシティア。
その手。
掴む。
「未来に」
「私たちの今までまで」
「決めさせないで」
剣士騎士。
手。
握り返す。
「……御意」
---
《世界確定率》
《2%》
未来。
より。
鮮明。
女性騎士。
泣いている。
魔法騎士。
倒れている。
諜報騎士。
片腕。
ない。
剣士騎士。
レシティアを。
刺している。
そして。
レシティア。
笑っている。
「……?」
レシティア。
違和感。
死ぬ。
未来。
なのに。
自分。
笑っている。
「待って」
黒髪。
「何?」
「私」
「笑ってた」
「……何?」
「刺されてるのに」
「笑ってた」
剣士騎士。
「姫様」
「私」
一拍。
「自分から」
「刺されてない?」
---
全員。
未来。
思い返す。
剣士騎士。
表情。
変わる。
「確かに」
レシティアの手。
剣士騎士の手。
重なっていた。
刺した。
ではない。
一緒に。
剣を。
握っていた。
リベル。
「では」
「騎士団が殺すという記述は」
黒髪の女。
「嘘じゃない」
「観測者は」
「嘘をつかない」
「ただ」
「意味を」
「限定してる」
ガルド。
「都合のいい部分だけ?」
「そう」
レシティア。
目。
細くなる。
「性格悪いわね」
---
《世界確定率》
《3%》
次。
未来。
音。
聞こえる。
明日の。
レシティア。
『お願い』
剣士騎士。
『できません』
『お願い』
『できません!』
レシティア。
『あなたしか』
『できないの』
剣士騎士。
泣いている。
『姫様……』
レシティア。
笑う。
『大丈夫』
そして。
自分から。
剣先へ。
近づく。
---
現実。
剣士騎士。
「……」
レシティア。
「私」
「何をするつもりなの?」
誰も。
分からない。
影。
突然。
「扉」
全員。
見る。
影。
「胸」
「剣」
「扉」
レシティア。
自分の胸。
見る。
第二の扉。
黒髪の女。
顔色。
変わる。
「まさか」
エリシア。
「何?」
黒髪。
「未来のレシティア」
「第二の扉を」
「壊そうとしてる」
---
《世界確定率》
《4%》
未来。
さらに。
続く。
剣。
胸。
貫通。
血。
しかし。
刃。
その先。
レシティアの背中から。
出ていない。
代わりに。
白い。
扉。
貫いている。
剣士騎士。
叫ぶ。
『姫様!』
レシティア。
『今!』
騎士団。
全員。
魔力。
解放。
第二の扉。
破壊。
そして。
扉の向こう。
何か。
巨大なもの。
断末魔。
---
現実。
黒髪の女。
「そういうことか」
レシティア。
「分かったの?」
「観測者は」
「レシティアの死を」
「作ったんじゃない」
一拍。
「未来のどこかで」
「本当に」
「あなたが死ぬ可能性を」
「見つけた」
「それを」
「明日に」
「固定しようとしてる」
リベル。
「なぜ?」
黒髪。
「観測しやすいから」
「死は」
「分かりやすい」
「生き続ける人間は」
「未来が枝分かれする」
「でも」
「死んだ人間は」
「そこから先」
「枝分かれしない」
エリシア。
「確定させやすい」
黒髪。
「そう」
---
レシティア。
「つまり」
「私を殺したいんじゃなくて」
「未来を」
「簡単にしたい?」
《肯定》
空。
文字。
出る。
全員。
空を見る。
《対象死亡》
《観測効率》
《99.999%向上》
レシティア。
「……」
ガルド。
「お」
「本人から回答」
レシティア。
「腹立つわね」
---
空。
《死亡を推奨》
レシティア。
「嫌」
《世界安定》
「嫌」
《未来確定》
「嫌」
《不確定性排除》
「嫌よ」
《理由》
レシティア。
空。
見ない。
でも。
声。
届くように。
「生きたいから」
空。
止まる。
《非合理》
レシティア。
「知ってる」
《世界安定より》
《個体生存を優先》
「そうよ」
《理由》
レシティア。
少し。
怒る。
「だから」
「生きたいの!」
---
文字。
止まる。
単純。
理屈。
ない。
使命。
ない。
選ばれたから。
でもない。
世界を救うため。
でもない。
ただ。
レシティア・パープルが。
生きたい。
それだけ。
《理解不能》
レシティア。
「でしょうね」
---
その時。
フィオナ。
遠い。
アステリア。
空。
見ていた。
「お姉様……」
巨大な文字。
《紫の姫は明日死ぬ》
周囲。
兵士。
騒ぐ。
研究者。
記録。
取る。
フィオナ。
立つ。
「全部」
「止めなさい」
「殿下?」
「記録を」
「取らないで」
「しかし」
「空を見ないで」
「全員」
「地下へ」
側近。
「何が」
フィオナ。
分からない。
でも。
胸騒ぎ。
「お姉様を」
「見世物にしないで」
---
猫の国。
女王。
同じ。
空。
見る。
「……姫」
そして。
すぐ。
命令。
「国民を」
「屋内へ」
「窓を閉じろ」
「空を見るな」
側近。
「理由は」
女王。
「知らん」
「だが」
空。
睨む。
「気に入らん」
---
獣人国。
ナミラ。
空。
文字。
読む。
「パル様?」
そして。
周囲。
見る。
人々。
空。
指差す。
「見るな!」
大声。
「なんで?」
「知らん!」
「じゃあ何で」
「嫌な感じするから!」
理由。
それだけ。
---
《観測点》
増加。
鈍る。
黒髪の女。
「……?」
リベル。
「どうしました?」
「止まり始めた」
《15,821,901》
《15,822,010》
《15,822,041》
遅い。
「なんで?」
レシティア。
「みんな」
「空を見るの」
「やめた?」
黒髪。
「そんな」
「世界中で同時に?」
---
観測者。
空。
文字。
《観測妨害》
《原因検索》
《対象個体との関係性》
《友好》
《信頼》
《好意》
《恩義》
《……》
レシティア。
少し。
目。
見開く。
世界。
旅した。
いろんな場所。
会った。
いろんな人。
助けた人。
助けられた人。
喧嘩した人。
食事した人。
名前も。
知らない人。
その人たちが。
理由も。
分からないまま。
ただ。
「なんとなく嫌だ」
それだけで。
空から。
目を逸らし始める。
---
《世界確定率》
《4.0001%》
止まる。
ガルド。
「……すげえ」
黒髪。
笑う。
「観測者」
「計算に」
「入れてなかった」
レシティア。
「何を?」
女。
レシティアを見る。
「人間が」
「合理的に」
「動かないこと」
---
空。
文字。
荒れる。
《観測不足》
《追加観測点生成》
黒髪。
「まだ来る!」
《媒体変更》
《夢》
《記憶》
《伝承》
《歴史》
リベル。
「歴史?」
黒髪。
顔。
変わる。
「まずい!」
世界。
揺れる。
---
レシティア。
突然。
頭。
痛む。
知らない。
記憶。
流れ込む。
幼い。
自分。
五歳。
王宮。
庭。
剣士騎士。
いる。
でも。
おかしい。
彼は。
今と。
同じ姿。
幼いレシティア。
笑う。
『ずっと一緒にいてね』
剣士騎士。
答える。
『死ぬまで』
記憶。
終わる。
レシティア。
膝。
つく。
「……何」
剣士騎士。
支える。
「姫様!」
「今の」
「あなた」
「五歳の私と」
「話した?」
剣士騎士。
「いいえ」
即答。
「私は」
「その頃」
「姫様と面識がありません」
レシティア。
「じゃあ」
黒髪の女。
「歴史を」
「書き換え始めた」
---
空。
《因果補強》
《騎士団》
《死因》
《関係性構築》
《過去修正》
レシティア。
顔。
上げる。
「……」
観測者は。
未来だけでは。
足りない。
騎士団が。
レシティアを。
殺す。
その結末を。
自然にするため。
過去まで。
作り始めた。
---
剣士騎士。
頭。
押さえる。
新しい記憶。
入る。
十年前。
幼い姫。
守る。
九年前。
姫。
守る。
八年前。
姫。
守る。
存在しなかった。
過去。
次々。
「……っ」
レシティア。
「聞かないで」
剣士騎士。
見る。
「新しい記憶を」
「本当かどうか」
「私に聞かないで」
「なぜ」
「確かめたら」
レシティア。
理解している。
「観測になる」
全員。
凍る。
---
黒髪の女。
「そう」
「思い出しても」
「確かめるな」
「記録するな」
「話すな」
「過去が」
「確定する」
剣士騎士。
歯。
食いしばる。
レシティア。
手。
握る。
「大丈夫」
「でも」
「覚えておいて」
剣士騎士。
「何を」
レシティア。
笑う。
「私たち」
「そんなに昔から」
「仲良くないわ」
剣士騎士。
少し。
止まる。
「……そうでしたね」
「ええ」
「最初」
「あなた」
「すごく怖かったもの」
「姫様が勝手に訓練場へ」
「それ以上は観測になります」
「……失礼しました」
---
空。
《過去修正》
《抵抗確認》
《手法変更》
レシティア。
「まだあるの?」
ガルド。
「気に入られたなあ」
「嬉しくない」
《直接因果生成》
黒髪。
「直接?」
次。
《死因個体》
《騎士団》
《一名選定》
騎士団。
全員。
身構える。
文字。
高速。
変わる。
《剣士》
《適合率 81%》
《女性騎士》
《適合率 74%》
《魔法騎士》
《適合率 69%》
《諜報騎士》
《適合率 63%》
そして。
止まる。
《選定》
剣士騎士。
レシティアの前。
立つ。
「私か」
レシティア。
「嫌」
《因果接続開始》
剣士騎士の。
右手。
突然。
動く。
剣。
抜く。
「っ!?」
本人の。
意思ではない。
レシティア。
後退。
「姫様!」
剣士騎士。
左手。
右手。
掴む。
止める。
「離れてください!」
「嫌!」
「姫様!」
剣。
震える。
切っ先。
レシティア。
向く。
女性騎士。
剣士騎士を。
後ろから。
拘束。
魔法騎士。
腕。
固定。
諜報騎士。
剣。
奪おうとする。
しかし。
剣。
離れない。
《因果》
《成立》
黒髪。
「駄目!」
「止めたら」
「止める行為まで」
「未来に組み込まれる!」
「じゃあどうすれば!」
レシティア。
叫ぶ。
影。
足元。
突然。
「食べる?」
レシティア。
「何を!?」
影。
剣士騎士。
指す。
「騎士」
全員。
「駄目!!」
影。
びくっ。
「違う」
「騎士と」
「死因」
「その間」
一拍。
「食べる」
エリシア。
目。
見開く。
「因果の境界……?」
影。
「うん」
黒髪の女。
「できるの?」
「分からない」
「失敗したら?」
影。
少し。
考える。
「騎士と」
「姫」
「関係」
「なくなるかも」
レシティア。
止まる。
剣士騎士も。
止まる。
それは。
死より。
軽い。
はず。
なのに。
誰も。
すぐ。
選べない。
---
剣士騎士。
剣。
少しずつ。
レシティアへ。
「姫様」
「はい」
「やってください」
レシティア。
「嫌」
「姫様」
「嫌よ」
「関係が消えるだけです」
「だけじゃない」
「生きられます」
「あなたが」
「私を知らなくなる」
剣士騎士。
苦しそうに。
笑う。
「また」
「お仕えします」
レシティア。
止まる。
「……」
「何度でも」
「姫様の騎士になります」
レシティア。
目。
少し。
潤む。
「それ」
「ずるいわ」
「申し訳ありません」
---
影。
待っている。
「食べる?」
レシティア。
答えようとする。
その時。
ガルド。
「待て」
全員。
見る。
「関係を切る必要」
「ないかもしれん」
黒髪。
「何かある?」
ガルド。
空。
見る。
「観測者は」
「騎士団が死因だって」
「決めたんだよな」
「そう」
「騎士団って」
「何だ?」
全員。
「……?」
ガルド。
笑う。
「定義」
「決めた?」
黒髪。
目。
見開く。
リベル。
理解。
「騎士団という概念そのものが」
「曖昧」
「そう」
ガルド。
剣士騎士。
見る。
「こいつは騎士団」
「でも」
「姫の護衛」
「一人の男」
「剣士」
「人間」
「全部」
「同時に成立する」
エリシア。
「境界を」
「ずらす?」
影。
「できる」
---
レシティア。
剣士騎士を見る。
「あなた」
「今」
「騎士?」
剣士騎士。
「はい」
「駄目」
「え?」
「今だけ」
「騎士を」
「やめて」
剣士騎士。
完全に。
固まる。
「……」
「姫様」
「お願い」
「それだけは」
「明日また」
「任命するから」
「しかし」
「今だけ」
レシティア。
手。
差し出す。
「私の」
少し考える。
「……友達?」
剣士騎士。
顔。
変わる。
女性騎士。
「姫様」
魔法騎士。
「その分類は」
諜報騎士。
「かなり無理があります」
レシティア。
「じゃあ何!?」
ガルド。
爆笑。
「友達でいいじゃん!」
剣士騎士。
ものすごく。
複雑な顔。
「……友人」
レシティア。
「嫌?」
「嫌では」
「なら」
「今だけ」
「私の友人」
長い。
沈黙。
剣士騎士。
剣を。
握ったまま。
「……承知」
言い直す。
「分かった」
レシティア。
少し。
笑う。
「うん」
---
影。
動く。
二人の間。
黒い線。
触れる。
「騎士」
「友達」
境界。
少し。
ずらす。
空。
《死因個体》
《騎士団》
《対象》
《……》
剣士騎士の。
右手。
止まる。
剣。
落ちる。
カラン。
《対象不一致》
全員。
沈黙。
ガルド。
「通った」
レシティア。
「……よかった」
剣士騎士。
床。
剣。
見る。
次。
レシティア。
見る。
「姫様」
「今は友達」
「……レシティア様」
「様もいらないんじゃない?」
「それは無理です」
「そこは無理なの?」
「無理です」
レシティア。
笑う。
---
だが。
空。
文字。
変わる。
《対象不一致》
《再定義》
《騎士団》
《定義拡張》
黒髪。
「まずい」
《レシティア・パープルに仕える者》
女性騎士。
「……」
魔法騎士。
「範囲を」
諜報騎士。
「広げた」
次。
《レシティア・パープルを守る者》
セラフィナ。
「私も?」
ルミエル。
「恐らく」
《レシティア・パープルを愛する者》
世界。
止まった。
レシティア。
「……え?」
ガルド。
「うわ」
黒髪の女。
「最低」
エリシア。
「観測者」
「本気ね」
《死因》
《レシティア・パープルを愛する者》
対象。
世界中。
増える。
家族。
騎士団。
友人。
国民。
助けられた人。
フィオナ。
猫の女王。
ナミラ。
そして。
今。
神殿にいる。
全員。
《適合個体》
《多数》
レシティア。
顔。
青ざめる。
今度は。
騎士だけではない。
自分を。
大切に思う人間。
全員が。
自分の死因に。
される。
---
影。
小さく。
「……ひどい」
レシティア。
見る。
影。
「これ」
「嫌」
レシティア。
「私も」
影。
「じゃあ」
「壊す」
「どうやって?」
影。
空。
見る。
「観測者」
「分けるの得意」
「うん」
「私」
「混ぜるの得意」
エリシア。
「まさか」
影。
初めて。
少し。
楽しそう。
「喧嘩」
「する」
レシティア。
「勝てる?」
影。
「分からない」
「そう」
レシティア。
剣。
拾う。
影。
「あなたも?」
「もちろん」
「怖い?」
「怖いわ」
「死ぬかも」
「嫌ね」
「でも行く?」
レシティア。
少し。
笑う。
「私の未来でしょう?」
一拍。
「勝手に決められたままにするの」
「嫌だもの」
---
空。
《世界確定率》
《5%》
黒髪の女。
叫ぶ。
「待って!」
レシティア。
「何?」
「観測者を」
「倒そうとしちゃ駄目」
「どうして?」
「倒せないから」
「じゃあ」
「どうするの?」
黒髪の女。
答える。
「間違えさせる」
レシティア。
「もう一回?」
「違う」
黒髪の女。
笑う。
少し。
悪い顔。
「世界中で」
「同時に」
「間違えさせる」
ガルド。
理解。
笑う。
「なるほど」
リベル。
「何をするつもりです?」
黒髪の女。
レシティアを見る。
「観測者は」
「一つの未来を」
「確定したい」
「だから」
「逆に」
一拍。
「明日までに」
「レシティアが死ぬ未来を」
「一万個作る」
全員。
「……」
レシティア。
「私」
「一万回死ぬの?」
「死なない」
黒髪の女。
「全部」
「偽物」
「全部」
「可能性だけ」
「全部」
「矛盾させる」
リベル。
目。
見開く。
「観測結果を」
「飽和させる」
「そう」
「どれが本当か」
「決められないくらい」
「未来を増やす」
レシティア。
少し。
考える。
そして。
「面白そう」
騎士団。
全員。
「姫様」
「何?」
「その反応は」
「やめてください」
「どうして?」
「ろくなことになりません」
「失礼ね」
---
その時。
地下。
大きいおじさん。
何か。
気づく。
『……待て』
助手。
「今度は何?」
巨大な目。
白いもの。
見る。
十二万。
全部。
震えている。
だが。
今度は。
恐怖ではない。
口。
一斉。
開く。
「未来」
「未来」
「未来」
少女。
「おじさん」
「この子たち」
「なんか」
「嬉しそう」
大きいおじさん。
嫌な。
予感。
『まさか』
白いもの。
一体。
自分の身体。
噛む。
そして。
二つに。
分かれる。
二体。
それぞれ。
違う方向。
見る。
「未来」
「二つ」
次。
別。
自分を。
噛む。
四つ。
「未来」
「四つ」
助手。
「……これ」
大きいおじさん。
『ああ』
「増えるのって」
『殺された時だけでは』
『なかったらしい』
少女。
「じゃあ」
白いもの。
一斉。
自分。
噛み始める。
十二万。
二十四万。
四十八万。
「未来」
「未来」
「未来」
「いっぱい」
大きいおじさん。
巨大な両手で。
顔。
覆った。
『……最悪だ』
---
神殿。
黒髪の女。
作戦。
説明。
「必要なのは」
「未来の分岐」
「できるだけ多く」
「できるだけ矛盾して」
「できるだけ」
「あり得るもの」
リベル。
「誰が作るのです?」
黒髪。
「みんな」
「え?」
「観測者が」
「人間を観測点にするなら」
「こっちも」
「人間を使う」
レシティア。
「世界中の人に」
「私の未来を」
「考えてもらう?」
「そう」
「でも」
「さっきは考えさせるなって」
「状況が変わった」
黒髪。
空。
睨む。
「今は」
「観測者が」
「一つの答えを」
「押しつけてる」
「なら」
「世界中から」
「別の答えを」
「返す」
---
レシティア。
少し。
笑う。
「じゃあ」
「簡単ね」
リベル。
「何か方法が?」
「うん」
「どうするのです?」
レシティア。
王女。
なのに。
悪戯を。
思いついた子どもみたいな顔。
「噂を」
「流すの」
黒髪。
「どんな?」
レシティア。
考える。
「何でもいい」
「明日」
「私が結婚するとか」
剣士騎士。
「却下です」
即答。
レシティア。
「友達でしょう?」
「それでも却下です」
「じゃあ」
「魔王になる」
女性騎士。
「それも」
「猫になる」
魔法騎士。
「可能性が低すぎます」
「月へ行く」
諜報騎士。
「方法がありません」
ガルド。
「俺が連れてける」
騎士団。
「黙れ」
「なんで!?」
---
レシティア。
笑う。
久しぶりに。
普通に。
そして。
空。
見る。
巨大な文字。
《レシティア・パープルを愛する者》
それを。
見て。
少し。
照れる。
「……これ」
「あとで消してくれない?」
黒髪。
「そこ?」
「恥ずかしいもの」
「世界滅亡級の状況だよ?」
「それとこれは別」
---
しかし。
その文字。
突然。
乱れる。
《レシティア・パープルを愛する者》
《死因》
《――》
消える。
全員。
「……?」
次。
新しい。
文字。
《観測対象増加》
《未来分岐数》
《12》
《108》
《9,881》
《210,044》
黒髪の女。
「まだ」
「何もしてない」
リベル。
「では」
「誰が?」
地下。
大きいおじさん。
叫ぶ。
『上!!』
声。
届く。
『白い奴らを』
『何とかしろ!!』
レシティア。
「え?」
次の瞬間。
神殿。
床。
白い顔。
一つ。
にゅ。
出る。
「未来」
レシティア。
「……」
もう一つ。
「未来」
さらに。
十。
百。
千。
床。
壁。
天井。
白い顔。
次々。
出現。
セラフィナ。
「きゃああああ!?」
白いもの。
襲わない。
ただ。
レシティアを見る。
「紫」
「未来」
「いっぱい」
「いっぱい」
「いっぱい」
そして。
それぞれ。
違う声。
話し始める。
「紫」
「明日」
「王になる」
別。
「紫」
「明日」
「海にいる」
別。
「紫」
「明日」
「子どもになる」
別。
「紫」
「明日」
「百歳」
別。
「紫」
「明日」
「空を食べる」
レシティア。
「最後のは嫌」
---
空。
《未来分岐》
《8,991,201》
《31,002,841》
《計算負荷》
《増大》
黒髪の女。
ぽかん。
ガルド。
腹。
抱える。
「っははははは!」
エリシア。
「笑ってる場合!?」
「いや」
「だって」
ガルド。
白いもの。
見る。
「こいつら」
「観測者と」
「相性」
一拍。
「最悪だ」
---
空。
文字。
激しく。
乱れる。
《未来確定》
《失敗》
《再計算》
《失敗》
《再計算》
《失敗》
白いもの。
増える。
「未来」
「未来」
「未来」
影。
レシティアの足元。
出てくる。
白いもの。
見る。
「いっぱい」
レシティア。
「いっぱいね」
影。
「混ぜる?」
レシティア。
「今は待って」
「うん」
---
そして。
黒髪の女。
突然。
笑み。
消える。
「……いや」
ガルド。
「何?」
「おかしい」
「何が」
「観測者なら」
「こんな負荷」
「切ればいい」
「観測をやめれば」
「済む」
エリシア。
「じゃあ」
「なぜ続けてるの?」
黒髪の女。
空。
見る。
《再計算》
《再計算》
《再計算》
止まらない。
女。
顔。
青ざめる。
「観測者じゃない」
レシティア。
「え?」
「今」
「計算してるの」
「観測者じゃない」
ガルド。
一つ目。
細くなる。
「じゃあ誰だよ」
黒髪の女。
ゆっくり。
答える。
「観測者が」
「見つけた」
一拍。
「この世界自身」
---
星泉。
突然。
沸騰。
神殿。
震える。
地上。
地下。
空。
海。
全て。
同時。
揺れる。
文字。
変わる。
《自己観測》
《開始》
黒髪の女。
「まずい」
《世界》
《自己定義》
レシティア。
「世界が」
「自分を見る?」
「そう」
「それの何が」
黒髪。
レシティアを見る。
「人間だって」
「自分が何者か」
「考えすぎたら」
「分からなくなることあるでしょ」
レシティア。
「あるわね」
「世界規模で」
「それが起きる」
---
《私は》
文字。
空。
《何》
世界中。
全ての人。
見る。
《私は》
《世界》
《世界とは》
《何》
海。
一瞬。
空になる。
空。
一瞬。
地面になる。
山。
上下。
反転。
すぐ。
戻る。
世界が。
自分の形を。
疑い始める。
《私は》
《ここ》
《ここは》
《どこ》
リベル。
「……まずい」
黒髪。
「世界が」
「自分自身を」
「定義できなくなる」
レシティア。
「どうすればいいの?」
黒髪の女。
答えようとする。
だが。
答え。
出ない。
エリシアも。
ガルドも。
黙る。
外から来た者たちですら。
知らない。
---
その時。
レシティア。
ふと。
思う。
「ねえ」
「何?」
「世界って」
「自分で」
「自分が世界だって」
「知る必要あるの?」
黒髪の女。
止まる。
「……え?」
レシティア。
空。
見る。
《私は何》
「別に」
「知らなくても」
「いいんじゃない?」
全員。
黙る。
「私だって」
「自分が何なのか」
「全部知ってるわけじゃないし」
胸。
非常口。
第二の扉。
契約王。
神代。
アリア。
黒髪の女。
謎。
山ほど。
「でも」
レシティア。
自分の手。
見る。
「私が」
「レシティアなのは」
「分かる」
空。
文字。
止まる。
《私は》
レシティア。
「あなたも」
「世界でいいんじゃない?」
「理由」
「いる?」
---
長い。
長い。
沈黙。
そして。
空。
《……》
初めて。
世界が。
迷った。
《私は》
《世界》
レシティア。
「うん」
《根拠》
「知らない」
《……》
「でも」
レシティア。
足元。
踏む。
「ここに」
「あるでしょう?」
---
風。
吹く。
草。
揺れる。
遠く。
鳥。
飛ぶ。
人。
息。
する。
猫。
欠伸。
する。
子ども。
泣く。
誰か。
笑う。
誰か。
怒る。
誰か。
眠る。
世界。
動いている。
レシティア。
「それじゃ」
「駄目?」
空。
《……》
文字。
一つ。
浮かぶ。
《不明》
レシティア。
笑う。
「じゃあ」
「一緒ね」
《何が》
「私も」
「分からないこと」
「いっぱいある」
一拍。
「分からないまま」
「生きてる」
---
空。
静か。
《世界確定率》
《5%》
数字。
揺れる。
《4%》
黒髪の女。
息。
呑む。
《3%》
《2%》
《1%》
そして。
《0.0001%》
最初。
戻る。
観測者。
文字。
出ない。
代わりに。
世界自身。
最後。
一文。
《私は》
間。
《まだ》
間。
《決めない》
文字。
消える。
---
静寂。
レシティア。
「……終わった?」
黒髪の女。
「たぶん」
ガルド。
「たぶん?」
「世界が自分で」
「確定を拒否した」
「そんなこと」
「できるの?」
黒髪。
笑う。
「今」
「できるようになった」
レシティア。
「じゃあ」
「よかった」
その瞬間。
足元。
白いもの。
「未来!」
レシティア。
「あなたたちは」
「ちょっと静かにして」
白いもの。
「……はい」
素直。
---
剣士騎士。
レシティア。
見る。
「姫様」
「何?」
「友人の件ですが」
「あ」
「騎士に」
「戻ってよいでしょうか」
レシティア。
少し。
考えるふり。
「どうしようかな」
剣士騎士。
「姫様」
「冗談よ」
レシティア。
笑う。
「戻って」
剣士騎士。
片膝。
つく。
「御意」
その瞬間。
他の騎士。
全員。
同じ。
膝。
つく。
レシティア。
「あなたたちは」
「やめてなかったでしょう?」
女性騎士。
「念のためです」
魔法騎士。
「再確認を」
諜報騎士。
「重要ですので」
レシティア。
「変なところ真面目ね」
---
だが。
黒髪の女。
まだ。
空。
見ている。
レシティア。
気づく。
「どうしたの?」
「観測者」
「いなくなってない」
「でも」
「世界は拒否したんでしょう?」
「うん」
「なら」
黒髪の女。
首。
横。
「諦めるやつじゃない」
その瞬間。
非常口。
コン。
音。
全員。
見る。
白い扉。
外から。
ノック。
コン。
コン。
ガルド。
顔。
変わる。
「おい」
黒髪。
「……嘘」
コン。
コン。
コン。
今まで。
非常口の向こうは。
世界の外。
誰でも。
来られる場所ではない。
なのに。
ノック。
そして。
声。
「失礼します」
妙に。
礼儀正しい。
男の声。
「観測管理局です」
全員。
「……」
レシティア。
黒髪の女を見る。
「知り合い?」
女。
首。
横。
全力。
「知らない」
扉。
向こう。
男。
続ける。
「当該世界において」
「重大な未確定事象を確認しました」
一拍。
「責任者の方」
「いらっしゃいますか?」
全員。
ゆっくり。
レシティアを見る。
レシティア。
「……」
「なんで」
「私を見るの?」
黒髪の女。
ガルド。
エリシア。
騎士団。
全員。
目を逸らす。
扉。
コン。
コン。
「責任者の方?」
レシティア。
深く。
ため息。
そして。
「……私」
「姫なんだけど」
剣士騎士。
「存じております」
「こういうの」
「王様の仕事じゃない?」
「陛下を世界の外へ」
「呼びますか?」
「それは駄目ね」
レシティア。
白い扉を見る。
嫌そうに。
立ち上がる。
「……はい」
扉。
向こう。
返事。
「ありがとうございます」
「では」
「立入検査を」
「開始します」
黒髪の女。
顔。
真っ青。
「開けるな!!」
レシティア。
「開けてない!」
なのに。
非常口の。
取っ手。
ゆっくり。
勝手に。
下がった。




