↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
68/80

二つ目の扉

《99.8000%》


数字が。


また。


下がった。


星泉の水面。


震える。


地下。


何千本もの鎖。


切断。


そして。


レシティアの胸。


コン。


コン。


コン。


「開けて」


誰かが。


向こう側から。


叩いている。


⸻


「姫様!」


剣士騎士が。


レシティアを支える。


「痛みは?」


「少し」


「少しではありませんね」


「……ちょっと多め」


「横になってください」


「今?」


「今です」


「でも」


「今です」


「……はい」


いつものように。


強い。


レシティアは。


神殿の床へ。


ゆっくり座らされた。


女性騎士。


すぐに。


周囲を固める。


魔法騎士。


診断魔法。


諜報騎士。


周囲確認。


一瞬で。


姫様中心。


「異物反応は?」


剣士騎士。


「ありません」


魔法騎士。


「精神干渉」


「なし」


「呪い」


「なし」


「なら何だ」


魔法騎士。


レシティアの胸を見る。


「……扉です」


「比喩ではなく?」


「恐らく」


「本当に」


「扉のような構造があります」


ゼフィール。


「人の胸の中に?」


魔法騎士。


「ですから私も困っています」


レシティア。


「私もよ」


⸻


黒髪の女。


非常口の向こう。


動かない。


レシティアが見る。


「説明して」


女。


少し。


目を逸らす。


「……」


「説明して」


「怒ってる?」


「少し」


「どれくらい?」


「かなり」


少女。


横から。


「怒ってるね」


「うん」


黒髪の女。


「……ごめん」


レシティア。


「それは後で」


「はい」


妙に。


立場が逆転していた。


⸻


「二つ目の扉って何?」


黒髪の女。


少し。


沈黙。


そして。


「最初の非常口は」


「逃げ道」


レシティアの背後。


白い扉。


「世界の外へ」


「出るためのもの」


「じゃあ」


レシティア。


胸へ。


手を置く。


「こっちは?」


女。


答えた。


「隔離扉」


「何を?」


長い。


沈黙。


ガルドが。


黒髪の女を見る。


「お前」


「まさか」


女。


「うん」


ガルド。


顔。


引きつる。


「入れたの?」


「入れた」


「レシティアの中に?」


「正確には」


「中じゃない」


「じゃあどこ?」


「外と外の間」


ゼフィール。


「もう分からん」


リベル。


「私もです」


レシティア。


「簡単に説明して」


黒髪の女。


少し考える。


「レシティアを」


「扉の取っ手にした」


沈黙。


剣士騎士。


一歩。


前。


「今」


「何と言った」


黒髪の女。


顔色。


変わる。


「比喩」


「比喩です」


「本当に?」


「八割くらい」


剣士騎士。


剣。


抜く。


レシティア。


「待って!」


「姫様」


「説明を聞いてから」


「……承知しました」


黒髪の女。


明らかに。


ほっとした。


⸻


「昔」


女が話し始める。


「世界の外には」


「入れてはいけないものがいた」


ガルド。


小さく。


「いたな」


リベル。


「掃除屋とは別?」


「別」


「銀髪の女とも?」


「別」


「地下の白いもの?」


「それも別」


セラフィナ。


「多すぎません?」


誰も。


否定できない。


⸻


黒髪の女。


「外って」


「安全じゃないんだよ」


「世界の内側より」


「ずっと広い」


「そして」


「ずっと」


「変なものがいる」


ゼフィール。


「お前ら含めて?」


「そう」


「自覚あるんだ」


「あるよ」


ガルド。


「俺は普通だけど」


全員。


ガルドを見る。


三本角。


六本腕。


一つ目。


「どこが?」


「外では普通」


文化圏が違った。


⸻


「その中に」


黒髪の女。


続ける。


「絶対」


「こちら側へ」


「入れちゃ駄目なものがいた」


レシティア。


「どうして?」


「食べるから」


「何を?」


「境界」


リベル。


眉。


寄せる。


「境界?」


「世界と外」


「生と死」


「過去と未来」


「私とあなた」


「そういう」


「違い」


黒髪の女。


レシティアを見る。


「全部」


「食べる」


沈黙。


魔法騎士。


「境界がなくなると?」


黒髪の女。


「混ざる」


「何と何が?」


「全部」


⸻


星泉の銀髪の女まで。


表情。


変わった。


「……あれを」


黒髪の女を見る。


「まだ閉じ込めていたの?」


黒髪の女。


「うん」


銀髪。


「馬鹿なの?」


「よく言われる」


「そういう意味じゃない!」


初めて。


銀髪の女と。


ガルドが。


同じ顔をした。


⸻


レシティア。


胸を押さえる。


「じゃあ」


「今」


コン。


コン。


コン。


「向こうから」


「その何かが」


「出ようとしてる?」


黒髪の女。


「……うん」


剣士騎士。


「閉じる方法は」


黒髪。


「開けなければいい」


「それだけ?」


「それだけ」


女性騎士。


「なら問題ありません」


「姫様」


レシティア。


「はい」


「開けないでください」


「開けないわよ」


「絶対に」


「絶対」


「約束を」


「約束する」


騎士団。


少し。


安心。


しかし。


黒髪の女だけ。


安心しない。


ガルドが。


気づく。


「……違うな」


女。


黙る。


「おい」


「何が違う」


黒髪。


「……」


ガルド。


「開けるの」


「レシティアじゃないんだろ」


空気。


変わる。


⸻


コン。


コン。


声。


「開けて」


今度は。


少し。


近い。


黒髪の女。


「二つ目は」


「内側からは開かない」


レシティア。


「なら」


女。


地下を見る。


「外側の錠前が」


「壊されてる」


全員。


地下。


を見る。


見えない。


でも。


分かる。


黒い人影。


鎖を。


切っている。


⸻


地下。


大きいおじさん。


怒号。


『止まれ!』


黒い人影。


剣。


振るう。


バキン。


鎖。


数百本。


落ちる。


『それを開けば』


『貴様も消えるぞ!』


人影。


「知ってる」


『ならばなぜ!』


「見たいから」


『何を』


黒い人影。


上。


遥か。


レシティアの方向。


「完成形」


⸻


大きいおじさん。


目。


見開く。


『……貴様』


黒い人影。


初めて。


輪郭。


少し。


見える。


人間。


男。


長い髪。


片腕。


ない。


「ずっと」


「待ってた」


『お前は』


「そう」


男。


笑う。


「神代研究者」


『違う』


大きいおじさん。


声。


低い。


『神代より』


『前』


男。


「覚えてた?」


『忘れるものか』


男。


剣。


構える。


「じゃあ」


「名前も?」


『……』


沈黙。


男。


少し。


寂しそう。


「やっぱり」


「残ってないか」


そして。


一振り。


さらに。


鎖。


切断。


⸻


星見の神殿。


黒髪の女。


突然。


顔。


変わる。


「……嘘」


レシティア。


「何?」


女。


地下を見る。


「思い出した」


「誰を?」


「鎖を切ってるやつ」


ガルド。


「誰?」


黒髪。


「昔の」


一拍。


「助手」


⸻


沈黙。


ガルド。


「お前の?」


黒髪。


「うん」


「お前」


「周りろくなのいないな」


「否定できない」


銀髪の女。


低く。


「その男」


「死んだでしょう」


黒髪。


「死んだ」


「私が」


「見届けた」


レシティア。


「なら」


「今いるのは?」


黒髪。


声。


震える。


「分からない」


⸻


リベル。


「その人物は」


「何を研究していたのです?」


黒髪の女。


答えたくなさそう。


でも。


答える。


「私」


全員。


見る。


「正確には」


「世界の外から来た存在」


「どうやって世界へ入るのか」


「どうやって」


「こっち側の法則へ」


「適応するのか」


ガルド。


「あー」


「やばいやつだ」


黒髪。


「うん」


「止めなかったの?」


「最初は」


「便利だった」


「お前」


「本当にろくでもないな」


「知ってる」


⸻


銀髪の女。


「その研究の結果が」


レシティアを見る。


「この子?」


黒髪。


即座に。


「違う」


「レシティアは」


「研究成果じゃない」


強い声。


珍しい。


「絶対に」


「違う」


レシティア。


その言葉を。


静かに聞く。


銀髪。


「なら何?」


黒髪。


「……」


「答えられないの?」


黒髪。


「ただ」


「自由にしたかっただけ」


⸻


その時。


胸。


コン。


ではなく。


ドン。


レシティア。


「っ!」


身体。


前へ。


剣士騎士。


支える。


「姫様!」


二つ目の扉。


向こう。


声。


変化。


「開けて」


「開けて」


「開けて」


一人。


ではない。


何百。


何千。


同じ声。


重なる。


少女が。


両耳。


塞ぐ。


「嫌」


「嫌!」


セラフィナ。


少女を抱く。


「大丈夫」


少女。


首を横。


「違う」


「何が?」


「あれ」


胸。


レシティアを見る。


「あれ」


「一人じゃない」


⸻


黒髪の女。


絶句。


「……増えてる」


ガルド。


「何が」


「中身」


「は?」


「昔」


「一つだけだった」


「今は?」


女。


レシティアを見る。


「分からない」


「数えられない」


リベル。


「増殖?」


黒髪。


「違う」


「食べたんだ」


「何を?」


女。


「向こう側に」


「落ちてきたもの」


⸻


二つ目の非常口。


隔離扉。


その向こう。


境界を食べる存在。


それは。


閉じ込められていた。


長すぎる時間。


世界の外から。


流れ着いた。


何か。


死んだ神。


壊れた世界。


使われなくなった魂。


消された時間。


それらを。


ずっと。


食べ続けた。


そして。


一つでは。


なくなった。


⸻


黒髪の女。


「もし」


「開いたら」


レシティア。


「どうなる?」


「分からない」


「昔なら?」


「世界が」


「混ざる」


「今は?」


長い。


沈黙。


「複数の世界が」


「区別できなくなるかも」


ゼフィール。


「例えば?」


黒髪。


「死んだ人が」


「生きてる人と」


「同じ場所にいたり」


「昨日と千年前が」


「同時に起きたり」


「人間と魔物の境目が」


「なくなったり」


リベル。


顔色。


真っ青。


「世界そのものが」


「矛盾する」


黒髪。


「そう」


⸻


レシティア。


「閉じ直す方法は?」


黒髪。


「外側の錠前を」


「直す」


剣士騎士。


「場所は」


「地下」


全員。


止まる。


騎士団。


ゆっくり。


レシティアを見る。


レシティア。


目を逸らす。


女性騎士。


「姫様」


「まだ何も言ってないわ」


「地下へ行くつもりですね」


「言ってないでしょう?」


「お顔に」


「書いてないわ」


「大きく書いてあります」


レシティア。


少し。


頬を膨らませる。


⸻


大きいおじさん。


地下から。


『来るな』


レシティア。


床を見る。


『絶対に』


『来るな』


「でも」


『でもではない』


「錠前」


『私が直す』


黒髪。


「無理」


地下。


『貴様』


「今」


「動けないでしょ」


『……』


「白いの食べながら」


「鎖も守って」


「助手も止めて」


「錠前まで」


「無理」


地下。


沈黙。


少女。


小さく。


「おじさん」


「無理なの?」


『……』


「ねえ」


『少し』


一拍。


『厳しい』


少女。


「無理なんだ」


『言い方!』


神殿。


ドン。


少し揺れる。


⸻


レシティア。


立ち上がろうとする。


騎士団。


止める。


「姫様」


「お願い」


「駄目です」


「でも」


「駄目です」


「世界が」


「我々が行きます」


レシティア。


止まる。


剣士騎士。


「姫様は」


「ここに」


「残ってください」


「……」


「第二の扉が」


「姫様と接続されているのであれば」


「現場へ近づけるべきではない」


正論。


あまりにも。


正論。


レシティア。


反論。


できない。


「でも」


剣士騎士。


「必ず戻ります」


女性騎士。


「錠前も」


魔法騎士。


「修復方法を確認します」


諜報騎士。


「黒髪の方」


「案内を」


黒髪。


少し。


驚く。


「私?」


剣士騎士。


「あなたが一番詳しい」


「信用してないでしょう?」


「していません」


即答。


「でも使う?」


「必要ですので」


黒髪。


少し笑う。


「好き」


剣士騎士。


「結構です」


⸻


ガルド。


「俺も行く」


ゼフィール。


「俺も」


ルミエル。


「私も同行します」


セラフィナ。


「私も!」


全員。


セラフィナを見る。


「……私は駄目?」


レシティア。


「危険よ」


セラフィナ。


「姫様にだけ」


「それ言われたくありません」


レシティア。


止まる。


女性騎士。


小さく。


「正論です」


レシティア。


「最近」


「みんな私に厳しくない?」


剣士騎士。


「大切ですので」


即答。


レシティア。


また。


何も言えなくなった。


⸻


そして。


地下。


黒い男。


助手。


最後の。


巨大な鎖へ。


剣。


当てる。


大きいおじさん。


『やめろ』


助手。


「どうして?」


『扉の向こうにいるものは』


『お前が想像している』


『あいつではない』


助手。


動き。


止まる。


「……何?」


『貴様が』


『会いたがっている者は』


『もういない』


助手。


剣。


震える。


『それは』


『声を真似ているだけだ』


そして。


二つ目の扉。


向こうから。


声。


変わる。


女。


優しい。


懐かしい。


「ねえ」


黒髪の女が。


神殿で。


凍りつく。


その声。


自分の。


声だった。


「開けて」


「私だよ」


黒髪の女。


顔から。


血の気。


消える。


レシティア。


「あなたの声」


女。


「……うん」


そして。


地下。


助手。


涙。


落ちる。


「やっと」


「戻ってきた」


大きいおじさん。


叫ぶ。


『違う!!』


しかし。


助手は。


剣を振り下ろした。


最後の錠前へ。


――ガキン。


亀裂。


レシティアの胸。


激痛。


「っ――!」


剣士騎士。


「姫様!」


星泉。


数字。


《98.0000%》


《95.0000%》


《90.0000%》


急落。


そして。


第二の扉。


向こうから。


黒髪の女と。


まったく同じ声。


「もう少し」


「もう少しで」


一拍。


「全部」


「同じになるよ」


黒髪の女。


初めて。


叫んだ。


「地下へ行って!」


全員。


見る。


「急いで!」


騎士団。


即座に。


動く。


そして。


自分は。


非常口の向こうに。


残る。


レシティア。


「あなたは?」


黒髪の女。


笑う。


怖いはずなのに。


いつものように。


軽く。


「私は」


「こっちを」


「押さえる」


白い非常口。


その奥。


今まで。


静かだった。


白い空間。


そこへ。


黒い亀裂が。


一本。


走った。


女。


その亀裂を。


両手で。


掴む。


「ほら」


「行って」


レシティア。


「でも」


「大丈夫」


女。


微笑む。


「私は」


「逃げるの」


「得意だから」


白い扉。


ゆっくり。


閉じる。


最後。


女が。


レシティアへ。


言った。


「今度は」


一拍。


「あなたが」


「帰る場所を」


「守ってきて」


扉。


閉じる。


そして。


地下への入口が。


少女の足元に。


黒く。


開いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。