表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
51/61

神代の司書

パラパラパラ……


図書館中の本が、まるで拍手を送るようにページをめくる。


その音は不思議と騒がしくない。


優しく。


どこか懐かしい。


銀髪の少女――リベルは静かに一礼したまま動かない。


レシティアも同じように一礼を返した。


「初めまして。」


「レシティアです。」


「よろしくね。」


リベルはゆっくり顔を上げる。


その瞳は千年以上の時を見続けてきたような、静かな色をしていた。


「……やっぱり。」


小さく呟く。


「笑い方まで違いますね。」


レシティアは苦笑する。


「よく言われるの?」


「いいえ。」


「今、初めて言いました。」


真面目な返事だった。


思わず女性騎士が吹き出す。


「ふふっ。」


場の空気が少しだけ柔らかくなった。


リベルはゆっくり歩き出す。


「こちらへ。」


案内された先には、大きな丸い机があった。


六脚の椅子。


机の中央には透明な水晶。


管理者の本が机の上へ飛び乗る。


『会議です。』


ゼフィールが苦笑した。


「図書館まで会議好きなのか。」


『必要です。』


「はいはい。」


リベルは静かに椅子へ腰掛ける。


レシティアたちも座った。


「まず。」


リベルが口を開く。


「フィオナ王女の呪いについて。」


その一言で空気が変わる。


レシティアが身を乗り出した。


「治せるの?」


「はい。」


即答だった。


全員が顔を上げる。


「ですが。」


リベルの表情は変わらない。


「簡単ではありません。」


水晶へ手をかざす。


光が広がる。


立体映像。


フィオナの身体が映し出された。


心臓付近。


そこへ黒い棘のようなものが巻き付いている。


セラフィナが息を呑む。


「これ……。」


「呪いです。」


リベルが続ける。


「正式名称。」


『生命侵食呪術・第三式』


ルミエルが立ち上がる。


「失われた術です!」


「ええ。」


「神代で禁術指定されました。」


ゼフィールが舌打ちする。


「古代研究機関め。」


「こんな物まで復元したか。」


レシティアは映像を見つめる。


「取ればいいの?」


「取れません。」


「え?」


「無理に外すと。」


リベルは静かに告げる。


「命が止まります。」


部屋が静まり返る。


レシティアの笑顔が消えた。


「解除方法は一つ。」


リベルが映像を切り替える。


今度は古い地図。


山。


湖。


そして。


赤い印。


「星見の神殿。」


老騎士が目を見開く。


「まだ存在したのか……。」


「はい。」


「そこに。」


「呪いを浄化する泉があります。」


セラフィナが嬉しそうに言う。


「じゃあ行けば!」


「……ですが。」


リベルは静かに首を横へ振る。


「神殿は閉じています。」


「千二百年間。」


「誰も入れていません。」


「どうして?」


レシティアが尋ねる。


リベルは水晶へ映像を映した。


巨大な石門。


その前に立つ石像。


人ではない。


獅子でもない。


翼を持つ四足の魔獣。


「門番です。」


「神代守護獣。」


「フェンリオ。」


その名に。


ルミエルもゼフィールも表情が変わる。


「まだ生きているのですか。」


「眠っています。」


「ですが。」


「侵入者には容赦しません。」


管理者の本へ新しい文字が浮かぶ。


『勝率。』


『現在計算中。』


数秒後。


『正面突破。』


『成功率三・二%』


女性騎士が苦笑する。


「低いですね。」


『かなり低いです。』


諜報騎士が尋ねる。


「姫様を含めても?」


文字が変わる。


『含めません。』


「どうして?」


レシティアが聞く。


『計算できません。』


『姫様は予測不能です。』


ゼフィールが笑った。


「それは同感。」


騎士団全員が頷いた。


レシティアだけが納得していない。


「そんなことないと思うのだけど。」


「あります。」


全員一致だった。


その時。


城の外から鐘の音が響く。


ゴォォォン!!


一度。


二度。


三度。


老騎士が立ち上がる。


「敵襲!」


若い兵士が飛び込んできた。


「隊長!」


「敵軍です!」


「先ほど退却したはずの部隊ではありません!」


「新しい軍勢です!」


「数は!」


「約千!」


部屋の空気が凍った。


「旗印は!」


兵士は震える声で答える。


「古代研究機関ではありません!」


「では誰だ!」


兵士は唾を飲み込んだ。


「敵国連合軍です!」


「五か国の旗を確認!」


騎士団が顔を見合わせる。


古代研究機関だけではない。


今度は国家が動いた。


レシティアはゆっくり立ち上がる。


「狙いは。」


兵士はレシティアを見た。


「……姫様です。」


「『レシティア王女を引き渡せば、アステリアには手を出さない』と。」


静寂。


城内に重苦しい空気が流れる。


レシティアは少しだけ考えた。


そして。


「断りましょう。」


あまりにも自然な口調だった。


「助けを求めてきた人たちを見捨てる理由にはならないもの。」


剣士騎士は静かに剣を抜く。


女性騎士は盾を持ち上げる。


諜報騎士は窓の外へ姿を消した。


ルミエルは翼を広げる。


ゼフィールは楽しそうに笑う。


「これは面白くなってきた。」


リベルだけは静かにレシティアを見つめていた。


「……本当に。」


「あなたは、あの方とは違います。」


その言葉には、どこか安心したような温かさが込められていた。


アステリア公国を巡る戦いは、新たな局面へと突入する。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました!

少しでも楽しんでいただけたなら、感想やフォロー、SNSでの応援など大歓迎です!

姫様も、たぶん紅茶片手に「ありがとうございますわ♪」と微笑んでくれるはずです。


それでは、次の物語でまたお会いしましょう。

姫様、御覚悟を──

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ