↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
45/63

守り続けた騎士

城門の前。


山風だけが静かに吹いていた。


「……姫君。」


城壁の上に立つ老騎士は、震える声でもう一度そう呼んだ。


その瞳には涙が浮かんでいる。


レシティアは困ったように首を傾げた。


「ごめんなさい。」


「私たち、どこかでお会いしたかしら?」


老騎士はしばらく黙っていた。


やがて、小さく首を横へ振る。


「……いえ。」


「姫君は私をご存じないでしょう。」


「ですが。」


「私は、あなた様を知っております。」


騎士団が静かに警戒を強める。


諜報騎士は老人の表情を観察していた。


嘘はない。


敵意もない。


あるのは――


懐かしさだけだった。


ギギギギ……


巨大な城門がゆっくりと開き始める。


兵士たちが驚く。


「隊長!」


「本当に開けるのですか!?」


老騎士は静かに答えた。


「構わん。」


「この方だけは通せ。」


「ですが!」


「責任は私が取る。」


重い音を立てながら、城門は完全に開いた。


その先には、美しい白い街並みが広がっていた。


高い塔。


澄んだ水路。


石造りの家々。


だが、その美しさとは裏腹に、人の姿はほとんどない。


窓は閉ざされ。


通りには荷物が散乱し。


どこか、街全体が息を潜めているようだった。


「……静かね。」


レシティアが呟く。


老騎士は俯いた。


「皆、怯えております。」


「夜になると……奴らが来るのです。」



一行は城内へ案内された。


兵士たちはレシティアたちを警戒していたが、老騎士の命令には逆らわない。


やがて、城の応接室へ通される。


フィオナは寝台へ運ばれ、侍医たちが慌ただしく診察を始めていた。


しかし。


「……駄目です。」


老医師が肩を落とす。


「この呪いは我々には解けません。」


レシティアが寝台のそばへ歩み寄る。


苦しそうに眠るフィオナ。


その手は氷のように冷たい。


「いつからなの?」


老騎士が答えた。


「三か月前です。」


「古代遺跡の調査隊が戻ってきた日から。」


ルミエルとゼフィールの表情が変わる。


「古代遺跡……。」


嫌な予感しかしなかった。


その時。


部屋の扉が勢いよく開いた。


「隊長!」


若い兵士が飛び込んでくる。


「北門です!」


「また奴らが現れました!」


部屋の空気が一変した。


老騎士は立ち上がる。


「数は!」


「五十ほど!」


「昨日より増えています!」


女性騎士が窓から外を見る。


遠くの丘。


黒い外套を纏った集団がゆっくりと街へ近づいてきていた。


その中央には、大きな荷車。


何か巨大な物が布で覆われている。


諜報騎士が目を細めた。


「……攻城兵器ではありません。」


「もっと嫌なものです。」


レシティアも静かにその荷車を見る。


そして、小さく呟いた。


「封印ね。」


ゼフィールが驚いて振り返る。


「見ただけで分かるのか?」


「ええ。」


レシティアは真剣な表情で頷く。


「あれは兵器じゃない。」


「中に、生きている何かがいる。」


その一言で、部屋の空気が凍った。


老騎士はゆっくりと剣を取る。


「皆、持ち場へ!」


兵士たちが一斉に動き出す。


その時だった。


レシティアが老騎士を呼び止める。


「少しだけ教えて。」


老騎士は振り返る。


「どうして私を『戻ってきた』と言ったの?」


老人は静かに微笑んだ。


「……その話は。」


「この国を守り切ることができましたら、お話しいたします。」


「ですが、一つだけ。」


老騎士は深く頭を下げた。


「あなたのお顔は。」


「私どもの王家に、代々伝わる一枚の肖像画と、寸分違わぬお姿なのです。」


騎士団全員が息を呑んだ。


レシティアも驚きを隠せない。


「肖像画……?」


老騎士は静かに頷く。


「千年以上前。」


「この国を救った、『契約の姫』の肖像画です。」


部屋に、重い沈黙が落ちる。


その頃、城壁の外では黒い外套の集団が立ち止まり、荷車を覆う布をゆっくりと取り払っていた。


姿を現したのは、巨大な水晶。


その内部には、まるで眠るように目を閉じた一体の古代生物が封じられていた。


敵の狙いは、この古代生物を解き放ち、アステリア公国を完全に滅ぼすこと。


そして、その混乱の中で――


レシティアを生け捕りにすることだった。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました!

少しでも楽しんでいただけたなら、感想やフォロー、SNSでの応援など大歓迎です!

姫様も、たぶん紅茶片手に「ありがとうございますわ♪」と微笑んでくれるはずです。


それでは、次の物語でまたお会いしましょう。

姫様、御覚悟を──

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。