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迎えに来た少女

街道に静寂が落ちた。


馬車の中。


豪華なドレスを纏った少女は、レシティアをまっすぐ見つめている。


「……私を知っているの?」


レシティアが穏やかに尋ねる。


少女は小さく頷いた。


「はい。」


「ずっと、お会いしたかったんです。」


その声には敵意がない。


むしろ、どこか安心したような響きだった。


だが。


騎士団は警戒を解かない。


剣士騎士が一歩前へ出る。


「姫様。」


「まだ近付かれませんよう。」


「ええ。」


レシティアも素直に頷く。


少女はその様子を見て、少しだけ笑った。


「やっぱり。」


「噂どおりですね。」


「皆さん、本当にレシティアお姉様を大切にしている。」


女性騎士が眉をひそめる。


「……お姉様?」


その呼び方に違和感があった。


少女は王族の礼で頭を下げる。


「申し遅れました。」


「私は、フィオナ・アステリア。」


「アステリア公国第一王女です。」


騎士団が顔を見合わせる。


アステリア公国。


聞いたことがない。


少なくとも王国と正式な国交はないはずだった。


諜報騎士が静かに口を開く。


「その国は、どこにありますか。」


フィオナは少し困ったように笑う。


「知らなくて当然です。」


「私たちは、表舞台へ姿を見せませんから。」


「……隠された国?」


ルミエルが驚いた表情になる。


ゼフィールも真顔になった。


「まさか。」


「本当に存在していたのか。」


レシティアが二人を見る。


「知っているの?」


ゼフィールがゆっくり頷く。


「伝承だけ。」


「神代の技術を管理する王族が住む国。」


「世界から姿を消したはずの国だ。」


フィオナは静かに肯定した。


「はい。」


「私たちは千年以上、姿を隠してきました。」


その言葉に、セラフィナは息を呑む。


また神代。


最近、その言葉ばかり聞いている。


その時だった。


フィオナの身体がぐらりと揺れた。


「……っ。」


力が抜ける。


レシティアは反射的に駆け寄った。


「大丈夫?」


少女の額へ手を当てる。


熱い。


かなり高熱だった。


女性騎士がすぐに治癒魔法を使おうとする。


しかし。


淡い光が触れた瞬間。


弾かれた。


「……治療できない?」


女性騎士が驚く。


ルミエルが青ざめた。


「これは……。」


「呪いです。」


騎士団の空気が変わる。


フィオナは苦しそうに息をする。


「城を……。」


「逃げてきました。」


「みんな……。」


「まだ……。」


そこまで言って意識を失う。


レシティアは少女を支える。


その表情から笑みが消えていた。


静かな怒り。


剣士騎士は、その顔を見て確信する。


(姫様が本気で怒っている。)



諜報騎士が馬車を調べていた。


「姫様。」


「こちらを。」


荷台の奥から、一枚の地図が見つかる。


そこには山脈の奥深くに、小さな印が描かれていた。


『アステリア』


その文字の上には、大きな赤い印。


そして。


『制圧完了』


誰かが書き込んだものだった。


剣士騎士が低く呟く。


「遅かったか……。」


レシティアは地図を見つめる。


「まだ。」


静かな声だった。


「助かる人はいる。」


全員が姫を見る。


その瞳には迷いがなかった。


「行きましょう。」


「アステリア公国へ。」


女性騎士が少し驚く。


「敵地かもしれません。」


「ええ。」


「罠の可能性もあります。」


「それでも。」


レシティアは眠るフィオナを見つめた。


「助けを求めて来た子を放ってはおけないもの。」


騎士団は顔を見合わせる。


そして。


誰からともなく笑みがこぼれた。


「そう仰ると思っておりました。」


剣士騎士が剣を納める。


諜報騎士は地図を懐へしまう。


女性騎士はフィオナを優しく抱き上げた。


ルミエルは静かに頭を下げる。


ゼフィールは肩をすくめながら笑う。


「やれやれ。」


「また大きな事件に巻き込まれるな。」


レシティアは首を傾げる。


「巻き込まれる?」


「違うわ。」


「助けに行くだけよ。」


その言葉を聞いた騎士団は、心の中で同じことを思った。


(姫様は毎回そう仰る。)


(そして、その『助ける』が世界規模になるのです。)


こうして一行は、地図にもほとんど記されない幻の国家――アステリア公国へ向かうことになる。


しかし、その国にはすでに、古代研究勢力の旗が翻っていることを、彼らはまだ知らなかった。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました!

少しでも楽しんでいただけたなら、感想やフォロー、SNSでの応援など大歓迎です!

姫様も、たぶん紅茶片手に「ありがとうございますわ♪」と微笑んでくれるはずです。


それでは、次の物語でまたお会いしましょう。

姫様、御覚悟を──

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