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忠義の騎士は、姫に救われた

王宮正門。


燃え盛る松明の灯りが、石畳を赤く照らしていた。


その中央。


女性騎士が、一人立っている。


剣を抜き。


静かに。


目の前には十数人の武装集団。


かつて奴隷商をしていた者たち。


そして。


その中心には、太った男が立っていた。


下品な笑み。


濁った目。


女性騎士を見るなり笑う。


「久しぶりじゃねぇか」


沈黙。


「元気だったか? 商品番号七十八」


空気が凍った。


周囲の騎士たちですら眉をひそめる。


だが。


女性騎士は動かない。


ただ。


静かに男を見ている。


男はさらに笑った。


「王族ごっこは楽しいか?」


「綺麗な服着てよぉ」


「まるで人間みてぇだ」


一瞬。


女性騎士の剣が震えた。


怒り。


憎しみ。


忘れたはずの感情。


男は気付いたのだろう。


嬉しそうに続ける。


「その顔だ」


「昔と同じだな」


そして。


過去が蘇る。


薄暗い地下闘技場。


歓声。


怒号。


血。


鉄の匂い。


少女は鎖に繋がれていた。


名前はない。


ただの商品。


戦わせるための道具。


毎日誰かと殺し合う。


勝てば生きる。


負ければ死ぬ。


それだけ。


希望などない。


ある日。


奴隷商たちが騒いでいた。


「王族が来るらしいぞ」


「金づるだ」


「高く売りつけろ」


少女は興味がなかった。


誰が来ようと変わらない。


どうせ同じ。


そう思っていた。


だが。


現れた少女は違った。


紫色の髪。


まだ幼い王女。


レシティアだった。


闘技場を見渡し。


眉をひそめる。


「何をしているの?」


奴隷商が笑う。


「剣闘士ですな」


「見世物ですよ」


レシティアはしばらく黙り。


そして。


檻の中の少女を見た。


傷だらけ。


痩せ細り。


それでも睨み返してくる。


普通なら目を逸らす。


だが。


レシティアは違った。


「出しなさい」


奴隷商が固まる。


「は?」


「その人を出しなさい」


「いやいやいや」


奴隷商は慌てる。


「商品ですよ?」


「高価な」


レシティアは首を傾げた。


「だから何?」


奴隷商が言葉を失う。


そして。


王女は続けた。


「人でしょう?」


その瞬間。


少女は初めて理解できなかった。


何を言っているのか。


自分は商品だ。


そう教えられた。


そう扱われた。


なのに。


この少女は違う。


「解放しなさい」


「ですが!」


「解放しなさい」


王女の声が少しだけ低くなる。


周囲の大人たちが黙る。


幼いのに。


不思議な圧があった。


そして。


数時間後。


少女は檻の外へ出された。


信じられなかった。


自由。


そんなもの存在しないと思っていた。


レシティアが近づいてくる。


そして。


笑った。


「名前は?」


少女は答えられない。


ないからだ。


すると。


レシティアは少し困った顔をした。


「じゃあ、一緒に考えましょう」


その言葉で。


少女は泣いた。


生まれて初めて。


誰かの前で。


現在。


正門前。


男が笑う。


「思い出したか?」


女性騎士は静かに剣を握る。


「覚えています」


「だろうなぁ」


男が剣を抜く。


「じゃあ帰ってこいよ」


「お前はそっち側の人間じゃねぇ」


その瞬間。


女性騎士の目から迷いが消えた。


「違います」


男が笑う。


「何がだ?」


女性騎士は答える。


「私は最初から人間でした」


沈黙。


男の笑みが消える。


「姫様が」


剣を構える。


「思い出させてくださっただけです」


次の瞬間。


地面が砕けた。


女性騎士が消える。


男の目が見開かれる。


速い。


見えない。


気づいた時には。


剣が喉元へ突きつけられていた。


完全敗北。


男が震える。


女性騎士は静かに見下ろした。


「あなたたちは間違えました」


「人を物にした」


「だから滅びた」


その声に怒りはなかった。


ただ事実を告げているだけだった。


そして。


後ろから聞き慣れた声がする。


「怪我はない?」


女性騎士が振り返る。


そこにはレシティア。


いつものように。


心配そうな顔。


「はい」


女性騎士は即答する。


だが。


次の瞬間。


レシティアは小さく眉をひそめた。


「嘘」


女性騎士が固まる。


腕から血が流れていた。


自分でも気づいていない浅い傷。


姫は小さくため息を吐く。


「もう」


昔と同じだった。


そして。


女性騎士は思う。


やはり。


この人には敵わないと。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました!

少しでも楽しんでいただけたなら、感想やフォロー、SNSでの応援など大歓迎です!

姫様も、たぶん紅茶片手に「ありがとうございますわ♪」と微笑んでくれるはずです。


それでは、次の物語でまたお会いしましょう。

姫様、御覚悟を──

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