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姫様は、自分の騎士団を知らない

襲撃事件から二日後。


王宮は、久しぶりに平穏を取り戻していた。


捕らえた襲撃者たちは牢へ。


王都の被害も軽微。


騎士団の働きによって、ほぼ何事もなく終わった。


――騎士団の働きによって。


レシティアは書類を閉じた。


そして。


静かに首を傾げる。


「……おかしいわね」


侍女が顔を上げる。


「何がでしょう?」


「私の騎士たち」


嫌な予感がした。


侍女は察する。


姫様が何かに気づいた。


「全員、昔の知り合いに襲われていたのよね?」


「そうですね」


「しかも皆、妙に慣れていた」


沈黙。


侍女は視線を逸らした。


レシティアの目が細くなる。


「何か隠しているわね」


鋭い。


こういう時だけ異様に鋭い。


同時刻。


騎士団本部。


騎士たちは珍しく困っていた。


「姫様が気付きました」


「気付きましたね」


「気付きましたな」


空気が重い。


剣士騎士が腕を組む。


「どうする」


諜報騎士が即答する。


「誤魔化します」


「無理では?」


「無理ですね」


全員頷く。


姫はこういう時だけしつこい。


数時間後。


王宮庭園。


レシティアは騎士たちを集めていた。


全員正座。


なぜか尋問みたいになっている。


「さて」


姫が紅茶を飲む。


騎士たちは緊張している。


戦場より緊張している。


「皆、昔何をしていたの?」


沈黙。


誰も答えない。


すると。


レシティアが少しだけ不満そうな顔をした。


「教えてくれないの?」


その瞬間。


騎士たちが揺らぐ。


強い。


姫様が強い。


精神攻撃が。


女性騎士が危うく陥落しかけた。


諜報騎士が横から止める。


「耐えてください」


「ですが姫様が……」


「耐えてください」


戦場で培われた精神力が試されていた。


結局。


最初に折れたのは剣士騎士だった。


「昔は敵国の剣士でした」


レシティアが瞬きをする。


「そうなの?」


「はい」


「なるほど」


普通に受け入れた。


剣士騎士が少し困る。


もっと驚かれると思った。


「でも今は私の騎士でしょう?」


レシティアが言う。


「それで十分よ」


剣士騎士が黙る。


弱い。


この人のこういうところに弱い。


続いて。


諜報騎士。


「昔は暗殺者でした」


「そう」


「……それだけですか?」


珍しく動揺する。


「今は違うのでしょう?」


「はい」


「ならいいわ」


即終了。


諜報騎士が沈黙する。


なんだろう。


少し泣きそうだった。


女性騎士も話す。


奴隷だったこと。


剣闘士だったこと。


レシティアは静かに聞いていた。


そして。


最後まで聞いた後。


首を傾げる。


「……そんなに大変だったの?」


全員が固まった。


「姫様」


女性騎士が言う。


「覚えておられませんか」


「何を?」


「私を解放した時です」


レシティアは考える。


しばらく考える。


そして。


「ああ」


思い出した。


「檻に入れられていた子ね」


女性騎士が固まる。


レシティアは続ける。


「ひどいことをする人たちだったから怒った記憶があるわ」


それだけだった。


本当に。


それだけだった。


女性騎士が頭を抱える。


人生が変わった出来事なのだが。


当の本人は、


「悪い人を怒った」


くらいの認識だった。


やがて。


騎士たちは理解する。


レシティアは変わっていない。


昔からずっと同じだ。


だから救われた。


だから仕える。


だから守る。


そして――


本人だけが気づいていない。


「皆」


レシティアが微笑む。


騎士たちが顔を上げる。


「今ここにいてくれて良かったわ」


静寂。


その一言だけで十分だった。


剣士騎士が目を閉じる。


諜報騎士が小さく息を吐く。


女性騎士が微笑む。


本当に。


この人はずるい。


だが。


その頃。


王都外。


森の中。


敗北した襲撃者たちのさらに上。


黒い外套を纏った男たちが集まっていた。


「失敗か」


「当然だ」


「騎士団だけならまだしも」


沈黙。


そして。


一人が言った。


「問題は姫だ」


空気が重くなる。


「あれは危険だ」


「騎士団が集まる理由になる」


「王になる気がなくてもな」


男たちは静かに頷く。


そして。


次の計画を始める。


騎士団の因縁では終わらない。


今度は――


姫そのものを狙う者たちが動き始める。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました!

少しでも楽しんでいただけたなら、感想やフォロー、SNSでの応援など大歓迎です!

姫様も、たぶん紅茶片手に「ありがとうございますわ♪」と微笑んでくれるはずです。


それでは、次の物語でまたお会いしましょう。

姫様、御覚悟を──

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