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神代最後の王2

竜王が動いた瞬間。


空間そのものが、悲鳴を上げた。


轟音。


扉が砕け飛ぶ。


研究官が、絶叫した。


「ま、待――」


最後まで言えなかった。


巨大な黒い爪が、一瞬でその身体を呑み込む。


潰れる。


まるで、小石のように。


血すら、残らない。


静寂。


猫の王女の顔が、青ざめる。


(……違う)


今までの古代種とは。


存在そのものが違う。


これは、生き物ではない。


“災害”だ。


竜王が、ゆっくりと姿を現す。


巨大。


あまりにも巨大。


頭部だけで砦ほどある。


黒い鱗は光を飲み込み、その隙間から赤い魔力が脈動している。


そして。


その瞳。


古い。


あまりにも古すぎる。


人の時代など、塵ほどにも感じていない目。


レシティアは、静かにそれを見上げた。


(……なるほど)


理解する。


神代最後の王。


それは誇張ではない。


もし完全に外へ出れば。


国が滅ぶ。


「姫様」


騎士の一人が、低く言う。


その声には、わずかな緊張があった。


初めてだった。


レシティアは、小さく頷く。


「ええ」


そして。


静かに告げる。


「全力でいくわよ」


その瞬間。


騎士たちの魔力が、さらに跳ね上がった。


空間が軋む。


王女が、息を呑む。


(まだ上がるの!?)


今まででも十分おかしかった。


なのに。


さらに先がある。


竜王が、咆哮した。


音ではない。


衝撃。


地下空間が、一瞬で崩壊を始める。


岩盤が砕け。


天井が落ちる。


だが。


騎士の一人が前へ出た。


剣を構える。


真正面から。


竜王の咆哮へ。


「――っ!!」


振るう。


斬撃。


目に見えるほど濃密な魔力が、空間を切り裂く。


咆哮が、割れた。


王女の目が、見開かれる。


(斬った……!?)


咆哮を。


空間ごと。


だが。


竜王は止まらない。


巨大な腕が振り下ろされる。


山が落ちてくるような質量。


その瞬間。


騎士たちが、一斉に動いた。


受ける。


逸らす。


止める。


連携。


完全な連携。


それでも――


押される。


地面が沈む。


空間が悲鳴を上げる。


「……っ!」


王女が歯を食いしばる。


強すぎる。


騎士団ですら、正面からは止めきれない。


だが。


その中心で。


レシティアだけは、静かだった。


竜王を見ている。


観察している。


まるで。


“攻略法”を探しているように。


(……見えた)


ほんの一瞬。


竜王の胸元。


黒い杭。


今までで最大。


最も禍々しい杭。


それが――脈打っている。


(あれが核)


理解した瞬間。


レシティアが、踏み込んだ。


爆音。


地面が吹き飛ぶ。


王女の視界から、姫が消える。


速い。


今までで、一番。


竜王が、反応する。


巨大な瞳が、姫を捉える。


そして――


笑った。


「……え?」


王女が、凍りつく。


竜王は、知性を持っていた。


次の瞬間。


黒炎。


竜王の口から放たれた炎が、世界を埋め尽くす。


熱ではない。


存在を消す炎。


だが。


姫は止まらない。


黒炎の中を、突き抜ける。


騎士たちが、その道を作っていた。


一人が炎を割り。


一人が魔力を散らし。


一人が空間を固定する。


完全な補助。


絶対の信頼。


レシティアは、その中心を一直線に駆ける。


竜王の胸元へ。


黒い杭へ。


だが。


竜王の瞳が、細められる。


その瞬間。


姫の身体が、止まった。


「……っ!」


空間が、固まっている。


いや。


“重力”そのものを操作されている。


王女が叫ぶ。


「レシティア!!」


初めてだった。


姫の動きが、完全に止められた。


竜王が、ゆっくりと口を開く。


黒炎が集まる。


終わる。


誰もが、そう思った。


だが――


「誰を」


静かな声。


騎士の一人だった。


「止めているつもりですか」


次の瞬間。


騎士団全員の魔力が、爆発した。


世界が、揺れる。


重力が、砕ける。


王女が、息を呑む。


(なに、これ……)


騎士たちが。


空間そのものを、押し返している。


そして。


その中心で。


レシティアが、微笑んだ。


「ありがとう」


次の瞬間。


姫が、竜王へ届いた。


黒い杭へ、手を伸ばす。


竜王の瞳が、初めて揺れる。


理解したのだ。


この小さな存在が。


自分へ届くと。


レシティアは、静かに杭へ触れた。


そして――


「もう、眠りなさい」


その瞬間。


世界が、白く染まった。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました!

少しでも楽しんでいただけたなら、感想やフォロー、SNSでの応援など大歓迎です!

姫様も、たぶん紅茶片手に「ありがとうございますわ♪」と微笑んでくれるはずです。


それでは、次の物語でまたお会いしましょう。

姫様、御覚悟を──

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