↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神様は、明日を知らない』 ――全知全能の神が、人間になった理由――  作者: 亀


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

258/290

第258章 完了したもの

アポロンは、携帯に届いた通知をもう一度開いた。


『連絡先情報の再確認について、処理状態が更新されました』


『確認処理:完了』


それだけだった。


調査結果へのリンクはない。


回答文書もない。


受付番号を開いても、表示されるのは同じ状態だった。


アポロンは問い合わせ画面から、詳細情報を確認した。


調査状態は『調査中』のままだった。


彼は二つの画面を見比べた。


一方には、確認処理が完了したと表示されている。


もう一方には、調査中と表示されている。


どちらかが間違っていると、今すぐ決めることはできなかった。


確認処理と調査が別の工程なら、二つの表示は両立する。


しかし、何を確認したのかが分からなければ、その違いも判断できない。


アポロンは、通知の画面を保存した。


     *


翌朝、森川は山本から報告を受けた。


五〇二号室の記録について、新しい回答は届いていなかった。


一方、別の住民からの照会では、画面上の表示が更新されていた。


以前は『回答待ち』だった項目が、『対応完了』に変わっている。


しかし、実際の回答文書は届いていなかった。


山本は、担当部署に確認していた。


「回答を送付した記録はありますか」


「現時点では、送付記録を確認できていません」


「では、対応完了という表示は、何をもって更新されたのでしょうか」


「その点は、システム担当に確認しています」


森川は報告を聞いた。


「表示が変わったことと、回答が送られたことは分けて記録しよう。回答が届いていないという本人の申告も、消さずに残しておいてくれ」


山本は頷いた。


画面の表示は更新された。


しかし、本人が求めていた回答は届いていない。


その事実を、別々に記録することになった。


     *


午後、高瀬は旧管理区分の運用記録について、追加の回答を受け取った。


参照先の設定後に行う確認処理は、対象記録を開き、参照先の登録状態を確認するためのものだったという。


記録の内容そのものを確認したかどうかは、別の作業として扱われていた。


高瀬は、森川に説明した。


「これで、以前の手順書にある『確認』の意味が分かりました。少なくとも、その手順では参照先の登録状態を確認することになっています」


「対象記録の内容を確認する作業とは違うのか」


「はい。内容の確認は別工程でした」


森川は、資料を見直した。


「五〇二号室の記録について、参照先の確認が完了していたとしても、相談記録そのものを確認した証拠にはならないわけだな」


「そのとおりです」


「では、そこを明確にしておこう」


高瀬は調査記録を更新した。


参照先の設定後に行う確認処理は、登録状態の確認を目的としていた。


個別の相談記録を確認したかどうかは、別途確認が必要だった。


これまで曖昧だった『確認』という言葉の意味が、一つ明らかになった。


ただし、五〇二号室の記録が、実際にどこへ保管されているのかは、まだ分からないままだった。


     *


仕事の帰り、アポロンは携帯の問い合わせ窓口に電話をかけた。


受付番号を伝え、前日に届いた通知について尋ねた。


担当者は、内容を確認した。


「こちらでは、確認処理が完了したという状態までは確認できます。ただ、調査結果については、まだ回答できる状態になっておりません」


「では、確認処理というのは、何を確認したのでしょうか」


担当者は少し間を置いた。


「申し訳ありません。現在の窓口では、その詳細までは確認できません」


「調査自体は、まだ続いているのですか」


「はい。調査中という表示になっております」


アポロンは、二つの表示が別の工程を示している可能性を考えた。


「確認処理が完了したことと、調査が終わったことは、別なのですね」


「はい。現時点では、そのようにご案内しております」


「分かりました」


電話を切ると、アポロンは手帳を開いた。


『確認処理:完了』


『調査:継続中』


その二つを書き分けた。


何を確認したのかは、まだ分からない。


しかし、調査そのものが終わっていないことは確認できた。


     *


家に帰ると、美咲が食卓で携帯を操作していた。


「昨日の連絡、ちゃんと残っているよ」


美咲は、アポロンに画面を見せた。


前日に送ったメッセージは、送信履歴にも残っていた。


「今日は消えていない」


「そうだな」


「でも、前に消えた理由は、まだ分からないんだよね」


「うん」


美咲は画面を閉じた。


「じゃあ、今は、消えていないことだけ確認できたんだね」


アポロンは頷いた。


「そういうことだ」


二人は夕食の準備を始めた。


美咲が野菜を切り、アポロンが鍋に水を入れる。


しばらくして、鍋が温まり始めた。


アポロンは火加減を確認した。


何も問題は起きていなかった。


だからといって、昨日起きたことの理由が分かったわけではない。


彼は、鍋の蓋を少しずらした。


     *


その夜、森川は一日の調査記録を整理していた。


新たに分かったことは、三つあった。


参照先の確認処理と、記録内容の確認は別の工程であること。


画面上の対応完了という表示だけでは、回答が本人に届いたことを確認できないこと。


そして、五〇二号室の相談記録については、現在も保管先が特定できていないこと。


森川は、最後の項目を確認した。


調査は続いている。


分かったことが増えるたびに、以前は一つに見えていた問題が、いくつかの異なる問題に分かれていく。


それぞれの原因は、まだ明らかになっていない。


森川は資料を閉じた。


その直後、端末に新しい照会結果が届いた。


五〇二号室の記録について、参照先の設定に使われた番号と、別の管理区分で保管されている番号が一致したという。


森川は画面を開いた。


一致した番号の横には、短い表示が付いていた。


『対象記録:照会対象外』


森川は、その表示を見つめた。


番号は一致している。


しかし、対象記録は照会対象から外されている。


なぜ、その番号が対象外になっているのか。


その理由は、まだ表示されていなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。