↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神様は、明日を知らない』 ――全知全能の神が、人間になった理由――  作者: 亀


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

224/290

第224章 変換されなかった番号

翌日、森川のもとに、旧形式の管理番号と統合後の番号を対応させた一覧が届いた。


一覧には、旧端末の管理記録や移管処理に使われていた番号が記載されていた。


森川は、高瀬と一緒に、これまで調べてきた三つの番号を照合した。


旧端末の管理番号。


移管時の受付番号。


統合後に付与された仮番号。


三つの番号は、一覧の中で一つの管理対象に結びついていた。


「ここまでは一致していますね」


高瀬が言った。


「はい。番号の変換自体は確認できました」


森川は、一覧の下部にある注記を読んだ。


旧形式から新形式への変換が完了していても、参照先の記録が別の管理部署に移されていた場合、一覧には参照先の番号が表示されないことがあった。


その場合、別途保存されている参照対応表を確認する必要がある。


森川は、すぐに追加照会を作成した。


ところが、今回の回答には、もう一つ気になる点があった。


旧端末の管理番号に対応する記録のうち、一件だけ、変換後の番号が通常の形式と異なっていた。


番号の先頭に、旧管理部署を示す記号が残されていたのである。


その記録の備考欄には、短くこう書かれていた。


「参照先未確定」


森川は画面を拡大した。


「この記録は、統合処理そのものが未完了だったということでしょうか」


高瀬は首を横に振った。


「それは、まだ分かりません。管理番号の変換は済んでいても、参照先だけが確定していない場合があります」


「では、何が未確定だったのかを確認する必要がありますね」


「はい。これだけで、媒体の移管が失敗したとは言えません」


森川は、その記録の作成日と更新日を確認した。


作成日は、旧端末の媒体が統合管理対象に移された時期と一致していた。


しかし、更新日は空欄だった。


参照先が後日確定されたのか。


それとも、未確定のまま残されたのか。


一覧からは判断できなかった。


森川は、該当する記録の更新履歴と、参照先を確定するための手続き記録を照会した。


これまでの資料で確認できたのは、管理対象が移管処理されたことまでだった。


その後、どこに保管され、どのような確認を受けたのか。


その部分は、まだつながっていなかった。


*


午後、閲覧制限の再審査について、担当部署から連絡があった。


今回の再審査では、制限対象となっている文書の内容を開示するかどうかとは別に、制限を設定した手続きについて、説明可能な範囲を整理していた。


その結果、いくつかの事実については、文書の内容を開示しなくても説明できることが確認された。


一方、制限設定の個別事情や、当時の判断に使われた具体的な情報については、引き続き確認が必要とされた。


森川は、回答を読み終えてから、高瀬に言った。


「少なくとも、説明できることと、まだ説明できないことを分けられましたね」


「はい。ただし、今回の説明対象が、五〇二号室の相手に関係する記録だと確認されたわけではありません」


「分かっています」


森川は、回答を保存した。


五〇二号室の相手が求めていたのは、自分に関係する事実だった。


そのためには、まず、どの記録がその人に関係するのかを確認しなければならない。


閲覧制限の手続きについて説明できるようになったことは、調査上の前進だった。


しかし、それを相手自身の過去についての説明として伝えることはできなかった。


森川は、山本に連絡し、現時点では本人に関係する記録の特定に至っていないことを伝えてもらうよう頼んだ。


調査が進んでいるという理由だけで、関係のない情報を本人の過去に結びつけることは避けたかった。


*


その日の夕方、アポロンは店で、注文を間違えた。


客が頼んだのは、定食のご飯を少なめにしたものだった。


しかし、アポロンが運んだ皿には、通常の量のご飯が盛られていた。


「すみません。ご飯、少なめでお願いしたんですけど」


客が申し訳なさそうに言った。


「失礼しました。すぐに交換します」


アポロンは皿を下げ、厨房へ戻った。


健一が事情を聞き、盛り直したご飯を用意した。


「注文票を見落としたのか?」


「はい」


「次から、配膳前にもう一度確認しよう」


「分かった」


健一は、間違えたご飯をどうするか考えたあと、スタッフの食事に回した。


「捨てる必要はないからな。ただし、客に出したものを戻して使うわけにはいかない」


「了解した」


アポロンは、注文票の端にある小さな記号を見直した。


厨房では、注文を受けた時点で情報が記録されていた。


それでも、その情報が配膳まで正しく引き継がれるとは限らない。


記録があることと、記録が正しく使われることは、別だった。


仕事が落ち着いたあと、アポロンは配膳前に注文票を確認する手順を、自分の中で一つ増やした。


大きな問題ではなかった。


客は食事を続け、店の営業にも支障はなかった。


それでも、注文した人の希望が、途中で別の形に変わってしまったことは確かだった。


*


夜、森川は追加照会の控えを整理していた。


今回の調査では、番号の対応関係が確認できた。


しかし、参照先が未確定の記録が一件残っていた。


その記録の更新履歴と、参照先を確定するための手続き記録は、まだ見つかっていない。


別冊管理の記録も、所在を確認できていなかった。


本人の意思確認に関する記録についても、旧形式の番号を使った検索結果を待っている段階だった。


森川は、調査項目を一つずつ確認し、未確認のものに印を付けた。


以前よりも、調べるべき場所は具体的になっている。


ただし、具体的になったことは、答えが近いことを意味するとは限らなかった。


それでも、どこまで確認できていて、どこから先が分からないのか。


その境界は、以前より明確になっていた。


森川は、翌日の照会予定を確認してから、端末を閉じた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。