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ハルちゃんは、俺。  作者: 家宝ダンゴ


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8/11

俺、家族写真を撮る。

晴天の朝。

青々とした空が一面に広がる。


春輝(はるき)は今日も柔らかいタオルの上で丸くなっていた。

バタバタとどこか忙しない空気に顔を上げて見回した。


『なんか、今日は騒がしいな』


朝から珍しくスーツを着込むパパ。

ママはベージュのジャケットにスカート。


『おっ、ママいつもより華やかだな』


ピンクのワンピースの陽菜(ひな)がやってきたが、やけに大人しい。

俯いてランドセルを見つめていた。


『そうか!今日が入学式か!』


春輝は少し考えた後、サークルをカリカリと爪で引っ掻き音を立てた。


『陽菜!大丈夫だぞ!』


陽菜は気付かない。


『……仕方ねえな』


春輝はサークルの前で後ろ足をぴょんぴょんとジャンプして見せた。

陽菜と目が合う。


「うわあ!ハルちゃんがジャンプしてる!」


『結構しんどいなコレ』


春輝は息を上げながら陽菜が笑顔になるまで飛び続けた。


『陽菜!大丈夫だからな!』


「ハルちゃん、ベロ出てる〜!」


陽菜はスマホを取り出すと何度も連写する。

春輝はしばらく舌を出した後、水を飲んで一息ついた。


「そろそろ時間だよ」


「ハルちゃん、いってきます!」


『おう!行ってこい!』


パタン。

扉が閉まる音がやけに大きく聞こえた。



耳が痛くなるような静けさ。

春輝が犬になってから初めてのお留守番だった。


『……静かだな』


『おーい!』


返事はない。


『なんか……変な感じだな』


耳を下げてそっと呟いた。

柔らかいタオルに丸くなり、目を閉じた。


『……静かすぎて寝れねえ!』


春輝はサークルのカギに手を伸ばす。

下から押し上げる。

が、あと少し開かない。


『まだダメか……なら!』


ダメ元でタックルしたらポロッとカギが落ちた。


『ラッキー!』


春輝はリビングに出ることに成功した。

テクテクと歩き回る。


窓の外を覗く。

散歩の途中の犬が何匹か集まっていた。


一頭の目立つ柴犬に春輝の目は細くなった。

茶色い柴犬。

ピンクのTシャツ。

何かを喋っているのか口が動いている。


『アイツ……ご近所さんかよ!』


そう言いながらも顔見知りがいて少し嬉しいのか、春樹の尻尾はふりふりと大きく動いた。


『散歩か……悪くねえな』


外を見ながらごろりと横になる。


『陽菜、遅えな……』


春輝の瞼はゆっくりと落ちて行った。



玄関の扉の開く音。

春輝はハッと目が覚めた。


『せっかくだし、迎えてやるか』


玄関までテクテク歩く。


「ただいま〜!あれ、ハルちゃん?」


『おかえり!陽菜!』


春輝はおすわりをしてふわふわの胸を張った。


「ママ〜!ハルちゃん来てくれたよ!」


「あら?カギをかけ忘れたのかしら」


首を傾げるママの肩をそっと叩きパパがカメラを見せた。


「ちょうど良いね、外で写真撮ろうか」


「陽菜がハルちゃん抱っこしていい?」


「良いわよ」


ママとパパが陽菜を見て目を細めて笑う。

春輝は陽菜の腕に抱かれて家の外に出た。


『うわっ良い天気だな』


外は雲一つない真っ青な空。

爽やかな風が春輝のふわふわの毛を揺らす。


パパが三脚にカメラをセットする。


「ハルちゃん、今日ね、いっぱい緊張したの」


『だろうな』


「でもね……ハルちゃんが頑張れしてくれたから、陽菜、頑張れたよ」


『……そうか、やったな!陽菜!』


陽菜は春輝のふわふわに顔をつけて嬉しそうに笑った。


「それじゃあ、撮るよ!」


パパの声。

急足でママの隣に並ぶ。


爽やかな風が吹いた。

陽菜の長い髪を撫でるように流れていく。


春輝の鼻にコショコショと髪が当たる。


『ぶぇぇっくしゅっっ!』


カシャ。


「撮れたかな?」


カメラに駆け寄るパパ。


『ちょ、もう一回撮れる?くしゃみ出ちゃってさ』


「うーん。ハルちゃんが変な顔になっちゃったなあ」


陽菜もパパのカメラを覗き込む。

春輝の目と口が半開きだった。


「ハルちゃんかわいい!」


「じゃあこれでいいか」


『良くねえだろ!撮り直せ!』


転生後、初めての家族写真。

春輝以外はみんな良い笑顔だった。


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