俺、ピンクになる。
青い空の下。
ツインテールの女の子とピンクのワンピースを着た白いポメラニアンはテクテク歩く。
「ハルちゃん、可愛いね」
『陽菜!俺はな、元気玉を取っても男のままだぞ!』
ピンク色のフリルは揺れる。
『ちょっと待て!この道……』
『まさか公園に行くのか?この格好で!?』
春輝は全力で立ち止まった。
「ハルちゃん、どうしたの?」
陽菜は眉を寄せ、心配そうに横にしゃがんだ。
『陽菜!この格好じゃムリだ!』
『着替えてからもう一度……』
「陽菜ちゃ〜ん!」
春輝は嫌な予感がした。
「あっ!まきちゃんだぁ」
「うわぁ!ハルちゃんがお洋服着てる!可愛い」
小さな手が春輝に向かう。
『うっ……また出ちまったら服が台無しになるぞ』
春輝は深呼吸した。
何度も繰り返した。
『悪いな。まき、俺は今機嫌が悪いんだ!』
『今日は、絶対腹を見せないからな!』
十秒後。
気づいたら腹を出して寝転んでいた。
小さな手が春輝の腹を撫で回す。
高速で尻尾が動く。
『……堪えてくれ、俺の分身!』
春輝は、ギリギリで耐え切った。
少し滲んでいたが、多分セーフだった。
「陽菜ちゃん!一緒にお散歩してもいい?」
「いいよ〜!行こう」
陽菜は、まきと並んで公園の中を歩く。
春輝は二人の間を静かに歩いた。
前から見覚えのあるジャックラッセルテリアが歩いてくる。
『……お、終わった』
ルウは、春輝を見つけると二度見した。
眉間に皺を寄せ、目を細めた。
春輝は、息を止め犬の挨拶をした。
「ハル……その服……」
『ルウ、笑いたきゃ笑えよ……』
春輝はヤケクソになっていた。
「お前らがそんなに仲良しだとは知らなかった」
『お前、ら?』
「マロンの真似だろ?」
『ち、違う!それだけは絶対に違う!』
ルウはフッとクールに口端を上げた。
「ハル、素直になれよ!じゃあ、もう行くわ」
ルウはニヤニヤと振り返ると去って行った。
「今のワンちゃんがルウちゃんだよ!」
「へえ〜!」
「ハルちゃんの先輩ワンちゃんなんだよ!」
まきは、不思議そうに首を傾げた。
「ねえねえ。ハルちゃんって男なのにスカート着てるんだ!」
『俺は、好きで着てるわけじゃ……』
「ママが男の子でもスカート履いて良いって言ってたよ」
「そうなんだぁ」
まきは、笑顔で陽菜の話を聞いていた。
『まあ、多様性の時代ではあるけどさ』
『俺は古風な男なんだよ!』
春輝は、ポリコレ非対応の犬だった。
まきと手を振り別れる陽菜。
空はオレンジ色に輝く。
春輝は、陽菜の横を尻尾を地面に垂らしながら歩く。
ピンク色のワンピースもオレンジ掛かって見えた。
『今日は散々だったな……』
春輝はチラリと陽菜を見上げた。
「ハルちゃんが元気になって良かったぁ」
陽菜は頬を上げる。
『……陽菜、俺のこと心配してくれてたのか?』
「ハルちゃん!駆けっこの練習しよ!」
『よしっ!陽菜、あの夕日に向かって走れ!』
一斉に二人は走り出す。
公園の門を曲がると聞き覚えのある声が春輝の耳に入った。
「あら?人間さん?」
春輝は必死で走り抜けた。




