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ハルちゃんは、俺。  作者: 家宝ダンゴ


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3/12

俺、ごはんを待つ。

シャーッ。シャーッ。


カーテンを開ける音で、春輝(はるき)の耳だけがピクリと反応していた。

春輝は、柔らかいタオルの上で丸くなっていた。


『ん……ママ、早起きだな』


レースのカーテンから朝日が差し込む。

部屋の温度が少しずつ上がっていく。


トントンとリズムの良い包丁の音。

沸騰している鍋の音。

水の流れる音。


春輝は目を閉じて聞いていた。


『なんだか懐かしいな……』


ウトウトと夢の中に落ちていった。




カシャカシャカシャ。

カメラの連写音。


春輝はハッと目が覚める。


目を開けると世界が逆さまだった。

すぐに仰向けで寝ていたことに気付き、起き上がる。


「あーあ。ハルちゃん起きちゃった」


『いきなり連写はやめろ!盗撮だぞ!』


「パパみてぇ!ハルちゃん可愛く撮れたよ」


「お腹を出して寝てたのか?慣れてきたのかな?」


「ねえ?パパ……これってなに?」


無邪気に足の間を指さす陽菜(ひな)

春輝は、息が止まった。


『……やめろ』


「これは、チンチンだよ」


『……やめてくれ』


「パパこっちは?」


『……もう見ないでくれ』


「これはタマタマだね」


「そっかぁ、ハルちゃんは男の子なんだぁ!」


『……もうその写真消してくれ!』


春輝は立ち上がり、サークルに手を乗せて必死に訴える。


「ママ〜見て!ハルちゃんのお写真!」


『やめろおおぉぉ!』


「陽菜ちゃん、上手に撮れてるね」


「みんなに見せるんだぁ」


『ひいっ……!』


春輝は肩を震わせた。

涙は出なかった。





「陽菜ちゃん、ハルちゃんにご飯あげてね」


「は〜い」


『ごはん!飯だ!』


春輝は顔をあげ、目を輝かせた。

フワッとした尻尾が勝手に動き出す。


専用のドライフードは、初日こそ倦厭したが、意外にも子犬の春輝の舌に合っていた。

一日二回の楽しみになった。


カラカラと器にドライフードが転がる音がする。

香ばしい匂い。

春輝は思わずゴクリと喉を鳴らした。


「ハルちゃん、まて!」


『またかよ!』


「まだだよ〜」


真剣な表情で見つめ合う二人。

パパとママはその様子を見て微笑んでいる。


「ハルちゃん、がんばれ」


『フェイントかけんな!』


ポタッ。


ポタッ。


『あれ?俺、涎垂らして……る?』


「よしっ!」


咄嗟に動く体と口。

ご飯の器に顔を突っ込む。


『俺、俺……人間なのに!』


『飯食べるの止められない』


春輝は尻尾を激しく振りながら食べ続けた。

皿の上のフードがなくなると、器を舌で何度も舐めとる。

名残惜しむように。


『俺、なにしてんだよ!やめたいのに!』


「ハルちゃんお腹空いてたの?」


『わからん!』


「お皿ペロペロするのはお行儀悪いんだってママが言ってたよ」



『う、うう……』



この日、春輝は心の中で泣いた。

しかし、尻尾はおかわりを求め可愛く揺れていた。


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